犯人が判明したのだが…(キース視点)
最近俺は、早くミリーに会うために、仕事を最速で終わらせている。
今までは、覚えること、丁寧にすることを優先し、時間はいつでもあると思い、スピードはあまり、重視していなかった。
だが、早く終わらせたいと言う気持ちから、スピードを重視し出すと、思った以上にそこまで丁寧さも変わらない上、なにかミスがあってもそれに取り掛かることが早くでき、他の仕事もすぐとりかかれて一石二鳥だった。
周りにもうできたのかと褒められることも増え、不思議な気分だ。
ミリーのおかげだな、と思う。
先程父から呼び出しを受けたと思ったら、ミリーが意識を取り戻してから婚約の申請をしたのが通り、正式に認められたと教えてくれた。
あの可愛い生き物が自分のものなのかと思うとニヤけてしまう。
母にあの時ミリーのことを言ってもらわなければ、危うく誰かのものになってしまったかもしれない。
本当によかった。
しかし、魔法のせいとはいえ、ミリーを認識できなくなってしまった自分が不甲斐ない。
一年しかないミリーとの学生生活をふいにしたのも、悔しくてたまらない。
きっと寂しかっただろうに。
認識阻害魔法に耐える訓練を受けてから、ミリーに会いに行けて本当によかった。
ミリーは、昨日会いに行った時は眠っていて、まだまだ本調子じゃないのだと思い知らされた。
また目が覚めないんじゃないかと不安にさえなる。
眠ってるミリーは、昔遊んだ幼い頃の面影を残していた。
まるで小さな少女のようで、たまらなく庇護欲をかきたてられる。
守りたい、そう思う。
ミリーの伏せた瞼を彩るまつ毛が長いことに気づく。
少し熱があるようで、時折荒く息をするのにほのかに色気を感じ、眠る幼さの残る顔のギャップで少しドキドキしてしまった。
今日は起きているといい。
調べてもらっていた、ミリーに魔法をかけた犯人が見つかったとマイロから連絡があった。
詳しいことはまだきいていないが。
ようやく仕事も終わり、終業時間になったので、ミリーに会いたいが、まずマイロのところに行こう。
※※※
マイロのところへ行くと、開口一番にニヤニヤ「婚約おめでとう」と言われた。
婚約が正式に決まったことがすでに回ってるらしい。早い。
「ありがとう」素直に返す。
マイロには本当に世話になった。いや、まだまだ世話になりそうだ。
「で、犯人なんだが……」
とマイロから似顔絵を渡される。
そこには犯人とは信じられない、素朴な女の子が描かれていた。
ブロンズの髪色を少し高いところで2つに結んでおり、その毛先はクルクルと縦ロールだ。目もブロンズ色。
「犯人じゃなくて同じ被害者ってことはないよな?」
マイロに聞いてしまう。
「いや、正真正銘この絵の女、テリー商会の娘であるシャルロッテ・ブラウンが犯人だと特定できた」
マイロは神妙に話した。
テリー商会は最近進出してきた精鋭の商会だ。
化粧品やアクセサリー、文房具、女性が欲しくなるような商品を次々生み出して、かなり儲かっているって噂だ。
その功績を讃えられ、子爵家の称号を得られるということで、俺もその手続きに奔走していた。
働き出してから無称号から称号を与えられるというケースは初めて経験している。
手続きが煩雑でかなり難しい。
商会のテリー・ブラウンはなかなか気立のよい男性で、手続きで何度も会ったが、娘さんがいるとは聞いていたがいつも出かけていて会ったことがなかった。
「もうすでにこの事件は色々なところで解決のために動いているんだ。人1人の命が奪われかけたことはかなりのことなんだ。王太子様と妃候補のクローディア様も動きだしているくらいで。シャルロッテ・ブラウンが犯人と特定できたのはさっきだが、すでに上層部に情報が回って、その処罰に動き出してしまった。処罰の手続きの仕事がそろそろ回ってくると思うぞ」
マイロが神妙な顔をした。
彼もまた新人である。能力があるがまだ補佐をすることが多いと聞く。
大切なミリーをあんな目に遭わせたシャルロッテに怒りは覚えるが、自分達の手をとっくに離れてしまった事件に、
少しの怖さを、覚えた。
今はまだまだだが、きっと努力して上層部になってやると、覚悟を決めた。
マイロもそう思っていることが推し量れた。
「そうだ、魔法石またもっていけよ。またいいの仕入れた。渡した指輪割れてしまっだんだろう? ヴァネッサの腕はいいのだが、まさか魔力を増幅するなんて思わなくて。ちょっと申し訳なく思ってるんだ」
「気にするなよ。いいお店を教えてくれてありがとう」
マイロとヴァネッサはいい関係だ。
年上の妖艶な美女は、この信頼する友人の心を掴んで離さない。
「あ、加工の際に工房にいくなら、絶対俺も付き合うから絶対1人で行くなよ」
マイロはヴァネッサと2人きりで会わせたくないんだよな。
バタバタして前の魔法石のお礼をするのを忘れていた。
工房に行った帰りにでもご馳走しよう。
ありがたく魔法石を選び、優しい友人にお礼を言った。
※※※
王宮から直接ミリーの家に向かう。
早く会いたいがシャルロッテの件はなんて言おうか。
そんなに遠くないはずだが、会いたくて、なかなか辿りつかない気持ちになる。
学園時代の移動用の魔法陣が懐かしい。
あれは魔法に特化した学園だったし、セキュリティも万全だったのでできたんだよな。
城に出入りする者は多すぎるし、遠い者は住み込めばよいとなると魔法陣のためにそこまでする必要性がないのだ。
ようやく辿りついて、侍女のエイミーにドアを開けてもらうと、ミリーがちょっと俺にとって、ヤバかった。
いや、あまりにしんどそうで痛々しいとは思う。
だが、ずっと息が上がっていて、熱に浮かされて、頬が上気しているその顔は、あまりに色っぽく、昨日の幼さの残した眠った顔のギャップで、もう男を我慢できないとさえ、思う。
俺、大丈夫だろうか?
だが、ミリーあまりにしんどそうなため、絶対我慢しようと決意する。
ミリーが無理に体を起こそうとした。
体にかかっていたタオルケットが落ち、体のラインがわかるルームウェアが見える。
一生懸命起き上がる彼女を慌てて支えた。
「ミリー! 無理に起きなくていいから寝てて!」
とつい支えるだけでなく抱きしめてしまったのは、許してもらいたいと思った。
隠しキャラのマイロくんのお相手判明でした!




