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SECOND YOUTH~二回目の青春~  作者: 六依由依
序章:過去を失った少女
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第5話:青春への第一歩


思い出は、作り直せる。

それは、家族との思い出に限ったことじゃない。


私は中学校を卒業したあとに事故に遭ったと聞いた。

つまり、次は高校生だ。


私の今までの友達はもう思い出せない。

持っていた携帯電話は事故の時に壊れてしまって、連絡先もわからない。



だったら、高校生、新しく初めてやろうじゃないの。

何故か外見は中学生の頃から変わっていないのだから、





そう、

私の青春は、まだ終わってはいない。




------------------







そう意気込んだ私は、振り上げようとした右腕が、肩の高さにすら上がらないのを見て、

力なくベッドに倒れ込んだ。

そして、深い深いため息を吐いた。






そう、

私の身体は、まだ戻ってはいない。




------------------




あれからというもの、私は本格的に高校入学へのリハビリプログラムが始まった。




とにかく、ベッドから降りる事さえできない貧弱な体をなんとかしなければ、

高校どころか退院すら怪しい。

今は6月。できれば半年でリハビリを終え、来年度に間に合わせたい。


いや、もっと早く終わらせたい。4年以上の昏睡と記憶喪失。

学力は今の身体以上に貧弱になってるかも。



・・・・・・・・・



・・・・・・



ちょっと辛くない?

もう一年待って、再来年にした方がいいんじゃない?







だがしかし、それが出来ない理由があるのだ。

何故なら、その学校。来年度妹の鈴が入学を志望しているから。



別に妹の後輩になるのが嫌ってわけじゃないけど・・・

でも、できれば鈴とは同級生でいたい。





------------------------







「じゃあ、高校生になったら、私がお姉ちゃんを助けてあげる」



高校の話を家族に振った時、鈴はこう言ってくれた。

助けるというのは、生活面・勉学面、

とにかく、全般的にサポートしてくれるという。

確かに過去の記憶もなければ、生活そのものに数年間のブランクがある私にとっては、

願ったり叶ったりというもの。






その妹の申し出の為にも、鈴と同じタイミングでの入学が必要なのだ。



------------------



リハビリの内容は、本当にこんなんでいいの?

と思えるほど、簡単な、運動とも言えない動作だった。








それすらできないほど、私の身体は衰えてしまっていた。



内蔵もだいぶ衰えているらしく、食事もあまり食感が無いものばかりだった。

正直美味しくはなかったけど、普通のものを食べても消化できないらしいので、我慢するしかない。


声に関しては毎日出しているおかげか、あまり長い間しゃべり続けなければ普通の声量なら出せるようになった。

けど、大きな声は出せそうにもない。




-------------





七月


リハビリは続く。


最近自力でベッドから出られるようになった。

出られるだけで、歩いたりはできないけど。


でも、一度転倒すると自力では起き上がれないので、まだ誰かの助けなしでベッドから出る事は許されてなかった。早いとこ、せめてトイレくらいは一人で行けるようになりたいなぁ・・・



八月


鈴から、夏休みに友達と遊んだ時の写真が送られてくる。

知らないもので遊んでいる写真ばかりだったけど、

来年、私がこの写真の中に写るために、今、がんばらなければ。




九月


指先の筋力もある程度回復してきて、まだまだ自分でも解読が必要なほどの字だけれど、ペンを持って字を書くことができるようになってきたので、勉強を始めた。


予想外だったけど、学力はあまり落ちてはいなかった。

記憶喪失は、過去の記憶がごっそり消えてしまうものとばかり思っていたけど、

残っているものもあるんだね。



十一月


短距離なら補助器具なしでも歩けるようになった。

着実に体は動くようになってきている。

字もそれなりのものが書けるようになった。



十二月


病院から、一時帰宅の許可が出た。

でも、私は元の家を知らない。





それでも、その家はかつての私が過ごした記録。

それに今、触れる意味があるのだと思う。

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