攻略対象のイケメンたちが見分けがつかず困っています。
「こんにちは、ミリーさん」
悪役令嬢ちゃんが私、ミリー・スノーに話しかけくれる。
今から帰るようで、教室のバッグ取りにきたみたい。
今は放課後である。
私は一人で教室で一人残って授業の課題をやっている。
(ともだちがいないのだ!)
なぜ今そんなことをやっているかと言うと、今ならばわからないことをすぐに先生に聞けるからだ。
わからないことをそのままにしてしまったら何がわからないのかわからなくなるので、友達もいないことだしこれが私の毎日のルーティンだった。
すぐ忘れちゃうのアラフォーって。って今は17だけど。
「あっクローディア様こんにちは! 今日も可愛くて美しいですね」
悪役令嬢ちゃんは公爵令嬢で、クローディア・アルバートン様という。
さて。
お気づきだろうか? 先程アラフォーと言ったが、私は正真正銘の、ピチピチ17歳である。
名は、ミリー・スノーという。
伯爵令嬢である。
笑わないでね? おそらく多分、私ってヒロインだと思うんだ。
私、いわゆるゲームの世界に転生した前世の記憶のある人間なのだ。
前世は、平凡なアラフォーの独身OLで、ゲーム等の娯楽から少し離れていたというのもあり、ゲームの世界であることはなんとなく覚えているのだけど、内容も何もかもが分からなかった。
今思えばどうせ死ぬんならもっとゲームしたりして、楽しんで生きて欲しかった。
そしたら、いい出会いもあったかもしれないなって思う。
可哀想な前世の私。
死因も名前も覚えてない。
あ、これは覚えてる。
前世の自分の前世ってなんだろうかーって占いしたことあるな。
まさかの虫だったけど。
嘘だと信じている。
しょうもないことは思い出せるものだ。
というわけで、私は前世でゲームはご無沙汰だったが、昔はそういったゲームもしたし、この世界である、恋愛ゲームが人気だったってことは知っていた。
アイドルグループのコラボのゲームだったからか、なんと社会現象にもなり、コンビニで売られているお菓子のコラボもしていた。
そのアイドルが好きな会社の後輩との話題作りのために、ちょっと買っとくかーって、私は気軽な気持ちで買ったのだ。
そのアイドルを模したキャラクターのシールがでたら後輩にあげれて話題作りにとてもよかったのに、当たったのは残念なことに、1回目はヒロインで、2回目は悪役令嬢ということでそっと机にしまった。
まぁ疲れてる時は可愛い女の子がニコニコしてるだけで癒されるので、前世のミリーにとっては癒されて良かったと思う。
まぁお陰で、今世の私がヒロインであるということと、クローディア様が悪役令嬢であるということがわかったわけだし、前世の私はグッジョブであったと言えよう。
そんな恋愛ゲームのヒロインなはずの私なので、どうせなら恋愛を楽しむのも悪くないとも思うわけなのだが、ゲームはやってないからわからないし、みんな同じに見えるから何も進展しない。
アラフォーの名残りなのか?
私は残念なことに若い男の子がみんな同じ感じにみえてしまっていて、攻略対象がわからず全員同じに見える。
多分学園内の髪の毛の色がカラフルな子達が攻略対象と思う。
カラフルな髪の毛の子たちが通りがかったとき、多分あの子かな? ってそう思う程度だ。
とはいえ前世よりもミリーの物覚えは良いし、器用さは群を抜いており、今世は相当楽しい人生だ。
頭のいい人はこんなふうに考えてたんだ、と思う。
従って勉強が楽しすぎた。
魔法が使えるのもまた最高である。
ヒロインであるおかげなのか? 特出してなにか秀でたことはないが、ミリーはオールマイティなのだ!
