今日も繫盛嬉しいな
あの後はぽつぽつと冷たいお茶を求めたお客さんが現れてそれなりに忙しい事になった。
さらにお昼頃にもなると冷茶に合わせて小龍包を買うお客さんも増えてきてありがたい限り。
どうもほくほくの小龍包を冷え冷えのお茶を合間合間に飲むというのが流行、というか。
寒い日に炬燵の中でアイスを食べるみたいな楽しみ方として見出されている様子があった。
小龍包以外に何か出せないの?と言われることがあったが、それは他の屋台さんにお願いしますと言っておいた。
一つの店舗ではなんでもはできないのが屋台のクオリティ。
そうなると冷たいお茶だけを買って好みの食事を求めて移動するお客さんも現れる。
そういう時はちょっと料金を上乗せして茶器ごとお買い上げしてもらう。
仕入れ値ゼロなのでずるいかなーと思うけれど、生成される茶器の出来は中々なのでタンブラーを売っているような物だと思って。
次回以降も茶器を持ってきてくれればお茶の販売分のお値段で売りますよーとか、持って来る器は自前でも構いませーんとアピールして売る。
なんていう私なりの行き当たりばったり販売戦略を繰り広げている間ネルも小龍包を渡したり、ネコのような手で器用にお茶を渡したりして手伝ってくれた。
こうした人の波が落ち着いたのはお昼もだいぶ過ぎたころで、人の波の合間に小龍包を自分たちで食べたりしてお腹をみたしていたのだけど。
それがネルにはいたくご満悦になった要因なようで。
「うーん、明日からもこの位忙しいといいですにゃ」
「もーそんなこと言って。小龍包ばっかりだと飽きない?」
「飽きないです。だってご主人様の小龍包だから!」
私の飽きに対する危惧もネルには無関係らしくごろごろと喉を鳴らしている。
正直他の屋台の食べ物も食べてみたいので、明日からちょっとネルに買い物にでてもらおうかなーと思っていたりする。
その事を伝えると。
「承りました。ご主人様は飽きるんですね」
「食べ物はね。人は大体いつも同じ感じの人が良いけど食生活はレパートリー豊かにしたい」
「じゃあ私に飽きることは……」
「無い無い。いつも私を包み込むようなネルで居てね。っていうかネルは結構気まぐれなところがあるから飽きないよ」
「にゃー……」
身をかがめて私の頬に頬ずりするネル。
サラサラの髪が頬に触れてくすぐったい。
つるつるのお肌も触れていて心地よい。
思わず私からも頬ずりするその時間はとても幸せで。
「ねえネル」
「ふぁい?」
「ずっと一緒に居てね」
「勿論ですご主人様」
屈んだネルの身体をぎゅっと抱き締める。
ネル、私のネル。
屋台の中に椅子を作らなかったのは失敗だったなぁ……。
椅子があれば暇な時間ずっともたれあっていられたのに。
私って迂闊ばっかり。
本当にこんなので愛想をつかされないかと不安になる。
だからぎゅっと、強く抱き締める。
ネル、ネル、ずっとそばに居てね。