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王様と手羽元餃子

(*´﹃`*)

最近食べすぎで二キロ太りました。

皆さん食べ過ぎには注意しましょう。

あ、あんなところに美味しそうな屋台が……

「ふむ……」


荘厳。

そう言っても過言ではないこの空間には宝石の様にきらびやかな食器にタイル、画伯は全て調和されており、料理のランクを一段上げる。

その空間の真ん中に椅子に腰掛けている人物とその背後でひあ汗をかく男が一人。

味を吟味するようにじっくりと味わって食べる巨漢の男がナイフとフォークを使い分け口に運びしっかりと焼かれた豚のフィレを味わうようにゆっくりと。

その姿を固唾を呑んで見守るシェフ。


ここは王都オーギュスト。

王城のある一角、伝統に乗っ取り長年受け継がれた王宮料理は一般市民には到底口にすることは出来ないだろう。

巨漢の男……いや王であるエスコフィエはシェフの顔を見てニッコリ笑う。

シェフは王の笑顔を見て安堵の顔を浮かべた途端に王はこう告げた。


「……美味しい。けど飽きたわ」

「え……」

「いやねシェフの腕前は確かにすごいよでもね何ていうの……もうなんか食い飽きたというか毎日毎日似たような料理しかでないから飽きちゃったのよ」

「も、申し訳ございません。新しいメニューの作成を……」

「ああ、そんなに謝らなくていから……」


かなりフランクであるエスコフィエは頭を悩ませていた。

今年から始まった魔王との晩餐会、その初となるのがここオーギュストで行われる。

和平結んだ魔王は喜んでいたが、どうやらあまりくどい料理は好きではないらしい。

あまり機嫌を損ねるとかえって戦争がまた起こりかねん。

そしてシェフに晩餐会に出すコース料理のメニューを一通り出してもらったのだがこのザマだ。

サラダから始まり肉料理まできたのだがここまできて油っこい料理が多すぎてくどい、くどすぎるのだ。


「んじゃ、あと片付けておいて、あたしはちょっくらメニューを見直すから」

「はい……かしこまりました」


午後の七時を回るころだった。

ドアを開け自室へと向かうエスコフィエ、お腹をさすりながら自室の扉を手にかけて中に入った。




「で、どうしたらいいと思う?ナツメっち」


午後七時を過ぎ店内ではいつもの客が訪れる時間帯だ。

ナツメはせかせかと用意を初めているところにいつの間にか席に座っている人物が一人。


「……あの、かなりフランク何ですね王様」

「そのほうがみんな打ち解けやすいと思っているのよん、あとあたしのことはエスィーちゃんって呼んでいいわよん」

「は、はあ……」


なんでこの世界の王はこんなにも自由なのだろう。苦笑いをしながらナツメはそう思った。

店内には百九十センチはあろう巨漢の男……いやニューハフがカウンター席でやや暗めの赤と白を貴重とした服装で座っていた。

店内にはクラシックが流れサビに差し掛かかっていた。


「ほんとここいい店よね〜。あたし毎日来ちゃおうかしら」

「王様の行方がわからない今でもきっと王城は大騒ぎでしょうね」

「いいのよ別にここならばれることないし、むしろゆっくり出来るからいいわ」


グラスに注がれたワインを飲み干し満足そうな笑を浮かべるエスコフィエ。


「はは……今日はどうなされますか?」

「そうね……さっきも王宮のシェフの料理食べちゃったけど少し物足りないわね。なにかボリュームのあるものをくれないしら?」


ウインクで合図を送る。バチコンと漫画のような擬音がでそうなウインクだ。

ナツメはぽかんと口をあけ呆気に取られ再度聞き直す。


「よろしいのですか?ボリュームのある料理といえば油っこい料理になりますが……」


エスコフィエは苦笑いしながら足を組み直し頬杖をつく。


「いいのよ、あたしは油っこい料理はすきよ。けどそれはあたしだけ、他の人からすると多分胃がムカムカして食べれないでしょうね。だから気にしないでちょうだい」

「かしこまりました。では今回限り特別メニューとさせて頂きます」


ぺこりと頭を下げ、ナツメは準備にとりかかる。


「というと?」

「はい、当店のメニューにはないものを作るのです。」

「あらやだ、嬉しいじゃないナツメっちは何を作ってくれるのかしら。あたし楽しみだわ」


両手を組んでクネクネと身体をよじらせるエスコフィエの姿に思わずナツメもハハハと苦笑い。


「それは出来てからのお楽しみですエスィーさん」


エスコフィエは調理しているところを見たかったのか少し身体を乗り出しその巨体を動かす。


「それは手羽元かしら?」

「はい手羽元ですよ」

「それ、あまり身がないから出し汁に使わない?まさかそれを調理するの?」

「はいそのまさかですよ、これに具を詰め込むんです、よっと」


ナツメは器用な包丁さばきで手羽先の軟骨をきり、筋を取り出す。


「へぇー器用なものね」

「ありがとうございます。今日の僕のおつまみのお供にしようと思いましたが多分エスィーさんも一緒にと思って」



ボウルの中に下処理された手羽元が尋常ではないスピードでポイポイと入れられていく光景に少々驚きながらエスコフィエは不敵な笑みを浮かべる。



「あら、おつまみ程度であたしを満足できるかしら」

「多分、気に入ると思いますよ。だから今回は裏メニューということで代金はいただきませんので」

「そんなことをしなくていいわ。あたしを満足させたらお金を出すわ。そのかわり満足出来なかったら今度の晩餐会で料理を奮ってもらうわ」


そんなことだろうとナツメは思ってはいたがそこまてまして僕を王城に連れて行きたいのかこの人は……

