測定不能
二話目。
まだ慣れない。
私はあの空気の中、人間を殺すことができなかった。
というかあの運の良さはなんなのさ。
なんで回避できてんの!?
水鏡での殺人率、100%だったはずだよね?
主神様、水鏡バグってますよ!
ともあれあの運は異常だ。
調べる必要がある。
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というわけでやってきたのは下界図書館!
下界図書館は私たちが住む世界以外のことが事細かに分けられた図書館です!
生態系とか遊びとかのレベルじゃなくて、内臓ひとつひとつで項目があるぐらい細かいのです。
私の目的はここであの人間、木葉のステータスを見ることです。
ステータスってのは世界ごとに表記が変化するからややこしいんだけど、
今回の場合は
体重、身長、血液型、誕生日、身体能力、知性、運みたいな感じで表記される。
他だと身体能力のかわりにHPとかMPとかSPとかが入ったりする。
さてさて、木葉がいる世界のステータスが載ってるところまできたのだが、相変わらず数が多い。
誰かに手伝ってもらいたいが、
やはり誰もいない。
こんなところに来る方なんてなかなかいないからね。
「おや、サーラ様じゃないですか。お困りのようですが如何なさいましたか?」
「!?」
!?。まさか私以外にも客がいたとは。
少し古びたフード付きの黒コートを纏った白骨死体みたいな姿をしているのは、ハデスさんの部下兼世話役兼苦労人の死神さんです。
「今すごく邪険に扱われた気がするのですが、」
「気のせいですよ」
「それで何かお探しですか?私で良ければお手伝いしますよ」
な、なんだと!?
わざわざ休暇中に死神さんが手伝ってくれるだと!?
明日の神界は全地域において人間でも降ってくるのか?
そう思ってしまうほどに彼女は苦労人なのだ。
同情するよ。
上に無理難題押し付けられる気持ちは。
「あ、お気になさらず。今も一応職務の途中なので」
「そうなんですか。珍しいですね。ハデスさんがこんなところに探し物をするだなんて」
「実は冥府で下克上がまたおきましてね」
「またですか。なら納得です。お疲れ様です」
「ありがとうございます。それでどのような本をお探しで?」
本当に良い方ですね。この死神は。
「実はですね〜」
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「なんと。水鏡で死なない人間がいるのですか」
「そうなんですよ。驚きですよね」
水鏡は主神様御謹製の神具です。
完璧であるはずの神具がまさかの不調。
あの死神さんが驚くのも仕方ありませんね。
顔、動きませんけど。
「だから人間の方に異常があるのかなと思いましてステータスが載ってる本を探しにきたんですよ」
「ありましたよ」
「速すぎません!?」
「このくらいできないと彼の方の元では働いていけないので」
死神さんの仕事の速さは相変わらず異常だ。
今度労ってあげないと。
さて、目的の物は見つかったので早速閲覧しましょう。
ふむふむ、ふむふむ、ヘァッ!?
「ヘァッ!?」
「!どうかしましたか、サーラ様!?」
「彼、運のステータスが、異常を超えてます」
「そこまでですか?見せてください」
私は言われるがままに彼のステータスを手渡した。
ついでに参考対象として平均的な彼の友人?の藻部という人間のステータスもだ。
『
日下部藻部
体重、46Kg
身長、174㎝
血液型、B型
誕生日、8月15日
身体能力、Bの上
知性、Cの中
運、Eの上
備考、運以外は超平均。いろいろ危ない。
』
『
咲馬木葉
体重、43Kg
身長、164㎝
血液型、A型
誕生日、6月25日
身体能力、Dの中
知性、Aの下
運、測定不能、推定Sの特上
備考、運が異常です。妹に愛されている。
』
友人の藻部はまだ平均的だ。
ただし木葉、テメーはダメだ。
測定不能とか見るの初めてなんですけど。
「そう思いますよね。死神さ、ん?」
死神さんはその場から消え去っていた。
置き手紙を残して。
『死神の本能が疼きました。ちょっと魂回収できるか試してきます』
oh。
状況説明少なめで台詞多めなのはわざと3割の不慣れ7割です。ご想像にお任せします。