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蒸気世界の夢追い人  作者: 氷純
第一章 逃避行
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第六話  サーカス市場

 町から町へ、ときには村に立ち寄って、サーカス団はテントを設営して芸を披露し、金を稼ぐ。

 しかし、彼らのほとんどが出自の曖昧なともすれば犯罪組織から足抜けした者達であったりもする。

 そんな構成員の背景の問題もあり、首都のような防壁に囲まれた街の中に入る機会を与えられることは稀だ。

 しかし、サーカス団としても首都のような人口密集地は稼ぎ場として非常に魅力的であり、彼らが防壁の外、それも砂漠のど真ん中にテントを構え、広告を通して観客を集める興行形式を編み出すのは当然の流れだった。

 観客を呼び込める距離であると同時に、首都の上層部に睨まれる事のない距離に構えられたそのサーカス団のテントは、観客を目当てに土産物や食べ物を売る行商人をも呼び込み、興行期間中のテント一帯は簡易的ながら村としての機能さえ有する大規模な寄り合い所帯となる。

 カミュはラグーンのシートに跨り、サイドカーに乗っているリネアを見る。


「話に聞いていたよりも大規模なんだね」

「ボクも驚いてるとこだよ」


 リネアは好奇心に瞳を輝かせて、周囲の屋台や露店を見つめている。

 サーカス団のテントはもちろん、期間中に行商人たちが寝泊まりする小規模なテントも無秩序に張られている。

 サーカス団や行商人たちが雇ったらしい武装した傭兵が周辺の魔物や盗賊に対する警戒網を敷いており、内部の治安はかなり良い。

 カミュはラグーンを徐行させながら人混みを抜け、誘導に従って駐車場に乗り入れる。


「スリとかが横行してそうなのに、なんか拍子抜け。防犯チェーンは掛けさせてもらうけど」

「貴重品は持った方がいいと思うよ」


 ボクは持った、とリネアがポーチを指差す。袈裟掛けポーチはギアファッションと呼ばれる流行の歯車が取り付けられたデザインだ。


「蒸気機甲とか身に付けてないと、そのポーチは浮くと思うなぁ」


 カミュは防犯チェーンをラグーンに掛けつつ、リネアのファッションにダメ出しする。

 ギアファッションは元々傭兵が身に付けていた物で、金属製の動作補助器である蒸気機甲の光沢や重々しさを軽減する目的で発達、洗練されたデザインだ。無意味な歯車を配する事で遊びの要素を付けたし、武骨さや粗暴さを軽減して雇い主に威圧感を与えないように考えられている。

 成り立ちが成り立ちだけに、普段着に加える要素としてギアファッションはミスマッチで、歯車にばかり目が行ってしまう。


「いいの、お気に入りなんだから」


 むっとして顔を背けるリネアに肩をすくめて、カミュは自分の荷物の中から軍用のトレンチコートを取り出した。


「これを羽織っておけば似合うと思うよ」


 オスタム王国の軍用トレンチコートはやや荒々しいと評価されており、あまり女性用には好まれない代物だ。しかし、機能性は高くギアファッションと組み合わせる物としては適している。

 リネアはカミュから渡されたトレンチコートをむっとした顔のまま受け取り、袖を通す。


「あまり背丈も変わらないから着られることは着られるけど、カミュの方が服飾に詳しいのは何か納得いかない。というか、このトレンチコートはどこで買ったの?」

「ラリスデン新市街にある専門店で買ったんだよ。丈夫だから、旧市街の連中に転売できるんだ」


 服を買いに行く服がない。それどころか垢まみれで新市街を歩けないという住人までいる旧市街において、多少雑に扱っても問題の無い軍用品は好まれやすい。カミュはそこに目を付けて小遣い稼ぎに転売をしていた。むろん、買い手がさほど多いわけでもないので、在庫を抱えないように小規模な物でしかなかったが。


「カミュ君はたくましいね」


 横合いから声を掛けられて、カミュは顔を向ける。グランズが愛車のヤハルギに防犯チェーンを掛けていた。右手の袖をまくって、歯車が二つ組み合わさったギアファッションのブレスレットを得意げに見せてくる。


