元気出していこう!
ウトウトとした眠りから覚めると目の前には暗闇が広がっていた。
頬にはちくちくとした毛並みの感触もあって、ああネルに抱っこされて寝ちゃったんだという事を思い出す。
それにしても今何時なんだろう。
密着しているネルの肌も見えないのは時間のせいなのか、密着具合のせいなのか……。
「ネル、ネル今何時?」
私が問いかけるとすぐにネルに動きがあった。
もぞもぞと私の背中に廻した腕を外すと私を胸元から解放してくれた。
するとうっすらと外の明かりが視界に入ってきて、目の前に褐色の肌が見えてくる。
「しばらく前に六つの鐘がなったから朝六時くらいですね。大丈夫ですかにゃ?ご飯食べずに寝てしまったですが」
「ん……今はご飯よりお風呂入りたい……」
そういえば今の季節は晩春で、そろそろ暑くなり始める季節。
ネルに抱っこされて寝ると、その寝汗が気になるというか……。
「お風呂なら共同浴場が開くまで間がありますから朝ごはん食べてしまいましょう」
「あ、そういえばこの宿って食事つきだったっけ?全部ネルにやってもらっちゃったから覚えてない……」
「朝夕は出るみたいですから食堂にいきましょうか」
「え、お風呂無いの」
「何言ってるんですかご主人様。公衆浴場があるだけましな部類ですよ。この大陸で水は貴重なんです」
「もしかして……そのあたりも考えてこの街に出してくれた?」
「それは偶然ですけど。その様子だとご主人様ってお風呂大好きですかにゃ?」
「この位汗かくなら毎日入らないと気になる程度には……」
「ふにゃ、それは頑張って稼がないとですね。この国、今後の時代は解りませんけど今の時代はお風呂なんて三日に一回入れればいい方ですよ」
「そ、そんなぁ……」
思わずへたりとネルの胸元に寄りかかってしまう。
するとこう言っては何だけど結構な獣臭さが……。
「ねぇネル。これ言ったら貴女は傷つくかもしれないけど」
「なんですかご主人様」
「貴女獣!って匂いがするから頑張って毎日お風呂に入れるように……」
「獣、がどうしましたかにゃ?」
「ほぷっ」
思いっきり頭を抱え込まれてネルの胸元に顔を押し付けられる。
けものくさっ……けも……けも……うん……そんなに悪い匂いじゃないかも……。
「なんですかご主人様」
解放された私はぼうっとしてしまって、なんでもない……と返すのが精いっぱいだったり。
うん、ネルの香りって感じで悪くないかも。
でも自分の臭いは気になるからお風呂には入れるように頑張らないとね。
「とりあえず、朝ごはん行こうか」
「そうですねご主人様。朝ごはん食べて、体のエンジン廻して今日も元気にいきましょう!」
私を放してえいえいおーという具合に腕を振り上げるネルを見てると、本当に頑張らなきゃって気持ちになってくる。
よーし、朝ごはん、食べるぞー!