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SECOND YOUTH~二回目の青春~  作者: 六依由依
序章:過去を失った少女
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第1話:目覚め

出ない名作より出る駄作。といことで、毎日一話投稿を目標に頑張っていきます。


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暖かいオレンジ色の光の中、何人かが歩いている。その誰もが楽しげで、それでいて、悲しそうでもあった。

自分もその中の一人だった。

皆、一歩一歩を踏みしめるように、何かを名残惜しむように、ゆっくりと歩いていた。


声は出せず、手も伸ばせず、音も聞こえない。

それどころか、体の感覚も一切感じない。


ああ、きっとこれは夢を見ているんだろう。

何の夢かはわからない。でも夢ってだいたいそんなもん。


だから私も、オレンジの光を浴びながら、ふわふわとその夢を見続けていた・・・・






---




-------




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------------




視界がぼやける。

反対に今までの浮くような感覚は消え、体に重みを感じる。


ぼやけた視界が晴れてゆくと、そこは天井だった。

今まで寝ていたのだから、起きたとき天井が見えるのは当たり前だし、何もおかしくはない。

目が覚めたのなら、次にやることは体を起こす事だろう。働かない頭でも、それだけははっきりと理解できているので、本能レベルで刻み込まれている機能なんだと思う。


私は起きるために、腕と腰に力を入れ上体を起こ








・・・・・・せなかった。


腕は痺れたような感覚だけがあり、それ以外の感覚は感じず、言うことを聞かなかった。

まるで神経が繋がっていないかのように、両腕は私の指示を聞かず、ぴくぴくと痙攣を続けるだけだった。


一つ体の異常を自覚すると、他にもどんどんと全身の情報が流れ込んでくる。


足も動かない。腕と同様に、鈍い痺れしか感じない。動かせない。

全身が、錆びついたように動かない。


今の私に出来る事は、腰と首を使って身をよじらせるだけだった。






横になったまま首だけを動かして、当たりを見渡してみる。

白い天井、白い壁、白いカーテン、白いベッド。多分、病院なんだろう。

窓からは青い空しか見えない。


でも、ここが病院と知ったところで、できる事はただ寝ていることしかなかった。







そんな時、遠くからガラガラとドアが開く音が聞こえ、誰がが入ってくる

顔を向けると、それは看護師さんだった。

看護師さんは真っ直ぐこちらに向かってきて、私の顔を覗き込み、


そして、目が合った。


「あ・・・ぁの・・・」

体の異常を伝えようとしたが、声もうまく出すことができなかった。

まるで、私が喉の使い方を忘れてしまったかのように。

私は一体、今どうなってしまっているのだろう。


「え・・・?」

看護師さんは驚きの表情で私を見つめていた。

あり得ないとでもいうかのように。

「り・・・六依さん・・・?」


りくえ・・・?それは私に向かって呼びかけたのだろうか。

いや、私の名前は・・・・









名前は・・・・・・・・・・







名前・・・・・・・・・







・・・・・・・・・・・・









思い出せない



私の名前が思い出せない。


何故、何故?なんで?


名前なんて、一生の内に何度も使っているものなのに、なんで思い出せないの?


おかしい。あり得ない。怖い。わからない。どうして?どうして?どうして?

とにかくいろんな感情が沸き上がり、激しく動揺しているのが分かる。


「わ・・・ゎたしは・・・」

この恐怖を一刻も誰かに伝えたかった。

出せもしない大声で、目の前の看護師さんに伝えたかった。

でも実際に出たのは、虫の息のような、かすれて小さい声だけだった。

その事実が余計に不安と恐怖を煽る。



「六依さん!目が覚めたんですね!」

看護師さんは、そう言って私を抱きかかえて上体を起こさせると、


「ちょっと待ってくださいね、担当医を呼んできますから」

と、部屋を足早に出て行ってしまった。



待って、今の私を一人にしないで!

体も動かない、声も出ない、名前も出てこない。

その孤立感に今の私は耐えられない!



呼吸が早くなり、心臓の音も露骨に感じるようになる。

さっきまでの動揺とは比べ物にならない焦燥感。



担当医を呼んでくる。つまりまたここに戻ってくるという事実にすら気が付かず。

私はだたひたすらに震えていた。

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