「おじさん、見ての通りに凄腕の傭兵だから、ギアファッションには一家言あるんだよ」

「そのグランズから見て、ボクはどう?」


 トレンチコートを着込み、上からギアファッションのポーチを提げたリネアがくるりと一回転する。琥珀色の髪がふわりと舞い上がり、ポーチに取り付けられた真鍮の歯車が陽光を反射してきらりと光る。


「可愛いよ。娘に欲しいくらいだね」

「そっかそっか。カミュ、どう?」


 グランズの評価に満足げな顔で頷いてから、リネアはカミュに話を振る。

 左手を腰に当て、右手を横に伸ばしてポーズを決めるリネアを見て、カミュは一つ頷いた。


「素材がいいだけある。さっきよりもちぐはぐ感がなくなったから、歯車よりもリネアの可愛い顔に目が行くね」

「……調子いいんだからもう」


 文句を言いながらも、リネアは嬉しそうにもじもじして、片手をカミュに差し出した。


「ナンパされないように手を繋ごうよ」

「オレがナンパ男避けになると思う?」


 少女にしか見えない自分の容姿に自覚のあるカミュが肩を竦めると、リネアは困ったような顔をする。

 そこにグランズが笑顔で右手を差し出した。


「お困りですか、素敵なお嬢さん」

「ほらカミュ、さっそく現れたよ」

「よし、こうしよう。オレとリネアは良い所のお嬢様二人組、グランズは後ろからついてくる護衛役」

「ようやく、おじさんを雇うつもりになってくれたか」

「グランズさんってどんな配役でも面倒くさい人だよね」


 リネアがため息を吐きながら呟くが、グランズはどこ吹く風だ。

 しかし、グランズは不意に駐車場の端に目を留めると、カミュたちを見た。


「ところでお二人さん、煙草は嫌いかな?」

「ボクは咽るから嫌だ」

「オレも臭いがつくから近くで吸われたくない」

「あっそうか。おじさん、煙草吸ってくるから、先に行っててくれる?」


 ポケットの中から白と赤のパッケージの煙草を取り出したグランズは、カミュたちに断りを入れつつ駐車場の端にある喫煙所を指差す。


「健康がどうとかで最近は煙草呑みへの風当たりが強くてね。煙草会社も大変そうだよ。おじさんは自分に厳しく他人に優しい人だから、売り上げに貢献しないといけないんだ」

「なんか違う気がする」


 グランズの言い回しに、リネアが眉を寄せる。

 これが男の優しさって奴だよ、とグランズが適当な言葉を重ねる。


「本音を言えば、こういう人が集まるところだと迂闊に吸えないから今の内に欲求を満たしておこうと思ってね。あ、待っててくれるとおじさんの好感度上がっちゃう」

「煙草臭くなるからボク達は先に行ってるよ」

「やっぱりそうなりますよねー」


 リネアの返答は予想していたらしく、グランズは大げさに肩を落として落ち込む演技をした。

 やり取りに加わらずに喫煙所の周辺に立つ人々を眺めていたカミュはグランズに視線を向ける。


「中で合流って事で」

「はいよ。迷子にならないようにするんだよ。知らない人について行っちゃだめだかんね。もしも不審者に声を掛けられたら大声で人を呼ぶんだよ。おじさん、駆け付けるかんね」

