これで聖女になれたのかな?
私はキースとコソコソ屋敷を抜け出している。
明け方に間に合うように森に行くためだ。
「キース、おねがい。明け方に何でかしらないけど妖精王に会わないといけないからサラマンドラの森に行きたいです!」と言うと、
しぶしぶ、キースが馬車を用意してくれ、
夜中に2人で屋敷を抜け出すことに成功した。
いや本当はさ、1人で行くイベントだろうなってことはわかってるのだけど。
イヤ、ホラ、私、方向音痴だから。
使えるものは親でも使え!方式でキースに矢面が立ったわけだ。
森へ向かう馬車の中で、
「ミリー意味がまだわからないんだけど」
とキースが言う。
そりゃそうでしょうね。
「私も正直あんまりわからないの。でも行ってみたらわかるはず。ワガママに付き合ってくれてありがとう」
「何か夜に2人でなんてドキドキするね」
「キース……!」
とまぁいい雰囲気になってコレはコレでありだ。
いい雰囲気になりまくり、
まぁまぁ、そこそこ?いやかなりキスした。
そんなことをしていたら、
あっという間にサラマンドラの森に着いてしまう。
ちょっと立ち上がったときには、
フラフラしてしまったのは許してほしい。
とっても甘かったなぁ。
当たり前だが、まだ真っ暗だ。
キースがライトの魔法で明るくしてくれる。
「こっちでいいの?」「多分」
なんて会話しながら、どんどん森を進んでいく。
「そもそも妖精王に来いって言われたけど、一体どこでまってたらいいのかな」
ザックリしすぎててなんかゲンナリする。
「ねぇキースなんか疲れたし日の出までゆっくりしない?」
と野営セットのテントを出す。
「ミリー……すんごいリュック背負ってるとおもったら」
ほぼキースがチャッチャと設営する。
前世のテントより設営が難しいのだ。
キースはかなりすごい! 惚れる!
もう惚れてるけど。
キースのお陰で、いい感じにテントが張れた。
いつものコーヒーセットを出し、2人ならんでゴザにすわって、おいしいコーヒーを飲んでいたら、
日が開けてきた。
日の出、なかなか美しい。
あったかいコーヒーが、更に美味しく感じる気がする。
妖精王様、そろそろいらっしゃるかな?
ザッザッザッザッ
足跡が聞こえる。
私とキースはサッと身構えた。
「あ、ミリーよ、ちゃんときたようだな」
妖精王様が、まさか、
普通に、歩いてきた!
私は何度も妖精王と言ってはいたのだが、
いまいち信じられなかったようでキースがとても驚いている。
「じゃあこちらに座って」
と切り株を指さされる。
えーなんかゴツゴツしてて、それ座り心地悪そうなんだけど、
と思いつつ座る。
あー、やっぱり痛い。
そんなことばっかり思ってたら、
「はい、終わったぞ」
と妖精王様がおっしゃった。
「え?全然わからないのでご説明おねがいしたいのですが……」
と私がいうと、
「望みどおり聖女の力を授けたぞ。まだ眠っているが、種は仕込んだ。きっと然るべきときに花開くだろう」
と妖精王様はアッサリ言い、
さっさとそのまま歩いて帰って行った。
あんまりにもあっさりすぎて、
若干ポカーンとしてしまう。
だけど、私の笑いのツボにハマってしまい、
「ねぇ、キース、妖精王様の後つけていかない? なんか楽しそうじゃない?」
なんだか、悪ふざけの虫が騒いでしまう。
歩いてきて、歩いて帰るとかとか面白すぎなんだけども!
「ミリー、別にそんなに面白い訳でもないと思うけど。笑いのツボがおばあちゃんみたいだな」
若干キースにディスられてる気がするが。
私たちは、妖精王の後をコソコソついていったのだが、
ふと見失ってしまった。
それでもしつこくキョロキョロする私に、
キースが、
「もう帰ろうか」と言ったとき、
何か話し声が聞こえてきた。
話し声の方を、2人で覗いてみると、
思いっきり妖精王様とお妃様のラブシーンだった。
もしかして、
わざわざラブシーンの途中で抜けてきてくれたってこと?
だからめっちゃ終わらせるの早かったんだ。
てかそもそもこんな時間に呼んだのそっちだよね?
あー優しいところあるなー。(棒読み)
ま、とはいえ、
そんじょそこらのラブシーンなんて目じゃないくらいめっちゃ美しかったし、
まだまだキスしかしてない私とキースには、ちょっと刺激が強かった。
「す、すごいね」
「ミリーはみたらダメだ。もう帰ろう」
よくみたらキースの耳が真っ赤だった。
なんて可愛いんだろう、とキュンとしてしまう。
でも、私に聖女の力が本当についたんだろうか?
然るべきときに花開くだろう、なんてめっちゃゲームみたいなセリフだった。
ゲームでもこんな妖精王とお妃様のラブシーンって見るのかな。
いや、無いよね。
私が、悪ふざけしすぎちゃったね。
ついついオバさんパワーちょっと出しすぎたかもしれないな。
思った以上に初心なキースとの帰りの馬車はすごく気まずかった。
全然辿りつかないと思ったが、どうにか着いてくれてほっとする。
「キース、また。週末ね」
そう、週末夏祭りなのだ。とても楽しみにしているのだ。
キースはずっと真っ赤な耳のまま、
何か心ここに在らずみたいな感じだったけど、
ここにきてようやく笑顔になってくれた。
「ミリー、帰ったらすぐねるんだよ。あ、ちょっと待って」
『清浄』
私の体が綺麗になる。
「わー!キース、清浄魔法使えるの!」
驚いてしまう。
「そうなんだ、サーム先生の代わりにミリーにかけようと思って覚えたんだけど、
元気になってくれたからかける機会がなかったんだ」
優しく微笑んでくれる。
「キース……! ありがとう」
本当に私、幸せだなぁ。
そのあとベッドへ倒れ込み、泥のように寝ていたら、
エイミーに起こされた。
「ミリー様、昨日の助けた女の子がお礼にいらっしゃっています。起きてくださいませ」
まだまだ寝たかったのに。
夏休みだしまだ寝れたのに。お礼とかいいのに……。
と眠さのあまり、ぐずぐず、イライラしてしまう。
ふと、キースは今日仕事なのについてきてくれたんだなぁ。と思う。
こんなことでイライラしてたらキースに悪い。
ごめんなさい。
気を取り直して、私はエイミーに「おはよう」と言って起き上がった。
エイミーが急いで身支度をしてくれ、
私は女の子が待っている応接室に急いだ。
「おまたせいたしました!」
さっきまで寝てたにしては、
ニッコリ優雅に言えたんじゃ無いだろうか。
助けたときはよくわからなかったが、
その女の子は、中学生くらいで、
ピンクがかったブラウンの髪をゆるくウェーブにしたミディアムヘアがとても可愛い女の子だった。
私を見ると彼女は席を立ち、
「ミリー様! 昨日はありがとうございました!
私、お会いしたかったです!」
と言い、私の手を握ったのだった。
キースには大変、刺激が強かったようです




