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冷たいお茶

 お風呂でも存分にネルに甘えてからあがって、よーく身体を乾かしてから着替えて、お風呂屋さんを出る。

 そして宿に戻って屋台を引いて街の適当な通りで店を出す。

 だいぶずるしてるけどこういうのがスローライフというのだろうか。

 今日はお客さんもまばらで、ネルは隙を見ては小龍包を出すボタンを狙っている。


「食べ過ぎると太るよネル」

「大丈夫にゃ。食べたら動く、単純にして真理を衝いた行動を実践に移せば……」

「屋台の周りで埃っぽくしたらダメだよ?」

「に゛ゃ」

「埃っぽくなることするつもりだったんだ……」

「いや、それは、あの、ちょっと演武を……」

「駄目ですー。なので今押そうとしてる小龍包のボタンは押させません」

「そ、そんにゃー」


 ぽちりと行きそうな猫の手を抑えて言い聞かせる。

 そんな泣きそうな顔してもダメだよ。

 お茶で我慢しなさい。


「ほら、ウーロン茶冷たいの出したげるから我慢なさい」

「はーい……」


 そんな話をしていたら、道行くおじさんに声をかけられた。


「お嬢ちゃん。今冷たいお茶が出せるって言ったかい?」

「え、はい。お出しできますよ」

「本当か!じゃあ一杯頼むわ」

「あ、はい。承りました。お好みの香りなどはありますか」

「以前西洋で飲んだ焙煎茶がいいなぁ。西洋の茶の類なんだがあるかい?」

「麦茶ですね……でるかな?えい」


 ぽちっとキンキンに冷えた麦茶を思い浮かべながらお茶を出すボタンを押したら、水滴も瑞々しい冷え冷えのウーロン茶の入った器が現れた。


「はい、こちらでいかがでしょうか」

「お、いいねぇ。見て分かるくらいに冷えてる……はい、お代だ。うん、美味い」


 ウーロン茶を飲んだおじさんは満足したように頷くと一息に冷えたウーロン茶を飲み干し、こんなことを言い出した。


「こんな冷たいお茶が飲める店があるとはね。ちょっと他の奴にも教えてくるよ」

「あ、ありがとうございます」

「いいっていいって、こんな美味いのを独り占めしたと思われたら俺が怖い想いをすることになる」

「はぁ」


 じゃあな、と手を上げて立ち去るおじさんの背中を見つめながらネルに聞く。


「冷えたお茶を出せるってそんなすごいかな?」

「高山の近くの氷室を供えてる喫茶店でもなければ今の時代オーバーテクノロジーってやつじゃないですか?」

「……私の何気ない発想がチートだ……いつでも好きなお茶が飲めるように設定しただけなのに」

「ご主人様の居た世界とはまだまだ技術に格差があるから仕方ないですよ。ふにゃー、もう一杯」


 ちょっと呆然としちゃった私に素知らぬ顔でネルが二杯目の冷たいウーロン茶を強請る。

 もう、私の気もしらないで!


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