異世界のためだ、頼むから死んでください。
転生、
それは私たちの世界では下位世界にさまざま理由で殺してその世界に送り込むことを意味する。
今まで何度も行われたことだ。
ある少年は世界の敵たる魔王を下した英雄となり、
ある少女は世界が破滅する原因となるはずだった国の王族を支え、その国の王妃となり世界を知らずに救った。
何なら最弱種に転生させられたのに世界一の国を建国した者もいれば、世界を滅ぼし世紀末覇者になった者いる。
「望んでもないのに大切な人たちから切り離すなんて」なんてこのことを知ったら文句を言う人間がごまんと出てくるだろう。
しかし皆異世界で楽しく、或いは必死に生きている。
未練はあっても帰りたいなんて最終的には皆考えなくなる。
一部は違うけどね。
再び言うが転生とは、私たちの世界では下位世界にさまざま理由で殺してその世界に送り込むことを意味する。
つまりは私たち神さまが転生者を意図的に殺していることになる。
もちろん理由は様々だ。
ある神は自らの失敗を償う為に、
ある神は自らの好奇心の為に、
ある神は自らの信仰を守る為に、
ある神は自らの存在を人間に知らしめる為に、
それ以外にも、
他の神に頼まれたとか定期的にある世界を救う会議で
誰かを転生させる担当を決めることもある。
今回はそんな担当に願ってもないのに選ばれてしまった私、女神サーラのお話だ。
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「〜〜〜というわけで今回の転生担当はサーラということで。意義のある方はいますか?」
「はい!」
「サーラ、何か意義があるのですか?」
「意義しかありません!」
「そうですか、では一応念のため聞きます。どのような理由で意義があるのですか?」
「なんで私なんですか!もっと適任の方がいるはずですよ!私なんかみたいな神じゃなくて!」
「………はぁ。サーラ、本音を言ったらどうですか?』
「働きたくないです!」
「ということで、サーラの意義は却下します」
「そ、そんなぁ〜」
「他に意義がある方は……いないようですね。ではサーラやってくれますね」
「イヤです!」
「やってくれますね?」
「イ、イヤです」
「やって、くれます、ね?」
「ヒッ、わ、わかりましたよぉ〜。や、やればいいんですね」
「よろしい。ではこの適正リストを参考に選んでくださいね」
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私は重い足取りで帰り道を歩いていた。
私たち神様には担当地域というものはあるが、人間で言うところの《家》というものを持っている者はごく少数だ。
なので帰り道というのもあながち間違いで、正しい言い方は帰り道である。
と言っても今のわたしからしたら帰り道ではなく帰り道の方がより正しい。
私が向かった半強制的に行かされた場所は転生者を選択する場所、天に転じる新たな生と呼ばれる水鏡が置かれた場所だ。
ちなみに誰も正式名称で呼ばない。
一体どんな中二病がつけたのだか。
転生者を選ぶにあたって様々な決まりがある。
私の場合、渡された参考者に当て嵌まる人間だ。
なので選ぶにあたって参考書に目を通さなければならない。
内容は以下の通り、
『
1つ、人間であること
1つ、人間としての最低基準の身体能略を持つこと
1つ、人間としての一定以上の礼儀を持つこと
1つ、運がいいこと
1つ、可能であればオタク、及びそれらに近しい者であること
追記、サボらないように
』
ここ数年でよくある項目に『運がいいこと』が追加されただけのただの参考書だ。
どう考えても複製品だ。
後から手書きで書かれた追記がなければ…
あの野郎、今度会ったら覚えてろよ!
最近だととある世界のとある星のとある島国から選ばれることが多いそうなので、私もそこから選ぶことした。
適当に都心から少し離れているが田舎過ぎない場所を見てみよう。
ちょうど学徒たちが帰宅する時間のようだ。
どうやら夏休みという長期休みに明日から入るようだ。
何故皆このように喜ぶのだろうか?
私が聞いた話では夏休みとは数多くの課題というものが教師から渡されて夏休みが夏休みになる者がいれば、夏休みになる者もいる、と聞く恐ろしい期間ではないか。
その話を聞いた時を思い出すだけでも体が震えてしまう。
ガタガタガタガタガタガタガタガタ。
さて、気分を取り直そう。
どこかに『礼儀』があって『オタク』っぽくて『運がいい』人間っていないか、な?
『おっしゃァァァァァァァ‼︎激レアゲットォォ!』
えっ!?何事?
『いやぁ〜、嬉しいなぁ〜。念願のキャラが手に入ったは〜』
なんだ最近人間がよく持ってる板でなんかあったのか。うるさい奴め。
『やっぱっしガチャは木葉に頼むべきだな!この前だって、ええっとなんだっけ?ああ、そうだ龍玉のキャンペーンでベジタブルのフィギュアが当たったんだっけ?』
『当たったのは龍玉じゃなくて犯罪引き寄せ少年な。あとあん時やってた龍玉のやつのフィギュア、ベジタブルじゃなくて栗輪の方な』
おお!いい人間発見!
早速殺すぞ!
そして前の生活に戻るぞ!
交差点が近いことだし、ここは王道の【車との衝突による事故死】だ!
