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なんと覚醒しちゃった


 ……『ミリーは体が光るやいなや、なんと聖女の力を獲得した!』


 きっとゲームだったら、こんな感じだよね。

 四角い吹き出しのところにでてくるんだよね。


 本当にゲームみたいな感じで、なってしまえば結構簡単になれてしまった。


 なんか、ゲームっぽく進んでしまう自分がちょっと嫌だ。


 でもこうなってしまったら、貰えるものは、貰っていいじゃないかなっていう気持ちになる。


 私はその力をお試ししたくなってキースを抱きしめてみた。


 なんか眠るキースがとても愛おしかったから抱きしめてしまっただけで他意はない。


 でも、力ってどうやって発動させるんだろ?


 まぁ詳しいパターンは後で調べるとして、

 「元気になーれー」

 私はキースを抱きしめたまま適当に呟いた。


 すると、私の周りの大気というか粒子というかがキラキラし出して、それがキースの体にまとわりつく。

 私はそれを見たくなってキースから離れて見てみる。


 キラキラしたものがキースの体に入り、完全に消えてなくなると、キースの土気色だった顔色がどんどん良くなって。

 瞼が少しピクっとしたと思うと、キースは目を開けた。


 「あれ、ミリー?」


 「キース、良かった……! 何か辛いところない? 喉渇いてない?」


 「大丈夫だよ」

 私は、ヴァネッサ様が用意してくださった水差しで少しキースに水を飲ませてあげる。


 キースはそれを飲んでくれたが、

 ベッドより起き上がり、

 「自分で飲めるし、大丈夫って言ってるのに」

 と言って笑った。


 「ミリーが離れてから、急に何者かに攫われたんだ。かなり難しいレベルの認識阻害魔法をかけていたようだ」


 キースはどうやら認識阻害魔法のため、よくわからないまま攫われたようだった。


 その名をきくと私はついつい、簡単なレベルの認識阻害魔法をかけられていた過去を思い出して苦い気持ちになる。


 今はそんなことを思っている場合ではないが。


 「ここヴァネッサ様のお宅なの。マイロ様が調べてくださるっておっしゃってたから調べてもらいましょう」

 わからないものはしょうがないので、今悩んでもしょうがない。


 そう思い、私がそう言うと、キースは頷いてから、

「ここヴァネッサ様のお宅なのか。工房の上かな? ミリー運んでくれたんだな。後でヴァネッサとマイロにお礼を言わないと。……でもミリーを守るつもりだったのに、自分が攫われるだなんて恥ずかしいよ。努力が足りないと思い知らされた」

 キースはとても落ち込んでいる。


 「まぁなんで狙われたかわからないけど、咄嗟にそんなことされたら誰も対処できないと思うよ。それより命があってよかったわ。キースを見つけることができたことも本当によかった」

 おそらくゲームの強制力に違いない、という言葉を飲み込んで、私はそう言う。


 そして、

 「私もキースを守りたかったのに守れなかった。ごめんなさい」

 と謝った。

 はぐれてしまう可能性について、私は知っていたのに対処できなかった。


 私はそして、マリア様の刺繍のついたハンカチを見せ、聖女の能力が覚醒したことまでキースに説明した。


 「襲われた時につけられた魔法制御の腕輪が取れてると思ったけど、マイロがうまく外したんだと思ってた。ミリーが外してくれたのか。ミリー、すごいじゃないか」

 キースが関心したように言ってくれる。


 キースに褒められて、得意な気分になっていたら、キースの手が私の頬に触れた。


 「起きてからずっと気になってたんだ。ミリー。俺がいなくなって、すごく泣いたね? 涙の跡がたくさんついてる」

 そしてキースは私の頬にキスをして、優しくぎゅっと抱きしめてくれた。


 「ミリーを泣かしちゃったねごめんね」

 キースが謝りながら顔中にキスをいっぱいしてくれる。


 「聖女の力、とりあえずみんなに内緒にしておこう? 絶対言わないから。ちょっと俺も色々調べてみるね」

 キースに抱きしめてもらい、そう言ってもらってすごく安心する。

 一人で抱えてたものを一緒に持ってもらうような、そんな感覚だ。


 私はずっと本当は気を張り詰めていたんだと思う、なんだかとてもほっとして、すごく眠くなって、キースの腕の中で私は眠ってしまった。



※※※



 キースとヴァネッサ様とマイロ様の声が聞こえて、なんだかとてもいい匂いがして、お腹が鳴る。


 お腹すいたなぁ、と目を開けると、すでに朝になっていた。


 私は、キースがどうやらきちんとベッドに寝かせてくれたようで、布団をちゃんとかぶって寝ていた。


 慌ててベッドから飛び起きる。


 「おはようございます!」


 リビングのテーブルには、すでにとてもおいしそうな朝食が並んでいて。


 「おはよう。ナイスタイミングね。今できたばかりよ」

 ヴァネッサ様がエプロン姿でテキパキと配膳している。


 トーストにベーコン、スクランブルエッグ、ちょっとしたサラダ、なんていうすごい美味しそうな朝食だった。


 「どうぞお召し上がりになって」

 とヴァネッサ様がおっしゃるので、

 私はみんなと一緒に、パジャマのまま、その朝食を堪能した。


 トーストはフワフワのサクサクで、バターがよく染み込んでとても美味しいし、スクランブルエッグもバターが効いていてとても美味しい。

 ベーコンを合わせていたんだくとさらにいい。


 サラダのドレッシングはヴァネッサ様の手作りのようで、

どうやって作ったのか尋ねると、レモン汁と、オリーブ油と、メープルシロップを混ぜて作られたそうだ。


 私も今度作ってみようと思う。


 朝食が終わり、片付けを手伝おうとしたところ、ヴァネッサ様に止められ、キースと共にマイロ様の前に座らされる。


 ヴァネッサ様はテキパキとあっという間に食器をお片付けになられた。

 いいお嫁さんに絶対なると思う。

 マイロ様は幸せ者だ。


 「さて、キースの腕輪が取れている理由を聞いてもいいかな?」

 マイロ様はおっしゃる。


 「これは俺でも取れなかった。どうやったんだ?」


 マイロ様がそういい、真ん中でパカっとはずれている魔封じの腕輪をテーブルに置いた。


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