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マリア様のお導き?

私はキース、助けて! と、ネックレスを握りしめて願う。


が、キースが現れることもなく時間が過ぎていく。


私はとりあえずハンカチで涙を拭こうとおもったが、

先程水飲み場で濡らしたことを思い出す。

濡れたハンカチで、

涙を拭いてみるも更に濡れるばかりだ。


ふと、教会で購入した、

マリア様の刺繍の入ったハンカチを思い出した。


購入時に入れてくれたシンプルな薄い封筒のような入れ物から取り出す。


マリア様のハンカチは、思ったよりも吸水性にすぐれ、

しっかりと涙を拭くことができた。


私、ハンカチのマリア様の刺繍を眺める。


何でかはわからない。

けど、教会にいけばどうにかなるかも?という考えが思いついた。


ここにいてももう埒はあかないわけで、

私はとりあえず教会に向かおうと立ち上がった。



※※※



教会にきたが、昼間のバザーの賑わいとうってかわり、

真っ暗で誰もいない感じだ。

みんな出払っているようで、

教会の門も閉まっている。


なんとなく、門の向こう側に気配を感じた。

耳を澄ませてみると、ガタガタと聞こえるような?


おそらく、教会であるし、耐魔法対策がかけられているからきっと無理だろうとも思いつつ、

私は解錠の魔法を使ってみようと思い立った。

至って魔法は苦手だが、細々とした感じの作業系の魔法は割と得意で。


教会をどうしても確認したくて、

なんとなく、マリア様の刺繍にお願いする。

(どうか、マリア様、開けてください)

マリア様の刺繍が少し光ったような気が、少しした。


『解錠』


唱えると、門はいとも簡単に、開いた。

良かった。耐魔法対策はされてなかったみたい。


おそるおそる門を開け入るが、何も見えない。


『ライト』

私は今度こそ忘れずにライトの魔法を唱える。


ガサゴソと、

長椅子の後ろのあたりに何か動く人影が見えた。


門を開けた音も、ライトの魔法も聞こえていただろう。


今更隠れても意味ないので、

「誰かいらっしゃるんですか?」

と聞きながらそちらへ進む。


その人物は、手を後ろで縛られて、足も縛られ、

長いすに更にくくりつけられていた。

酷い……。


猿ぐつわも噛まされた、その顔をライトで照らすと……。


「キース……?!」


私がずっと探していたキースだった。

なぜキースがこんなことに?


私は慌ててキースの縄を解く。

炎の魔法が苦手で助かった。

キースに熱い思いをさせずに縄だけ燃やすことができた。


だが、さっきまではついてなかった腕輪が手首にはまっており、

外そうと思ったが外せなかった。


猿ぐつわを手間取ってどうにか外すと、

キースが、弱々しく、

「ミリー……。ごめん、君が離れた後に襲われてしまって。でも、どうしてここがわかったの?」と言った。


「なんとなくなの……。ここで買ったハンカチのマリア様の刺繍を見てたらそう思って」


「マリア様の御加護かな……。しかしミリーに見つけてもらえて、よかった」と言うや否や、キースはそのまま意識を失い倒れてしまった。


私は慌てつつも、

キースもご存知なのだから、マリア様はこの世界にも存在するのね、そんなことをふと思う。

おかげで少し落ち着いた。


私は、『浮遊』とキースの体を浮かせた。


魔法の得意な人ならばこれで完全に浮かせて移動させられるが、

完全に浮かさせることは私の魔法力では少し難しいので、

少し軽くでき、自分より重たい物や人を運ぶ際に私は利用している。


以前のとても重い課題セットを運べずに、

例の男子生徒に頼ることになってしまった件で、

どうにかならないかと考えて思いついたのだが、

これがとても使えて今やかなり頻繁に使っており、

なかなかの使い手だと自負している。


浮遊で少し軽くしたキースを背負う。

さすがにお姫様抱っこはやめてあげたい。

キースならば、おそらく可愛いけど。


ここに長くいたら、キースをこのようにした人と鉢合わせてしまうかもしれない。


急いでどこかに行かねば。


確か、この近くにヴァネッサ様の工房があったはずだ。

とにかく助けてもらおうと、

私はヴァネッサ様の工房へ向かった。


うん。あれだ。

さすがの方向音痴の私でも今回ばかりはすぐにヴァネッサ様の工房にたどり着いた……。わけはもちろんなく。


少々? いやかなり? 迷ってしまい、

優しそうなそのへんにいた人たちに道を聞きつつ、

どうにか辿り着いたことは、キースに内緒にしたいと思う。


ヴァネッサ様……。

お願い、工房にいらっしゃいますように!

と祈りつつ、ノックする。


「はい……」

ヴァネッサ様がでてくださった。


しかも、ちょうど後ろにはマイロ様が……!


ヴァネッサ様は私が背負ったキースに大変驚かれて、

「キース様?! どうなさったの? マイロ! キース様をベッドまで運ぶのを手伝ってちょうだい!」

と言ってくださり、

すぐさまマイロ様が工房の上にある、

ヴァネッサ様のお部屋の寝室にあるベッドまで運んでくださった。


私の顔が、あまりに涙でぐずぐずだったため、

ヴァネッサ様は私のために、あったかい濡れタオルを用意してくださって、

更に暖かくおいしい紅茶を入れてくださった。


私は、珈琲派だと思っていたのだが、

こんなに温まって、おいしい紅茶を飲んだのは初めてかもしれないと思った。

「おいしい……」

ずっと力を張っていたのだろう、張り詰めたものが解かれるような気がする。


「よかった……ようやく落ち着いたかしら?」

ヴァネッサ様に優しく見つめられて、私は心底ホッとできた。


ヴァネッサ様のお部屋は二つあり、

寝室と、リビングの部分に分けられていて、なかなか広い。

応接室のようなソファーセットもあって、

私とヴァネッサ様はテーブルを挟んで、向かいあってソファーに座っている。


私は寝室でキースの様子を見ていたいと言ったのだが、

私のあまりの顔色にマイロ様に診てもらう間、

こちらで紅茶でもとお気遣いいただいたのだ。


先程までキースの様子を寝室でみておられたマイロ様が、

「魔封じの腕輪をはめられているな」

とおっしゃっいながらこっちへ向かってくる。


そして、ヴァネッサ様の横に座られ、私に向かい。


「何があったのか教えてくれないか?」

そうおっしゃった。

キースに一体何が起こったのか?

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