これをこうして、あれをこうして、こうじゃ‼︎
『お、おい木葉!前、前!』
『何言ってんだよ藻部?』
『信号赤!赤だって!』
『へっ?』
キィィイィィィィィィィ!
ドガシャアァァァァ!
グチャッ!
勝った。計画通り!(ドャァァァァァァァ)
なんもスキルも持ってない人間がこいつを避けることなんてできないんだよなぁぁぁ(嘲笑)。
『だ、大丈夫か!?木葉!』
『えっ、うん。なんか平気みたい?』
ヘァッ!?
『あ、おいそれ!血か!?』
『んーー』
ペロッ
『なんかスイカみたいな味がする』
『えっ?マジで?』
『まじまじ。しかも結構旨そう』
『大丈夫か、坊主?』
『大丈夫です。多分怪我ひとつありません』
『そうか、そいつはよかったな。それで、あれなんだが、人が、今の見てないじゃないか』
『えっ、あっはい、』
『それでなんだがな、スイカの方は無事なんだかあるとしたらイチャモンつけてくるやつが最近多くてな。だから、数物でもいいならやるからよ、俺が運んでたスイカが偶然落ちちまってそれを拾うのを手伝ってことにしてくれねぇか?お互いその方が得だろ?』
『いいですよ。妹も喜びそうです!』
ぬぅあぜぇだぅぁぁぁぁ!
ぬぅあぜぇだ、ぬぅあぜぇ生きてるんだ!
ていうかぬぅあぜぇ食べ物貰った上、不問にしてもらってるんだ!
こうなったら電柱でも落としたろうか!?
『にしても珍しいな。お前にあんな目か起こるなんて』
『確かに言われてみればそうだよね』
よろしい貴様に電柱、いや、鉄柱を落としてやる。
これは最早死刑宣告だ。
ヤロォ、ぶっ◯してやる!!
木葉!天誅!
『なぁ?』
『んっ?どした?』
『なんかみんな上見上げてね?』
『気のせいじゃない?』
『そうかそうか、気のせいか』
『そうだよ』
『ワハハハハ』
『アハハハハ』
ゴシャァァァッン
『………上を見上げてた理由はコレか』
『………コレだね』
『なんで鉄柱なんか落ちてんかだよ』
『上でなんかあったんだろうね』
『今日ぜってーヤベーってお前。早よ帰って紅葉ちゃんとイチャイチャしてやんな』
『妹と遊ぶ表現がイチャイチャなのは悪意感じるけど、今日僕が危ないなら紅葉と一緒にいることはできないかな』
『なんでだよ?』
『例えばの話、紅葉と遊んでて車が突っ込んできて、紅葉に何かあったら嫌じゃん』
『確かに。けどどうすんの、今日?』
『泊めて♪』
『そうかそうか、今日1日の間に二度も死ぬであろう事故にエンカウントしてるくせに普通に生き延びてる木葉くんを我が家へ招いてその上で一晩屋根を共にしてくれと、』
『そうだね』
『だか断る』
『この藻部にとって最も好きなことのひとつは』
『相手が家族を思って頼んだことなら絶対に断れないだろうと思ってるやつに「NO」と断ってやることだ…ッ』
なにそれ、不条理すぎん。
どうやら私は二度も死を回避した木葉という人間に驚いてフリーズしていたようだ。
『お前、それ言いたいだけだろ』
『当たり前だろ!こんな台詞言えるタイミングなんてなかなかないからな』
『んで、本音は?』
『普通に言いたかった、他のもあるけど一番な理由は、ここで「YES」と言ってしまうと、俺のすぐ後ろにいる妹ちゃんにナイフの代わりに可愛らしい筆箱を心臓に刺されちゃうからさ。嫌だよ俺、心臓を捧げるなら壁の外に行く団で捧げたいよ!』
『いい加減やめろよ!お前!なんか色々とアウトな気がしてきたから』
『………お兄、ほんとにモブの家に泊まるの?』
『愛する妹よ、いつから居たかは知らないが多分話の内容はしっかり聞いていたのだろう。僕は今日2度も死にかけてるんだ。勘だかまだまだ続きそうな気がするんだ。だから妹よ。耐えてくれ』
『………ヤダ』
『頼む紅葉、お前のためだ』
『………ヤダ』
『そこをなんとか』
『………ヤダ』
『……………可愛らしい奴め!そうだよな、たんなる勘なんだ。気にする必要もないよな』
『………そうだよお兄、気にする必要なんてないよ』
『そうだよお義兄、気にする必要なんてな、ブバァッ!な、何しゅんなさ紅葉ちゃん』
『………お兄をお兄って呼んでいいの私だけ。モブに言う資格ない』
『なぁ木葉さんよぉ、この子反抗期なん?』
『…………………』
『なんとか言ってくださいよ!』
『紅葉、今日の夕飯の献立は?』
『………ハンバーグ、あと藻を使ったスープ』
『ひどい、俺を無視しないでよ!』
なんだこれ?
どうも寿咄と申します。本作『女神さまは転生させたい』が初投稿作品です。不慣れであるためミスが多発してしまうかもしれませんが、多めにみてくれると助かります。最後になりましたが趣味投稿なので不定期になってしまうかもしれません。