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第15話 紅蓮色の機体

プロローグの続きになりますので、お忘れの方はプロローグをご覧ください。

 コックピットのモニターに広がるのは荒廃したビル群。

 昼間に黄土色の巨大な仏像と戦った場所とは違っていた。

 マリが搭乗するケルベロスの隣には紅蓮色の機体がたたずんでいる。

 警戒するように、周囲を見渡している。


 この機体にはあの人が乗っているんだ。

 わたしを化け物よばわりする人。

 名前はたしか緋月総司ひづきそうじ

 あの人と一緒に戦う——そんなことできっこない。


 なにより、〈虚無の瞳〉を倒すために強くなる必要がある。

 ベルさんはいっていた。

 ケルベロスは敵を倒せば倒すほど強くなるって。

 敵は——ケルベロスで倒さなきゃいけない。

 一人でやるんだ。

 

 マリは強迫観念にも似た思いに捉われていた。

 ケルベロスをり、総司に何もいわずに駆け出した。

 



 そのあとは悲惨だった。

 戦場を駆けずり回り、象型ヘイムダルを見つけた。

 倒せば父親であるユウキを取り戻すことにつながる。

 その一心だけでマリの心は埋め尽くされ、余裕がまったくなくなった。

 結果、まともに戦うことすらできず、機体は大破。


 マリがやられると思った直前、助けが入った。

 助けたのは紅蓮色の機体。緋月総司だった。

 

 自分を化け物よばわりする総司相手に、マリは自らの非を認めることができなかった。

 負けた言い訳を連ねるマリに総司がいい放った。


「黙れよ。まもるを喰らった化け物が」


 マリはしばし凍りついた。

 

 なにをいってるのだろう。

 守という名前はきいたことがある。

 たしか、精霊サタンの前の宿主。

 喰った……とはどういうことだろう?

 混乱するマリは、同じコックピット内に佇むベルゼブブに目を向けた。


『早川守。サタンの前の宿主は、この機体--ケルベロスに吸収され、肉体は滅びました』

「は?」


 マリは顔をひきつらせた。


「それってこの機体の中に、その……守さんの遺体があるってこと?」

『ありませんよ。完全に分解されているので』

 

 だとしても、薄気味悪かった。

 人を吸収した機体……。

 この機体に乗っていたら、自分まで吸収されてしまうのではないか。

 漠然とした不安がマリを襲う。


『守が望んだことです。

 守がケルベロスに取り込まれることで、()を取り戻した。

 〈虚無の瞳〉を倒すという念願への希望が紡がれた。

 そして、守の願いが叶う道も残された』

「なにをいってるのか……わからないよ」

『この戦いが終わったら、話せることはすべてお伝えします。

 まずは、狭間の世界を終わらせるためタイプΩを倒しましょう。

 そのために、機体の修復に専念してください』


 そういわれても、簡単に気持ちを切り替えることなんてできない。

 マリは修復を試みたものの結果はかんばしくなかった。


 ドドドドド。


 唐突に響き渡る巨大な地響き。

 音の方向に目を向けると、巨大なゴリラのような化け物が飛び跳ねていた。

 背中から蜘蛛の足のようなものが伸びてうねうねとうごめいている。

 胸をドラミングしながら、気色の悪い雄たけびまであげ始めた。

 頭部についている巨大な赤い瞳が、ギロリとこちらを睨んでくる。

 

「あれがタイプΩか。

 ちょうどいい、あれは俺がやる。

 化け物はそこで這いずり回っていろ」

『総司! あんただって実戦は初めてだろうが。

 マリが機体を修復し終わるまでは逃げろ。マリをかばいながら戦うのは無謀だ』


 響き渡るサタンの声を無視するように、紅蓮色の機体は巨大な槍をゴリラ型に投擲した。

 それと同時に、大地を蹴り、翼を使って文字通り空を飛んだ。

 翼をはためかせ、空中を泳ぐ。

 生き物としか思えないような滑らかな動き。

 その動きだけで、マリは自分の未熟さを思い知らされた気がした。


 ゴリラ型は横っ飛びに跳ねて槍をかわした。


破壊の羽根(デストロイフェザー)


 総司の声とゴリラ型が地面に到着するのは同時だった。

 紅蓮色の機体から放たれる剣の嵐。

 

 ゴリラ型は凄まじい機動力で避けるが、左手左足に数本の剣が刺さった。

 もともとが紅蓮色の剣は、その刀身を黄色に染めて光り……はじけた。

 それと同時に視認できるほどの凄まじい雷がゴリラ型を襲う。


 びくびく、と身体を痙攣させながらもがくゴリラ型。

 

破壊の羽根(デストロイフェザー)


 再び総司の声が響き、ゴリラ型に次々と剣が刺さる。

 刺さった剣は雷と化すだけでなく、炎と化すものもあった。

 炎雷を振り払うように、ゴリラ型は激しく暴れまわる。 


神殺しの槍(ロンギヌス)

  

 紅蓮色の機体の眼前に、初めて見る形の槍が生成された。

 銀色に鈍く光る鉄の塊のような槍。

 槍というよりは、西洋のランスともいうべき円錐に似た形状。


 紅蓮色の機体は素早くゴリラ型に近づき、蜘蛛の足が生えた背中にそれを突き刺した。

 一度だけではない。

 映像の早送りのように瞬く間に何度も何度も串刺しにしていた。

 マリの目でその動きを捉えることはできなかった。


 蜂の巣のように穴だらけになったゴリラ型にダメ押しの一撃が放たれた。

 引き抜いた槍の先に巨大な瞳のような結晶がついていた。

 ルビーのように輝くその結晶は、バキバキという音をたててひび割れ、最後には完全に砕け散った。

 破壊と同時にもたらされる太陽に似た激しい光。

 光の輪が一瞬で同心円状に広がり、ビデオの逆再生のように収縮した。

 雷鳴に似た轟音とともにゴリラ型は完全に消滅した。


『……未熟(みじゅく)ですね』


 どうしたらそんな感想になるのか。

 場違いとさえ思えるベルゼブブのつぶやきがコックピットに響いた。

 つぶやきが聞こえると同時に、マリの視界にひびが入りそのまま砕け散っていく。


 これは——狭間の世界が終わる合図。

 

 マリは戦いが終わったことを実感した。


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