あ、そうそう、私今クローディア様に話しかけられているんだった。
クローディア様は、紫がかった銀髪で光に当たったら虹色みたいになるし、目は翠色で、ほっぺはプリっプリのつやっつやで睫毛は長くて、とにかく天使のような美しさなのだ。
すっぴんだと思うんだけどあの毛穴のない肌とかどうしてるんだろうと思う。
私の方がヒロインなはずなのに負けてる。
美しさが留まるところを知らない。
それなのにいつもクローディア様は、アラフォーで攻略対象のイケメンたちの区別がついていない、残念ヒロインである私を、
「ミリーさん、ありがとう。でもミリーさんほど美しい女の子は見たことがありませんよ。本当に可愛いですね。金色に光る艶々の髪に青い目、まるで天使のようですね」
とおっしゃってくれるのだ!
そんなわけで、つい脳内でクローディア親衛隊に入りかけてしまいそうな私を必死で止めながら、
「クラウディア様にそうおっしゃっていただけるだけで死んでもいいですわ。ありがとうございます」
私も見た目だけは、爽やかに微笑んでお礼を言った。
まぁ残念であろうと私はヒロインらしく可愛いと思う。
だが、クローディア様が来られたら存在が霞まくるので、謙遜したくなってしまう。
でも、社会人だから(前世)謙遜せず笑顔でお礼を言うのみに止めている。
しかし、クローディア様、本当に悪役なの? めっちゃ優しくてめっちゃ好きだ。
ゲーム知らないんだけど、悪役令嬢っていったら、ヒロインをいじめたりするもんだよね?
こんなに優しくすることとかあるかな?
前世で見たのだが、コラボのお菓子の中に入ってたシールで当たったクローディア様の裏には、
『クローディア(悪役令嬢)ヒロインをいじめる。第一王子の婚約者』
って書いてたから、本来は私をいじめると思うんだけど。
私は気づいてないだけでいじめられてるの、かな?
そんなことを考えていると、
ガラッ! と音がして、勢いよく教室のドアが開いた。
「クローディア、そろそろ行かないか」
ピンクの髪の男性が待ちくたびれたような感じで、クラウディア様に声をかけられる。
「あら、ラインハルト様、お待たせして申し訳ありませ ん。そろそろ帰りましょうか」
なんてクローディア様もおっしゃっている。
どうやら彼はクローディア様の婚約者の第一王子のピンク君だった模様。
ご一緒に帰られるらしい。
なかなか顔と名前が覚えられない。
クローディア様はお妃教育のためお城に帰られるようだ。
こんな年若いのに本当よく頑張っていらっしゃる。
美しいし優しいし可愛いし、いい匂いがする。
そりゃあピンク君もその魅力の虜になるに違いない。
あ、ちなみにピンク君はイケメンである。
背も高い。
だかアラフォーにはみんな同じに見えちゃうので説明はできかねる。
背が高い、イケメン、ピンク! これでわかってもらえたら嬉しいと思う。
目はグレーでまたイケメンである。
いつも凛として本当に姿勢がよくて、ぱっと見は背が高く見えるクローディア様は、実は華奢で小柄であるので、長身のピンク君とクローディア様のこの背の差はまさに黄金比である。
(ヒロインのがでかい上華奢ではなくゴツイ。私がやったことのあるゲームって逆だった気するんですが。キャラ設定間違えてません?)
「王太子様、私がひきとめてしまったのですわ。申し訳ございません」
私、そつなくフォローをする。
アラフォーともなるとそういうことはソツなくできる。
今世でも作法は習っているが、それを上回る長さの社会人経験(前世)の賜物である。
きっとクローディア様はピンク君が好きだと思う。
そういうオーラがでている。
若いって、いい!
