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朝食

「――っ」


光で目蓋が熱くなるのを感じて意識が目覚める

身体を起こして天窓から覗く陽の光に身体を伸ばす、

どうやら、礼拝堂のベンチで一晩過ごしてしまったらしい

俺を包んでいた毛布をどかす、ありがたい事に誰かが毛布をかけてくれた様だ

「起きましたか?」

背後からの声に驚き、振り返る

「おはようございます」

シエナ、だったろうか?

彼女が俺を保護してくれるという話で昨日は終わったはずだ

いや、あの宝石の事もか――


「挨拶も忘れてしまったのですか?」

シエナは睨むように俺に問いかける

「おはよう、シエナさん」

シエナの怒気に蹴落とされ、少女にさん付けで返事をしてしまった

さすがはカトリック、礼儀や礼節には厳しそうだ

「えぇ、朝食の準備が出来ましたのでダイニングルームへ。それから、私の事は呼び捨てで構いません」

促されて、彼女の後をついていく

奥の扉を抜けると回廊に出た

中庭では昨晩の雨で濡れた花々が太陽の光を喜ぶように咲き誇っている

両端には中庭を囲む様に建物があり、俺達は左の建物に向かっていく

「なぁ、昨日の事なんだけど」

「その話は朝食を取ってからにしましょう。こちらです」

建物に入るとテーブルの上には朝食が並べられていた

パン・スープ・サラダ・目玉焼き

オードソックスな洋風の朝食

それに目から反応して胃の動きが活発になっていく

彼女が奥の椅子に腰掛け「どうぞ」と正面の空いた椅子に促す

そして、手を組み。祈るようなポーズをし始めた


「あ、やっぱり」と俺も釣られて同じ様に手を組む

お決まりのお祈りが始まる

文章など覚えてないので、彼女の言葉が終わるのをひたすら待つだけだった


「アーメン」

そうして、彼女は目を開ける

「待っててくれたのですか?」

「え、いや、だって」

どうやら、俺は待つ必要は無かった様だ

考えてみれば教徒でもない俺がお祈りをする意味がなかったのだ

神様とか信じてないし

「お祈りをするシスターの前で食事をするほど無礼者じゃないよ」

「そうですか。待たせてすみませんでした。」

そう言うと彼女は食事を始める

俺も食事を開始する


「うまいな」

思わず声が出る

パンは香淳で普段食べてる市販のパンなんかお話にならない

口に入れれば焼けた小麦の香りが口いっぱいに広がり噛めば噛むほど旨みが出てくる

口の中の水分が失われれ、スープに口を付けるがこれもまた絶品。

キャベツとタマネギを優しいコンソメの味が包んでくれている

「そうですか?口に合ったなら光栄です」

彼女はどこか嬉しそうにスープを口に付ける

「これは全部、君が?」

「貴方と私以外、ここにはいません。

 普段は神父と私と由美の三人が住んでいるのですが、神父は出張中で不在なのです」

淡々と会話が終わる

食事中の会話はあまり好きではない様だ

まぁいい、この食事が終われば聞きたい事は山ほど聞けるのだ

食事が終わり片付けを済ませると彼女は洗顔所やトイレなどの公共場所へ案内してくれた

「洗顔などを済ましたら、礼拝堂に来てください。そこでお話をしましょう。」


「それでは」とシエナは俺に背を向ける

「わかった、ありがとう。」

シエナを待たせるのも悪いから、さっさと用を済ましてしまおう。

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