暇つぶし
「待つとは言ったけど…私は何して待っていればいいのかな?」
やることなんてない。宿題はとっくのとうに 終わってるし。
占いやるしかないのかな?
自分の何かを占ったり、他人の何かを占う?
けど、もうすでに終わってるしなぁ…。
……さっきのは大変だった。本当に。
二度と寝坊しないようにしようと思えた時間だった。
朝に占いを楽しみにしている人が多いのは認識していたけれど、あんなに多くなるなんて思わなかった。
バイトとかはしたことないけど、あれぐらい忙しいのがずっと続くのかな。あれ以上かな。無理でしょ?
てか、社会人はバイト以上なんだよね。
無理じゃない?どこからそんな体力湧き出てくるの?
もう私ぐったりだよ?
……喉が乾いてるかも。てか、少し暑い。もう6月だから?
まぁなんにせよ飲み物買いに行こうかな。うん。
どうせならカフェ行こうかな。
うん、そうしようかな。
私は木造校舎勢だから、この木の感じがなんとも言えず大好き。
コンクリートも嫌じゃないけど…選べるなら木造の方がいいよねぇ。
木の匂い。爽やかな光。
好きだなぁ。やっぱり。
階段も木造なのが、またいい。
机も何もかも。
黒板は、まぁさすがに、ね。
木造校舎を出て、コンクリート校舎に向かって歩いている途中で、今年の中学新入生とすれ違う。5人組の女子だ。
「どっちの校舎がいいのかなぁ」
「やっぱりコンクリートでしょ。しっかりしてるし」
「けどさ、木造もかなりいい雰囲気あるよね?」
「わかる〜!あー、悩んじゃうな」
「期末が終わったら希望表出さないとじゃん?けっこー長い様で短いよね」
「ね〜」
この学校は、新入生は一学期の間にどっちの校舎で今後勉強していくかを、決める。
ちなみに、こういうタイプは基本コンクリートに行く。必ず。
木造に来るのは、何も迷うことなく決まる人が多い。てか、そんな人しかいない。
そして、コンクリートなんかより、木造の人達の方が何倍も面白い。
木造に来るのは、先生があまり来ないからだったり、木造が好きだったり、理由は様々だ。しかし、迷いがない。そういう人たちが私は大好きだ。
どんな考えであろうと、他人に任せるのでは無く自分で決める人。
そういう人達は見ていて飽きない。もちろん、たまにやらかす人もいるけど。
けど、そういうのも合わせて良い。誰かに言われて動くような人たちじゃない。こういうのは、結構強いのよね。
まぁ、それに…なんというか…人間観察に向いてるんだよね、あの校舎。
ちなみに、合わないと思ったら一回だけ校舎は変えられる。
木造から出て行く人は多いけど、やって来る人はいない。
つまり、すごく簡単に言ってしまえば、この校舎に選ばれている様なものだ。
何をしようとしていたんだっけ。
ふむ。
うん。
……。
あ、買いに行くんだった。
どうも、私というのは考え事を始めてしまうとなかなかその前にやろうとしていたことが思い出しにくくなるらしい。
考え事を始める前になにかメモをしておくべきだろうか?
けど、そんなこと考える暇なく考え事は始まるしな…。
じゃあ、やることは全て決めた瞬間にメモ帳に書く?
けど、そんないつも考え事してるわけじゃないし。
じゃあどうすれば忘れずに済むのかな?
たまに、すごくやばい事態になったりもする。
美結との約束すっぽかしたことも数え切れないほどにある。
いや、これについては言い訳する気はない。
私が全面的に悪いので。
かなり重要な約束を破ったこともある。
美結の誕生日パーティーとか。
あれはもうほんと、申し訳なかった。
あの時は、1週間口を聞いてもらえなかった。
しかし、この癖はなんとかして直さないと。
うん。
……何やろうとしてたんだっけ?
うん。
あー。
ふむ。
えー。
んー。
……。
あのー。
………。
あ、買いに行くんだった!よかった、危うく忘れるところだった。
今日は何飲もうかな。
どういう気分かな、私は。
うーん。
「…おい」
「…………」
「……がわ!!」
「…………」
「おい、長谷川愛菜!!!」
「…ん?あ、あー、斉藤先生。申し訳有りません、考え事をしていて先生のお言葉など全く耳にも入らず」
「貴様……」
「なんですか?この学校の特色の1つですよねぇ。学年トップは教職員と同じ立場になれるなんて」
「……仮にも教師と生徒だ。少しは敬うことを覚えろ」
「あら、心外ですね。私は尊敬に値する先生に対しては敬意を忘れることなどあり得ません。尊敬に値しない先生には敬意など捧げません。だって、学年トップである私は先生方と同じ立場なのですから」
「減らず口を…」
「と、言いますかぁ…。あんまり、これ言いたくないんですけどねぇ」
「?」
「いやぁ…先生って、仮にも私たちのクラスの数学の先生ですけど、初回の授業以来来ていないなぁというお話です」
「っ!」
「あなたが私たちに指導してくださらないので、私が代わりとなってクラスメートを指導しています」
「そ、それは…」
「なにかご事情があるのでしょうね。私からは理事長に手紙を通してお伝えしておきますね」
「や、やめてくれ…頼むから…」
「……最後の最後まで尊敬に値しない先生ですね。少しくらいは堂々として欲しかったです。私、話していても、揺らがないほどの先生としか話したくありませんので。さようなら」
はぁ。嫌な先生と会ってしまった。
あの先生は、全く私のクラスに授業をしに来ない。
その癖、私がいるからということで「長谷川愛菜を育てている素晴らしい先生」として権力を握ろうとしていたらしい。
まあ、何度かあの先生の話は録音してあるし、これを理事長に届ければあの人は終わり。
何人か勘付いている先生方もいるみたいだし、証拠はすぐに取れるでしょ。
さ、そんなことでタイムロスしてられない。
今日の気分を決めつつ、向かわなければ。
早歩き早歩き。
あ、バスケ部が練習してる。
おおー、頑張ってるねぇ。
基礎が大事だからね、私は大切にしないとね。
おや、あれは私のクラスの向原君じゃない。おおー、すごい、すごい。
あ、シュート。うーん、惜しいねぇ。
練習積んで上手くなるよ、きっと。
っと、早く行かないと。
「お、長谷川」
「あ、橋皮先生。どうなさったんですか?」
「あー、なんて言えばいいか。お前、今暇か?」
「ええ、まぁ…」
「なら、少し頼まれごとをしてくれないか?」
「良いですけど…」
「ああ、よかった!じゃ、ちょっと職員室来てくれ。そこで渡す」
「?はい」
「と、いうわけで労働を頼む」
「そんなことだろうと思いましたよ…」
「まあまあ、給料としてこのジュースやるから。じゃ、終わったらもって来てくれよ。頼んだぞー」
頼まれたのはしおり作り。
クラス全員分の。
もう印刷してあるものを折って、それをホチキス留め。単純な作業ではあるが、疲れる。
うーん。どうしよう。
カフェに行ってからにするか?
それとも、このまま頂いたジュースを飲んで面倒で退屈な労働をするか。
まあ、良いか。
タダでジュースが手に入ったんだしね。
そこに、労働するという最強の暇つぶしであるものがオプションとしてついて来ただけだ。
まぁ、まだ時間はある。
悲しいことにたくさんある。
美結の部活を待つというのは思ったより待つようだ。
ゆっくり丁寧にやるとしよう。
来週、私たちが行くところの、らしいしね。