「いや、邪魔をして悪かったね、もうすぐ先生が来られるので焦ってしまった」
ピンク君はいい声で謝ってくれた。
お二人は本当にお似合いだ。
「いえ、いつも国民のためにありがとうございます。私如きが申し上げるのも失礼なのですが、頑張ってくださいね!」
あ、なにかおじさんみたいな挨拶をしてしまった。
若くて頑張ってる二人には幸せになってもらたい。
お二人は和やかに出て行かれ、私はまた勉強に戻った。
※※※
私は魔法が使えるので、移動魔法というもので学園と家とを行き来している。
我が家は学園からめっちゃ遠いので、このシステムはありがたい。
それぞれ魔法陣をレンタルし、学園に通学する間は借りておき、その魔法陣と家の魔法陣と繋げていくっていうやつ。
よくわからないんだけど。
面白いシステム。
しかし便利である。
前世でもあってほしかった!
屋敷に帰ると、幼馴染のキースがきていた。
「あらキース、きていたの? お久しぶりねー! また一段と格好良くなって。くるなら言ってくれたら早く帰ったのに!」
ついアラフォーの癖でおばちゃんみたいな感じの返しをしてしまう。
この幼馴染のキースは、私より二つ上の男の子だ。
学園は卒業し、今は王国に宰相見習いとして、彼のお父上について勉強中である。
若いのに頑張っているとってもえらいイケメンだ。
私、彼だけはずっと一緒にいたので見分けがつく。
ミルクティーブロンドの癖毛で、目はクラウディア様とはまた違うエメラルドのような緑色だ。
彼もまたいい匂いがするのだった!
小さい頃から前世の記憶があるから本当に息子みたいなのだ。
可愛いなーって感じでずっと愛でてきたのに、
(年下に可愛いって言われても嫌かもだから、思うたびに格好いいに置き換えて伝えておいた優しいおばちゃんだ)
最近はしっかりして、あの愛しいバカ男子がどこにいってしまったのかと思うくらい、頭もいいしなんだか本当に年上かのようなので、なんだか寂しいおばちゃんなのだ。
あぁ、可愛い彼女連れてくるのかな。
お母さんの気持ちで虐めちゃったらどうしよう。
うちの可愛い息子を取られたってこんな感じなのかしら。
でも、きっと私の可愛い可愛いキースたんが選んだ女の子ならおばちゃん絶対応援する! と決意している。
キースはニッコリ笑って
「ミリーに会いたくてきたよ」
と言った。
彼は残念な幼馴染でもこんな風に優しくしてくれるいい人なのだ!
「まぁまぁ。嬉しいわ。私もお会いしたかったです」
おばちゃん嬉しいなー。
キースは残念そうな顔だ。
ま、中身おばちゃんだから残念さが滲み出ちゃうんだね。
「今日は君のお父様に用があって来たんだよ。今度はゆっくり街にでも遊びに連れていってあげようね」
おばちゃんにも優しいキース!
父に用事って、お仕事なのかしら?
ぜひ、残念おばちゃんに懲りずにまた遊びに来てもらいたい。
さて、
私は学園から帰ったらいつものルーティンがある。
それは、この世界の勉強である。
前世の記憶がせっかくあるので、それでなにか成してやろうともおもったけど、私何もできなかったし、知らなかった。
前世のこと、興味もなかったんだと思う。
平凡に何も考えないで生きてたみたい。
歴史とかも、技術とかも、医術とかも、全然わからない。
せっかくの前世の記憶があって生まれたのに、何もこの世界に還元することができない、って結構悲しかった。
とはいえ、前世のことは今更嘆いてもしょうがないので、
今世のことを勉強して、やりたいことみつけようと思う。
アラフォーならわかる。
学生時代がどれほど貴重なのか。
せっかく与えられた勉強の時間を、大事に使うのだ!
でも、もう一つの大事なこと、お友達とキャイキャイワーワーは、なんだかあんまりうまくいかないんだよね。
ま、悩んでもしょうがない、できるときはできるでしょ。
私は私で、今できることを楽しくやればいい。
はじめてかいてみました。
長々となってしまって書きたい話に辿りつかない。
起承転結めちゃめちゃです。




