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ネルの意地悪!

 ホッとひと段落ついてしばらく時間が合ったけど、日が傾いてくるとまたぽつぽつとお客さんがやってくる。

 今更だけどうちの小龍包は大きい。

 一つが掌一杯からこぼれるサイズといえばいかほどか、解ってもらえるだろうか。

 そんなわけでおやつ需要だけでなく、夕食にも食べようというお客さんが来てくれているのだ。

 そしてそんなお客さん達は冷えたお茶もセットで……というわけにはいかず。

 小龍包を買うとお酒を求めて他の屋台に行ってしまうのが殆どなのだ。

 ちょっと残念。

 でも主婦って感じのおば様が複数買いするとお茶もセットで買って行ってくれることがある。

 この二日間でうちのお茶のおいしさは結構街に浸透しているらしい。

 嬉しい事だね。


「ご主事様嬉しそうです」

「うん。嬉しいなぁ。大好きなネルと一緒に、ゆっくりお店を開いて色んな人と話せるの、楽しいよ」

「ご主人様の会話はまだ怪しい所がありますけどね」

「し、仕方ないでしょ。まだまだこの世界の生の情報に疎いんだから。それに……」

「にゃ?」

「困ってる時はネルが助けてくれる、でしょ?」


 ちょっと甘えすぎかなーと思う一方、今更かなーなんて思っちゃったりして。

 ネルに甘える。

 あー、なんかトロトロに蕩けてネルに溶け込んでいるみたいで気持ちいい……。

 心から甘えるっていう行為、それだけでもう最高。


「勿論ご主人様が困ってたら私は助けますです。でも」

「なあに?」

「ご主人様を困らせてるのが私だったらどうするんですか?にゃふー、ご主人様のお尻柔らかいニャー」

「んな!何するの!」

「ちょっと揉んだだけですよ?」

「そ、そういうのはこういう場所でしないで!怒るときは怒るんだからね!」

「うんうん。それでいいんですにゃ。ご主人様は思いっきり私に甘えて、私がやりすぎたらちゃんと怒る。それだけでいいんです」

「あ……うん。ありがと……」


 やだもう、完全にネルに主導権握られっぱなしだよ。

 ネルを作ったのは私なのに。

 はっ、もしかして私ってMっ気でもあるのかな。

 だからこういう風にいじられたいなんていう願望が……。


「もしもーし、ご主人様変なこと考えてないかにゃ?」

「そそそ、そんなことないし。私はノーマルです」

「んんんー?じゃあ、こういう事も嫌?」


 唇に、生暖かい感触。

 一瞬何をされたかわからなかったけど、ほんのり湿った唇の感触に、ネルに舐められたのだと悟る。


「~~~~~~!!!」


 ばしばしとネルを叩くことしかできなくなる。

 だから!そういう恥ずかしい事は宿屋でだけにしてよ!

 ネルの意地悪!

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