お小遣い制
「そういえばさ、昨日結構稼げたと思うんだよね」
「元手がただですからにぇ」
「じゃあ毎日お風呂って実は余裕だったりしない?」
「毎日お昼が小龍包でいいなら結構余裕あるんじゃにゃいですか」
「だよねー。安心したよー」
「まぁ、それも毎日昨日くらい売れるなら、ですけどね」
「へ」
「昨日の収入の半分くらいが茶葉の大人買いじゃないですか」
「あ」
「だから毎日昨日みたいな収入があるかっていうとどうでしょう」
「ううー、現実は厳しい」
「まあまあ、それでもご主人様なら毎日お風呂には入れると思いますよ」
「そうなの?」
「服は汚れないですし、下着も……それにいざとなればご飯抜いても大丈夫な身体ですからね」
「……はっ、そうだった。私世界の核だからご飯要らない!」
「そういう所で節約して行けば借家を借りるお金を貯めつつ、毎日お風呂というお大尽もできると思いますにゃ」
「なるほどなー。服は……なんとなく洗いたいから洗うけど、基本的に摩耗しないから買い替えの必要もあんまりないからね」
「そうにゃんです。ご主人様は恵まれてますね」
朝食を終えて、着替えを用意してお風呂屋さんへの道すがら、そんな会話をしていても周囲におかしな目で見られることはない。
もしかしてこれも「世界がなんとなくいい感じにしてくれる」効果のうちなのかな。
我ながら割と不用心だけどなんとかなってる。
もしかしてネルに面倒見てもらってる私は今世界で一番気楽な人間なんじゃないだろうか。
「さ、それよりお風呂お風呂。急いで焦らずゆっくりつかるぞー」
「ふふ、ご主人様急ぐんですか、ゆっくりするんですか」
「ネタだよー、ネルとゆっくり入りたいな」
「ふにゃー。じゃあゆっくりしていきましょうか。あ、大人二人……はい、代金です」
「はっ、お財布をいつのまにか握られている」
「あとでちゃんとお小遣い上げますからね」
「まさかのお小遣い制!?」
「財務管理はお任せを、にゃんていってみたり」
「んー。まあいっかー、ネルに甘えちゃう……うりうり」
ネルと腕を組んでごろごろとすり寄ってみると、ネルは嬉しそうに笑顔になって腕にしがみつく私の頭をなでる。
ん、ネルの香りがする……落ち着くなぁ。
こんな風に人と何も考えずに触れ合うのなんてそうそうない事だ。
年を取るたびにそういうの、難しくなるんだよねぇ。
「さ、お風呂入りましょうご主人様」
「うん。さて、さっぱりするぞー」
さあ、お風呂だ!
ぱっと脱いで裸になる。
ネルからの視線を感じるけど今はそんなの関係ない、新鮮なお風呂!
……新鮮なお風呂はまだ沸き切ってなくてぬるま湯でした。