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SECOND YOUTH~二回目の青春~  作者: 六依由依
序章:過去を失った少女
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第8話:初恋と卒業アルバム


過去の私の人間関係。


それは、今の私にとっても、大きな心配事の一つだった。


お互いに五年間の空白期間があったとしても、

あちらはこちらの過去を知っている。


私が過去を忘れても、あちらは過去を覚えている。



そんな中で、私だけが失った過去を切り捨て、新たな人生を歩み始めるのは、許されるのだろうか?

それは、ただ身勝手な行為ではないだろうか?

もし、その中に、私を大切に思ってくれている人がいたら・・・?



連絡手段のない今、それを知る手立ては無かった。



-------------------








最近は、家にいる時は自分の部屋にいるようにしている。

少しでも、過去に繋がる何かを見つけるために。





今年もあと数日となったある日、ふと私はそれを見つけてしまった。



中学校の卒業アルバム。かつての私が過ごした、第一の青春の軌跡。



それは、机の上に置いてあった。

私はそれを手に取りゆっくりと開いた。









そこには、私のクラスのメンバーの写真が並んでいた。

私自身以外は誰も、見覚えは無かった。でも、きっとこの中には沢山の友達が居たのだろう。

それ自体にはあまり感想はなかったけれど、これが私のクラスのメンバーだったんだと考えていると、

何か不思議な感覚がした。






次のページからは、様々な催し物の写真が写っている。

体育祭、文化祭、修学旅行。

全力疾走だけれど、一番後ろを走っている私。

沢山の友達に囲まれ、ピースサインで笑う私。

突然写真を撮られ、明らかに油断している私。


私の知らない青春の一ページがそこにはあった。


けれど、私はこの記憶を無理に思い出そうとはしなくてもいいと思っている。

思い出は、作り直せるのだから。






卒業アルバムの最後は、寄せ書きスペースだった。


修学旅行、楽しかったね! 橘 彩奈

高校でも、演劇頑張ってね 相澤 加奈

最後の演劇、最高だったな! 吉田 優也

卒業しても、ずっと友達だよ! 市谷 結花

高校生でも青春しようぜ 三矢 誠二

いつまでもお元気で・・・ 九条 佳蓮


けれど、私はこの記憶を無理に思い出そうとはしなくてもいいと思っている。





思っている・・・・・・はずなのに・・・




思い出は・・・作り直せるのだから・・・・・・




なのに・・・・・・








私はいつの間にか泣いていた。

それが、孤独感からなのか、罪悪感からなのか、何が原因なのかはわからない。


やっぱり、完全に吹っ切れる事なんて出来てなかったんだ。



ここに写っている人たちは、私の事を忘れてなどいないかもしれない。

今も、私の事を心配していたりしていたら・・・


傍から見れば、自己中心的な想像だったかもしれない。

だけど、いざそれを捨てようと思うと、最悪のパターンが脳裏に浮かんで、それ以上の行動をとれなくなる。



この記録を、過去のものとして、切り捨てて、新しい人生を歩むなんて出来ない。



私の感情は、私の制御を外れていた。





そんな時、アルバムから一枚の写真が滑り落ちてきた。


「これは・・・?」


それは、私と見知らぬ男の子が仲良く二人で写っている写真だった。

その写真には、"初恋の相手"と、大きなハートマークで装飾されていた


「初恋・・・」


私はアルバムからその顔の人物を探し出した。

彼は、八重橋やえばし 一馬かずまと言うらしい。


私はさらにその名前を寄せ書きページから探し出す。





俺は遠い高校に行っちゃうけど、またいつか会おうぜ。

俺はいつでも待ってるから。返事、待ってるぜ 八重橋 一馬





・・・。卒業時点での二人の関係が分からない。


しかも、返事を・・・待ってる・・・?何の?


今の私には、それがなんだったのか、彼はどこに行ったのか、何もわからない。


私の涙が卒業アルバムを濡らす。


私には、まだやり残したことがこんなにも残っている。

しかし、それを終わらせる手段は無い。


前に、勝手に第二の青春を送るとか言ってたけど、私にはその資格が本当にあるの?


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