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知らないうちにゲームに巻き込まれていた


 シャルロッテさんが、沢山お話になって喉がかわいたのだろうか、椅子に座り、紅茶を啜る。


 おそらくこの部屋は自室だろう、可愛らしいピンクが基調のメルヘンな部屋で、カントリー調の白い椅子が、彼女の童顔にとても似合う。


 彼女の目は髪色と同じのブロンズで、クリクリとしたぱっちりおめめがとても可愛らしい。


 また縦ロールをツインテールにしているのが、すごく似合っている。


 私はというと、ここに引き寄せられた時と同じように空中をふよふよと漂っている。


 存在しているのかも怪しい。

 幽霊みたいなもん、だよね?

 私の体、どうなっているんだろうか。

 家族は、キースは、悲しんでないだろうか。


 最後に会ったエイミーの泣き声が思い出されて悲しくなってしまう。

 エイミー、ごめんね……。


 紅茶で喉を潤したシャルロッテさんがまた、話し始めた。


 「あなたがサームルートに進んでしまったので、サーム先生が取られちゃうどうしようって思ったの」

 なんて悪びれずに言う。


 私のあの痛みや高熱のことはどう責任とってくれるのよーってすごくいいたい。家族もめっちゃ心配してたのに。


 でも彼女のご機嫌を損ねたら、ダメだ。


 彼女は中学生なのだ。

 悪い子ではないのはわかる。

 まだまだ人として未熟なところがあるだけ。

 きっと自分のしでかしたことがわからないだけだ。


 最後まで、話を聞こう。

 社会人経験で培った合いの手で、誘導して、私の聞きたいこと、全部聞く。


 でも、知らないうちにゲームに巻き込まれていたのね。怖い。どの選択肢も選んでないつもりでいたのに。


 ゲームの中で少しでてきた、認識阻害魔法のことを思い出したシャルロッテさんは、慌てて魔導書を読み漁り、私にかけることを思いついたのだと言う。


 ちなみにその初歩の魔導書、自分にかける前提になっていたのもあり、こういう魔法は念のため、かける前にお父さんお母さんに相談してね、って書いてたそうだ。


 そして、失敗した時のために、先に体力増強の魔法をかけてあげるといいですよ、と書いてあり、さすがにお父さんお母さんには相談できなかったが、彼女もそれに倣って私に、体力増強魔法をかけてくれたらしい。


 な、なるほど、私がやたら力持ちだったり、風邪も全然ひかないし、丈夫だったのはそれでだったのか。納得。


 サーム先生!私が、頑丈な理由判明しましたよ!


 万が一、私が生きていたらそう報告してあげよう。

 私のこと調べてもらうことになったら、サーム先生ルートになっちゃいそうだから、調べる必要がなくなったら、きっとサーム先生ルートにならないよね?


 合いの手を忘れて考えこんでいたら、シャルロッテさんがまた話しだしたので、また合いの手に専念する。


 「悪いなーとは思ったんだけど、下手に自分が動くよりあなたの行動を制限した方が、うまくいくって思ったの。そのあとはイベントが全く起こらなくなって。あとは私がサーム先生に会うだけ、と思ってたんだけど……」

 なんて悪びれずに話す。


 誘導してるからしょうがないかもだけど、それを私に話せるってどういう心境してるの?

 もうどこから突っ込んでいいかわからないくらい自分勝手で、脱力してしまう。


 私のことをゲームのキャラクターくらいにしか思ってなかったんだろうな、って思う。

 私、この世界でちゃんと、生きてたのに!


 「でもどうしても会えなかったの、サーム先生に。お父様のテリー商会を前世の知識を使って、拡大させて、サーム先生のことを探してもらってたのに、だめだった。

 こないだふと、あなたの魔法がとけてしまったのが、わかったの。かけた人がわかるようになってるみたい。それで、状況を調べて、サーム先生があなたの治療に当たってるっていう話をきいたの」

 私の大変だった部分サラリと飛ばしてくれる。


 その上、サーム先生を見つけたことに感謝したのだとシャルロッテさんは言う。


 「そ、そうだったんですね! 魔法石をいただいたことで、解けたみたいで。シャルロッテさん、解けたことがわかるなんて、すごい魔法の使い手なんですね!」

 私、つっこみたいけど、心を無にして褒める。あ、ちょっと褒めすぎたかな?


 もちろん、魔法は無理に解いたんじゃないんですよ、魔法石をもらってそうなっただけで、不可抗力だったんですよ感を出しておく。


 私の合いの手にいい気になったシャルロッテさんは、また話しだす。


 「あなたの体調がすぐれない話をきいたものだから、さすがの私もあなたが回復するのを待つ羽目になっちゃったのよ。サーム先生をせっかくみつけたのに、またあなたが、

サームルートに進んじゃうからすごく不安で、また早くかけたかったの……」

 そう話す彼女は可愛い。恋する乙女のようだ。


 だが私は恐怖を感じてしまう……。


 だめだ、ビビっちゃ。

 幽体だと思うけど、震えそうになってる自分を感じる。

 シャルロッテさんにビビってるの知られたらだめだ。

 危ない気がする。


 今を乗り切るのよ、ミリー。

 私ならできる! 私なら、大丈夫!


 前世で辛くなったら思い浮かべてた言葉。


 ずっと一人で、誰も褒めてくれないし、慰めてもくれない。

 人に期待したらダメ。

 だから、自分は自分で褒める。

 自分のご機嫌は自分で取る。


 認識阻害魔法をかけられて孤独を感じてた時も、ずっとそう唱えてた。


 だから乗り切れたと思う。


 そして、シャルロッテさんは我慢して、私が意識が回復したようだというお話をきいたので、また魔法をかけたのだという。


 念のためまた体力増強魔法をかけてから……。


 あの光を感じ、少し楽になったのは、シャルロッテさんの魔法だったんだね。


 一瞬だけど、それについては感謝する。少し眠れたのは有難かった……。


 しかし、そういえばサーム先生が、

 『体力増強魔法をかけてもいいけど、もう少しだけ回復してからだね、何もないと思うけど、魔法でこうなってるから、念のため何かあったらいけないから。それにこういうのは自らの力で直した方が予後がいいんだよ』

 っておっしゃっていたような。


 あぁ、私、何もなくて、よかった……。


 どうにか、あらかたききたいことは聞けた。


 あとは、そう二つ。


 なぜ、ここに呼び出されたのか。

 私は生きてるのか、ということ。


 シャルロッテさんのご機嫌を損ねないよう、聞かないといけない。


 おそるおそる、私は口を開いた。

シャルロッテさん、まさかのヤンデレ?

今のところ唯一プレイしたことのある彼女です。


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