キースを迎えに。
エイミーの素晴らしいエステが終わり、
私はようやく街に繰り出している。
夏祭り前のフリーマーケットはとても賑わっていて、
ちょっと覗いて楽しみたい気持ちになる。
でも、ダメだ。迷わないように何度も歩いて確認しないと。
地図をみながら、キョロキョロあたりをみまわす。
ここが、公園ね。
みんなフリーマーケットの方にいっているのか、
人はまばらだ。
迷ったらここに来ればいいのね。
ドキドキしてくる。
あとは教会とイベント会場だったか。
教会、イベント会場も念のため回っておくか。
教会は公園の近くにあった。
フリーマーケットに便乗してバザーをやっている。
フリーマーケットに比べてゆったりした雰囲気に、
吸い寄せられるように覗いてしまう。
バザーの出し物の中に、素敵な刺繍のハンカチがあった。
可愛い。聖母マリア様の刺繍だ。
そういえば、聖母マリア様って前世の方だよね?
ガブリエラ様もそうだし、他にも転生者がいるのかな?
それか聖母マリア様はゲームにでているのか。
それすらもわからない。
でももしゲームをやっていたとしてもわからないことは多いだろう。
ゲームをやりこめる人なんて少数なんだから。
私はそもそも昔もゲームをクリアしたことなんてない。
こういう恋愛ゲームもやったけど誰とも仲良くなれずにバッドエンドになってたし、RPGも一つも魔王まで倒したことはない。
(だがやったことはある)
パズルゲームさえ、最初の面しかできなかった。
割と好きだったのは日常生活を体験するようなもので、
特にイベントとかも自分でいかなければしなくていいし、
戦いたかったら戦って、お金稼ぎたかったらアルバイトして、恋愛したかったら恋愛して特にゴールなんてないのが好きだった。自由いいよね。
転生者は知らないだけで、
きっと沢山いるのだろう。
しかも前世の記憶があってさえも、
ここがゲームの世界だとすらわかってない人もいるのかも。
まだ、ゲームの世界だとわかってるだけで私はいいのかもしれない。
ちなみに、こちらには魔法はあるから不便はないが、
前世の方が断然技術は進んでいるわけで。
ぜひ技術者の皆様が転生してくださっていて、
こちらの技術もドンドン進んでくれたらいいなと思ったりする。
私はついそのハンカチを購入した。
大事にしよう。
そのあとイベント会場だ。
こちらは夏祭りが始まってから開催されるのか、
今はしまっているが、
フリーマーケットの近く、つまり夏祭りの会場に隣接する感じだ。
うん。ちゃんと回れる。これなら迷わないはず。
これだけ見たら、あとは大丈夫かな?
ちなみに、キースとの待ち合わせは我が家だ。
お迎えに来てくれるんだって。
でもよく考えたら、お仕事先に迎えに行くって選択肢もあったよね?
あ、そうだ!
エステもしてもらって、すでに可愛い服を着せてもらってるから、
このままキースを迎えにいってもよいんじゃないかな?
素敵な思いつきだ。
私はすぐさま王城へと向かった。
そもそもここは城下町なので思いっきり近いのだ。
※※※
王城に辿り着いたが、そういえばどうやって入るんだろう。
ミリーの人生で、初めてではないが、
そんなに来ることもなくてキョロキョロしてしまう。
するとどなたか男性に声をかけられた。
「何をしているの?」
なかなかイケメンな青年だ。
きっと王城で働いているのだろう。魔導士様のような出立ち。
あら、そういえば、イケメンの若い子でも、見分けがつくかも? いや、前に比べてだけど。
魔法が解けたからかな?
「あの、ミリー・スノーと申します。キース・フローレス様に会いに参りました」
「あ、君が!」
イケメンさんは私のことを知ってらっしゃるようだ。いや、
キースをご存知なのかも。
「俺はマイロだ。キースの友人だ」
そう話されて気づく。
クローディアが教えてくれたゲームのお話ででてきたマイロ様だわ!
マイロってあなただったのねー!
いやしかし、クローディアが衣装を監修しただけあって、やはりセンスがよい。
サーム先生があまりに可哀想だと思ってしまう。
「じゃあキースのところへ案内するよ」
とマイロ様が言ったところで、
私ははっとする。
「ついきちゃったけど、キースはまだお仕事なのでは……?」
「もうすぐ終わるから大丈夫だと思う」
とマイロ様がおっしゃるので、
ありがたく案内していただくことにした。
王城はとても素敵で、やはりこちらで働きたいなと思う。
キースと社内恋愛したい、だけかもしれないが。
「あ、指輪!」
私のネックレスに通してある指輪を見てマイロ様がおっしゃった。
「ええ、キースからいただきました」
「よく似合ってるよ。あぁ、さすがヴァネッサだなぁ」
マイロ様は、にこやかにおっしゃった。
「マイロ様はヴァネッサ様をご存知なのですか?」
どう言うご関係でしょう?
「実は、婚約させてもらってるんだ。ヴァネッサは本当にすごい女性なんだ。またヴァネッサのところに買い物へ行ってやってくれないか。ヴァネッサ、きっと喜ぶだろう」
そうやって微笑むマイロ様は、
どちらかというと、シャープで、鋭いお顔をされているのだが、
ヴァネッサ様のことを思い浮かべているのか、とても優しいお顔をなさっている。
とてもお似合いの恋人同士だと思う。
そうだ、ヴァネッサ様にキースやキースのお母様をお守りする何かを作っていただこう。
私はそう思いながら、キースの下へと向かったのだった。
ようやくマイロに会えたミリーでした




