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便利な生き物

「決めた!」

「ん゛にゃ!?」


 がばーっと膝枕から起き上がりながら叫んだ私に、ネルが総毛を逆立てて叫び返す。

 ぶわっとなったざんばら頭を撫でこ撫でこしてあげながら説明する。


「うん。色々考えたけど中欧でいいかなーって思って」

「ふむん?ご主人様は住む場所決めたですか」

「そそ、散々うだうだ考えてきたけどやっぱり選ぶなら無難なところかなーって」

「まぁそうですね。中欧なら獣人っぽい私も目立ちませんし?」

「だよね。東洋だと獣人の中で私が悪目立ちするからねー」

「良い香りのお茶を扱うならどちらかと言えば東洋にゃんですけどね。微香系の香りの良いお茶が好まれていくら積んでもいいっていう人が多いので」


 ネルに撫でたお返しに膝抱っこされながら言われるけど、それはそれで危ないと思うのだ。

 具体的に言うとどんなお茶でも作れると解ったら手段を選ばない人が出るかもしれないという事。

 私は割と地道に世の中を楽しみたいのです。


「やっぱりそれだと東洋でのお茶売りは目立つよー。西洋でもお茶に拘る人はいるけどさー」

「私が店主という設定でもいいですにゃ」

「それ私が人質に取られるフラグ!」

「にゃにゃ?」

「あ、うん。お約束とか王道みたいな意味ね」

「なるほど。それは困りますねー。そんなことされたら全部バラバラにしちゃいそうにゃ」


 うーん、困った困ったみたいな笑顔をしてるけど知ってるよ。

 ゲームの習性通りなら私が攻撃されたら貴女相手が全滅するまで爪を振るうでしょ?

 だからやっぱり中欧で決まり。


「でもいいんですかご主人様」

「んー。なにがー?」

「中欧は東西の独立運動でちょっと国としては落ち目ですよ?」

「あ、あー。あー。文明発祥の地が中欧だと自然とそうなっちゃうのかー」

「豊富な資源に支えられての文明の発達で、色々消耗しちゃってますからねー」

「でも国情はある程度落ち着いてるんでしょう?」

「まぁ独立運動自体は海の向こうの話ですしね」

「じゃあ中欧でいいや」

「軽いですにゃー、ご主人様は」

「ずっと考えてても成る様に成るし……」

「まぁそうなんですけども」


 若干ネルから呆れたような感じがしてるけど、良いじゃない。

 いい加減踏ん切り付けないと目が覚めてから百年経っちゃうっていう事実に比べたら。

 あ……そういえば私加齢とかどうなるんだろう。

 各地を転々とするしかないかなー。


「ねぇネル。私達って歳取れるのー?」

「取れにゃいけどそこらへんは巧い事気にならないようになってるはずです」

「あ、そなんだ……ちょっと気が抜けた」

「世界の核が自分の世界の法則で苦しむとか、自分で毒を飲むみたいじゃないですか。だからそこは世界の方がくにっと合わせてくれるにゃー」

「ふむふむ。便利な存在になってしまった」

「私もその範囲内だから女二人の二人暮らしをずっとしててもおかしいとか思われないですよ?」

「おお……ネルも便利生物なのね」

「御揃いです」


 にぱっと八重歯を見せて笑うネルが可愛いので一杯撫でる。

 ん?この子犬猫山羊人が混ざったホムンクルスだから八重歯ではなく牙なのでは……?

 そんなどうでもいいことが気になった。

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