下処理を終え一旦まな板と包丁を洗うナツメはひあ汗をかく。


「それはそれは……こまりますね店が営業できませんね」


しかしどこか余裕の表情が見え隠れしているナツメに対しエスコフィエは不満そうに顔を顰める。


「なんだか余裕そうね」

「まあ僕よのお気に入りの料理ですから。それに、こう言ってはなんですが僕の作る料理って美味しいんですよ」

「知ってるわよそんなこと、ところでその手羽元はどうするのかしら?」

「いまからあんを作ります」

「あん?」

「中に入れる具材のことです、この手羽元の中に具材を入れるのです」

「へぇ〜そんなアイデアよく思つくわね今度王城でも試してみようかしら」


ボウルにナツメは袋からだした肉ミンチをいれ素手ではなく木の棒を使い混ぜ始めた。

キョトンとエスコフィエはその状況に間抜けな顔で見ていた。ハンバーグみたいねと思ったのもあるがそれ以前に何故手でこねないのだろうと。

王宮のシェフたちは皆手でこねていたが……

そしてボソリと呟いた。


「手でこねなくていいのかしら?」


その言葉が聞こえたのかナツメは反応し説明を始めた。


「確かにこねることは大切ですが、手でこねると手の温度が伝わってしまうんです」

「ダメなの?」

「はい、手でこねると肉に熱が伝わり加熱した時と似た状態になってしまうため結着力が著しく低下してしまうんです。ハンバーグもそうですが炒めた玉ねぎや冷たい牛乳、パン粉をいれるなんてナンセンスです。まずは肉だけでこねて結着力をつけます」

「へぇーナツメっちは凄いのね学者か何か?」

「いえ料理人です」

「そうよね、変なこと聞いてごめんなさい。さあ続けて」


はい、と答えるとナツメはすりこぎで潰すようにつきながら結着させ、長ネギ、ニラ、ニンニク、白菜を細かく刻んだものをいれ調味料もいれサックリとゴムベラを使いサックリと混ぜ合わせる。

そしてスプーンを取り出し手羽元の中にあんを詰めていく。

手際の良い作業にエスコフィエはため息が出るほど感心する。

そんなエスコフィエの視線にきもくれず、

少し底が厚いフライパンを持ってくるとフライパンに油を引き大さじ一杯程度の水を入れあんを詰めた手羽元を引き詰めていく。そして火をつけ弱火に設定すると蓋をした。



「これで一応もう終わりです、おとは焼きあがるのを待つだけですね」


ナツメは洗った手をふきながらカウンター席でウズウズしているエスコフィエに話しかけた。


「え、まだ時間かかるの?」

「はい、いまから八分ほど蒸していきますのでそして最後に二分ほど焼くつもりです」

「そんなに待たせて美味しくなかったら許さないわよ。……それまで話付き合いなさいよ」

「はい、かしこまりました」





カチリカチリと時計が時を刻む。

フライパンからはジュウジュウと水分が蒸発する音が店内に響いている。

料理とは五感で楽しむものだ、耳で、口で、鼻で、目で、触覚で。

それが全て揃った時に人は初めて美味しいと感じるのだ。


「あ、あのエスィーさん涎出てますよ?」

「え、あらやだはしたないわ」


涎をハンカチで拭き取り笑顔を見せるエスコフィエだが心中では平常心を保てずにいた。

貧乏ゆすりがだんだんと激しくなり、鼻息が荒くなる。


何なのこの匂い、胃を直接掴まれたかのようなこの衝撃は。豚と鳥のガツンとパンチの効いた匂いが止まらない。それもニンニクの独特の匂いでさらに強くなっている。

やばいわ〜めっがさやばいわ。唾液が滝のように流れそうだわ。


「だ、大丈夫ですか?エスィーさん」

「あたしの事はいいからはやくその料理を食べさせて頂戴!」


思わず迫力のある表情と大声が出てしまったことにエスコフィエは我に返る。


「ご、ごめんなさいそんな大声をだすつもりはなかったの」

「気にしないでください、僕も正直……早く食べたくて仕方ありません」


よく見るとナツメもウズウズと身体を揺らしている、思わず吹き出し笑い出すエスコフィエ。

数週間前からここに通い続けているがやはりこの店主は興味深い。

人間離れした料理の腕を持ちながら子供のような無邪気な笑顔に行動にギャップを感じる。


「そろそろですね……」


蓋をあけ、手羽元を……手羽元餃子を焼き始めた。

音ともに身体を巡ったのは匂い、強烈なまでの野生を感じさせるような鶏と豚の香ばしい匂いが駆け抜ける。


「お待たせしました手羽元餃子でございます」

「もう我慢出来ないわ!いただきまーす!」


フォークを握り指す……はずの手羽元餃子が消えた。

ナツメはすっと皿を引いたためだ。


「ちょ、なんで取るのよナツメっち!」

「何やってるんですかこの料理はフォークなんて使っちゃダメですよ」

「ど、どいうことよフォーク使って食べるものじゃないの?」

「違いますこうして食べるんです!」


手羽元餃子を一つ掴みかぶりついた。


「え!?」

「こうしないと本当の美味しさが味わえません」

「……」


恐る恐る一つ手に取り、かぶりついた。


「!!??」


中から肉汁が溢れ出しフワリとした肉の食感が噛む度に楽しめる。


「お、、美味しいすぎるわ!もうなんて言ったらいいのかしら……あたしはどう表現したらいいかわからない……」


エスコフィエが硬直しているなかナツメはポツリと心の中で呟いた。

ビール欲しかったな……




その夜はとても賑やかな店内になった。




mgmg(●´)З`)))

( ゜д゜)ハッ!た、食べてしまった

ま、まあまだ若いから代謝いいはず……

少し運動すれば痩せるだろ!

あ、また美味しそうな店が……

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