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旧教会跡

夜の森の中を歩き続ける。

木々から漏れる月灯りが由美と俺を照らし出している。

由美に言われるがまま森の中を歩いてきた。

背を向けている彼女の隙をついて逃げようかと歩みを変えようとする。

瞬間、背中越しから、

「やめときなさい。逃げたら全力で阻止する」と釘を刺された。

普通の女子高生とは思えない気迫があった。

想像してた教団のアジトやらは今だ見えてこない。


少女は立ち止まり、こちらに振り向く。

 「ここなら、結界も貼ってあるし。十分能力を使えるでしょ」

森を抜けると廃墟と化した教会があった。

ボロボロになった屋根の頂点には十字架が飾られている。

当然、俺達以外に人気(ひとけ)はない。

「結界だとか能力だとかお前の宗教はそんなくだらないモノを拝めてるのか?」

「なに?まだ勧誘だと思ってるの?」

由美は呆れて、ため息をつきながら腰を掴んでいる。

「こんな所に連れてきてなんなんだ?ふざけてんのか?」

「言ったでしょ?まだやってない事があるって」


次の瞬間、

少女は白く輝き、俺の視界を奪う。

暗闇に慣れた目は急な光に対応しきれず景色を白く染めってしまった。

段々とその光に慣れ、視界が回復する。

 「嘘だろ?」

思わず口からこぼれる、それはそうだ。

目の前に急に天使が、いや、正確にはさきほどまでの少女が。

制服は翡翠色の衣装に変わり、背中には翼が、手には弓を持っている。


「これが業よ。人の域を超えて発現される異能。

 本来業使いは代々受け継がれていく血統種と呼ばれるモノが普通なんだけど

 竜也さんは特別、純粋種と呼ばれる超自然的に業に目覚めた者」


「俺にそんな能力はない、出したくても出し方を知らない」


「簡単よ。イメージすれば出せるわ」

「そんな、無茶苦茶な」


そんな簡単に出せるならと、試しにイメージしてみる。

こういうのは単純に剣とか槍だとかそういったものだろうか。

彼女の様に衣服や武器といった物をイメージするが体に異変はない。


大体なんだ、教会って事は彼女はシスターなんだろ?

その割にはちょっと露出が多いんじゃないのか?

スカートから透き通るような健康的な足が見える。

いやいや、雑念はいけない。もっと集中しないと。

由美の顔が段々と呆れた顔になっていく。

「いい加減にしてよ。あなた私がまだ粗末な作り話を信じていると思ってるの?」

彼女は俺を信じていたワケではなかったのか


「違う!俺は」

その瞬間、俺の頬を銀光が掠める。

彼女はさらに射んとばかりに弓矢をつがえてこちらを睨む。

「いきなりなにすんだ!」


「だってしかたないじゃん、あんた犯罪者って自覚ある?

 能力者の神谷市への無許可無断侵入は重罪よ。

 そしてこの街の結界は強力で破れるはずがない、あんた何者なの?」


「犯罪者」呼ばわりの上に弓矢を射たれた。

俺の感情は抑えられない、殺気のこもった目で由美を見る。

「なに?怒ってんの?ならあんたの話を信じてあげるから。

 業を発現して私に一回でも触れられればあなたの勝ち、自由にしていいわ」


今度はルールを一方的に押し付けてきやがった。

 「今度はゲームかよ、俺は帰る」

今すぐにここから離れなければこのままじゃ本当に自分がどうにかなりそうだ。

 「勝ったら帰ればいいよ、私の勝利条件はあんたを殺す事だから」

俺を殺すだと?それはこちらのセリフだ

今すぐ押し倒してそのご立派な羽をむしってその可愛い顔を悲痛に歪ませてやりたい


 「あんた、追い込まれなきゃ本気にならないタイプっぽいし

 なんていうか、顔に出てるよ?俺は本気出せば出来る奴だって根拠の無い自信が」


ブンッ!と由美の顔に足元に落ちてた倒木を投げつける。

怒りに任せて投げた木は少女に易々と避けられた。


 「すごい怪力だね、驚いた」

言われて自分で思わず驚いた。

怒り任せで投げた倒木は長さ二メートル近い抱えるほどの太さのものだった

それを由美に向かって、高速で投げたのだ。


 「じゃ、殺るか殺られるかってことで」

少女は弓を構え、つがえた矢を放つ。

空気を裂く音と共に俺は思わず体を横に飛び込ませる。上に何かが掠める感触を感じた。

怒りは消え嫌な汗が出てくる。

この子は俺を本気で殺そうとした、その恐怖から俺は暗い森の中へ逃げ出した。

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