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マリア様の刺繍のハンカチのおかげだったのかも?


 「これは俺でも取れなかった。どうやったんだ?」


 マイロ様がそういい、真ん中でパカっとはずれている魔封じの腕輪をテーブルに置いた。


 私とキースはお互い顔を見合わせ、頷く。

 「起きてから聞いたんだが、普通に解錠の魔法で外してくれたようなんだ。このハンカチに何かありそうな感じがするんだが、調べられるかな?」

 キースが話してくれ、マイロ様にマリア様の刺繍のハンカチを渡してくれた。

 

 片付けを終えられたヴァネッサ様もこちらにきて、ハンカチを触る。

 「なんだかこれ、私の作るものと同じような感じするわね」

 とおっしゃった。


 以前、ヴァネッサ様の魔法石の指輪のことを思いだす。

 魔法石の指輪は、思った以上に彼女の魔力が強くて、効力が強く出てしまったのよね。

 

 「たしかに、この刺繍からすごく魔力を感じる……。ヴァネッサのように潜在的に魔力が強いものが物を作ると総じてこういうことが起こるんだ。これを調べてもいいかな? あと、どこでこれを手に入れたのかな?」

 マイロ様がそうおっしゃった。


 「これは教会のバザーで購入しました。これを見ていたら、教会にキースがいるような気もして。しかも教会の鍵もおそらくこのハンカチのおかげで解錠できたように思います」

 私はそう言った。


 一体何が起こっているんだろうか。

 ガブリエラ様のゲームの話とも少しずれてきているような気がするし、謎が深まるばかりだ。


 「とりあえず一旦調べて見る。あと、これから俺が2人を送らせてもらう。さすがに心配だよ」

 マイロ様、キースにとても優しい、いいお友達なんだと思うと本当に嬉しかった。


 「マイロ、本当にすまない。ありがとう」

 キースも嬉しそうだ。


 とにかく、一旦私たちはマイロ様に送っていただくことになった。


 馬車の手配にマイロ様とキースが向かったので、その間に、ヴァネッサ様にお礼を言う。


 「ヴァネッサ様、本当にありがとうございました。お願いがあるのですが、私がいただいたようなお守りを二つ作ってくださいませんか? 念のため、キースとキースのお母様にもっていてもらいたくて」

 そういうと、ヴァネッサ様はニッコリと笑って、

 「わかったわ。今、魔法石選べる?」

 と魔法石のストックを持ってきてくださった。

 私は時間がないながらも、キースと、キースのお母様に合う魔法石を選べたと思う。


 「ではこちらを使って作らせてもらうわね。できたら連絡するわ。急ぎ目に頑張るわね!」


 そして、戻ってきたキースが、

 「今日から急遽夏休みの休暇を取らせてもらえることになったよ」

 どうやら馬車の手配は王城にいってやってきたようで、キースの上司でもあるお父様に話すとすぐ動いてくれたようだった。

 

 そして、あれよあれよと、私も念のためキースのお宅でしばらく過ごしていいことになったのだった。


 ……こんな急にお泊まりが許可されるなんて。すごい怒涛の展開だわ。


 マイロ様に用意してもらった馬車で送ってもらい、ようやくキースの屋敷についた。


 マイロ様はまたこの馬車で帰られるのだが、キースのお母様であるフローレス夫人は、キースに良くしてくれるこの青年をとてもありがたく思っているそうで。


 「いつもキースを、ありがとうね。これもあれももっていきなさい。一人暮らしなんでしょう?」

 とさながら実家のお母さん並みに色々持たせていた。


 私たちも、マイロ様にお礼をいって、それからマイロ様は帰っていかれた。

 ちなみに、馬車を覗いたらまぁまぁ大量の荷物に囲まれてマイロ様がちょこんと乗って可愛かったのだった。


 ……「ミリー様!」

 心配そうな顔でエイミーがかけてきた。

 マイロ様が帰られるまで話しかけるのを待っていてくれたようだ。


 エイミーはやっぱりいい侍女だわ、本当に私についていてくれてありがたい。

 そう感慨深く思っていたら、

 「心配しました! 無事でよかったです。私急にこちらに行けと言われて。ミリー様の残りの課題もちゃんと持ってきましたからね!」

 とエイミーが言ってくれた。

 心配してくれてたんだ、嬉しいな。


 ……まぁ、課題は忘れてくれてよかっだんだけどな。


 そう言うわけで、私は当分の間、キースのお宅で過ごすことになった。


 実は、一応卒業したら結婚という話で纏まっており、そこからこちらで一緒に住まうことになっているのだが。


 本当はというと、少しでも早くきてくれてもいいのだと言ってくださっていたみたいなのだが、優しい両親の計らいで、学生中は親元で過ごさせてくれていることにしてもらった。

 両親は本当に私のために色々してくれているのだ。


 私の部屋はキースの部屋の隣に用意していただいていた。


 フローレス夫人の手がかかった、かなり洗練された雰囲気で。

 急遽こうなったにもかかわらず、私のために手を尽くして下さったようで、すごく居心地の良い部屋になっていた。


 きっと急すぎて、大変な思いをして準備して下さった侍女の皆様にも本当に御礼申し上げたい。

 この先きっと会うだろうからその都度お礼を言うつもりだ。


 「ミリーちゃん、お久しぶりねぇ。課題に追われてるからって、こないだのお茶会も来られなかったものね。寂しかったわ」

 フローレス夫人がお部屋にいらっしゃって笑顔でそう言ってくださる。

 

 こないだのお茶会の時は、本当に課題が終わる気がしないくらいにまだまだ残っていて。

 ちょっとだけ! ってお願いしても母も、エイミーも許してくれなかったのだ。


 「あの時は残念でした。でもようやくお会いできて嬉しいです! キース様の夏休みの間ですが、よろしくお願いいたします!」

 深々とお辞儀をする。


 「よろしくね、卒業後が今から楽しみなの。楽しく過ごせるイメージが湧いてくれたらいいのだけど」

 なんて優しくおっしゃる。


 たしかに、今回こんな風にさせてもらえたのは、いわゆる結婚前の同棲みたいなノリ、だよね?! やったことないからわからないけど。


 いや、浮かれてばかりもいられない。


 ゲームが少しでも関与しているなら、キースのお母様である、フローレス夫人を守ってキースが怪我をするのだから、今こちらにいるうちに、少しでも調べれることは調べておきたい。

 キースのお母様が無事でいてくださるようにどうにか見守らないと。


 私は、頑張ると決めたのだった。

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