「グランズに声を掛けられたら助けを呼べって事だね。発声練習をしておくよ」

「違うよ!?」


 リネアと手を繋いで歩き出したカミュは数歩進んだところで肩越しにグランズを振り返る。


「グランズ、一つ雑学を教えておく」

「ん、なんだい?」

「旧市街の喫煙所には暴力組織の下っ端が必ず見張りについてるんだ。たばこを吸うと言って出掛けた奴が本当に吸っているかどうかを確認するために、ね」

「ありゃりゃ、おじさんったらそんなに信用されてないのかい?」

「そんな事ないよ。オレはただ雑学を教えたくなっただけ。敵には情報を渡さない主義だけど、第三者ならその限りじゃないからね」


 敵として認定していたのなら、カミュはグランズに何も声を掛けずに泳がせていた。

 グランズもカミュの言わんとするところが分かったのだろう。肩を竦めて返す。


「カミュ君だけは敵に回したくないね。今後も仲良くしようぜ」

「金の切れ目までならね」

「同感だね。おじさんは傭兵だから」


 手をひらひらと振って喫煙所に向かうグランズに近付く人影がないのを横目で確認して、カミュはリネアと一緒に駐車場を後にする。

 組み立て式の造花アーチをくぐってみれば、多くの人が行きかっていた。


「やっぱり、人が多いね」

「お祭りみたいなものだもん。カミュにはあまり縁がないだろうから、ここはボクに任せなさい」


 リネアは繋いだカミュの手を引き、張り切って歩き出す。

 買い物をするのも目的ではあるが、せっかくだからと露店を冷やかしながら歩く。

 サーカス団の名前が入った小物の類はセンスが悪いものの思い出の品としては売れているらしく、店員の声掛けも盛んだった。

 はしゃぐリネアとは対照的にカミュは周辺の人の動きに気を配っていたが、視界に入った露天商の売っている物を見て足を止める。


「おっとっと」


 リネアは手を引っ張っていたカミュが唐突に足を止めたためバランスを崩した。

 転ばずに体勢を立て直したリネアがカミュを振り返った。


「どうしたの?」

「いや、手持ちが少なくなってきたのは蒸幕手榴弾も同じだなと思って」


 カミュが相手の視界を奪ったり怯ませたりする目的でよく使用する蒸幕手榴弾は先日の宿前での攻防でいくつか使用している。

 あまり腕力がないカミュは鍔迫り合いを避ける戦いをするため、どうしても使用頻度が高くなる品だ。逃走を選ぶ際にも使用できるため、手持ちが少ないのは落ち着かない。


「あんなものがそこらに売ってるわけがないと思うんだけど」


 リネアがカミュの視線を辿って露店に並ぶ品を見て、目を疑うように数度瞬きする。


「売ってるんだね……」

「出力を弄らなければただの防犯グッズだからね」


 リネアに言葉を返して、カミュは露天商に近付く。


「すみません。その蒸幕手榴弾を買いたいんですけど」


 カミュが軽い笑顔で声を掛けると、売れ行きの芳しくない商品を見つめて俯いていた露天商は営業用の笑みを浮かべて顔を上げた。


「……はい、いらっしゃいませ」


 カミュの顔を見て一瞬硬直した中年男性の露天商だったが、すぐに定型句に繋げる。

 上々の反応をみて、カミュに悪戯心が芽生えた。


「人が多いから大丈夫だと思って友達と二人で来たんですけど、さっきしつこい男の人に声を掛けられてしまって」


 カミュは購入理由をでっち上げながら、露天商の店先でしゃがむ。少し困ったような、不安そうな顔をのぞかせながら蒸幕手榴弾を指差した。


「帰り道も心配だから、買っておこうと思うんです。これって、どれくらい効果がありますか?」

「それはそれは、大変でしたね。お二人とも可愛らしいから、用心のためにも持っておいた方がいいですよ。うん、それがいい。とりあえず、相手の足元に転がすだけでも熱い蒸気で足止めする事が出来ますから、三つもあれば大丈夫ですよ」

「そうなんですか。では、友達の分と合わせて六個、お願いできませんか?」


 カミュは後ろのリネアを振り返る。顔が横を向いた事で、やや無防備に首筋や鎖骨が露出され、礫砂漠の陽光の強さも相まって肌の白さを強調した。自然と、露天商の視線がカミュの首筋に向かう。


「え、えぇ、六個。まとめ買いですね。でも、お二人とも可愛らしいから、私としては何か心配だなぁ。そうだ、この特殊警棒を一つ付けておきますよ。おまけですから、御代はいりません」

「え! 本当にいいんですか?」

「えぇ、もちろん。男に二言はございません。使い方は分かりますか?」

「いえ、初めて見たので」

「では、まずは持ってみてください」


 そう言って露天商が差し出してくる特殊警棒をカミュは受け取る。受け取る際にさりげなく露天商の手に触れておいた。


「あ、ごめんなさい」

「い、いえいえ、お気になさらず」


 動揺を隠せていない赤い顔の露天商は一つ咳払いしてやや早口で商品説明に移る。


「それで、使い方ですが内部に蒸気機関が仕込まれてまして、柄にあるスイッチを押すと警棒が三倍の長さに延長されます」


 露天商に教わるままスイッチを押すと特殊警棒の先端が蒸気圧で押し出されて伸びる。全長としてはカミュの身長の半分くらいだろうか。暴漢を相手に牽制するのであれば妥当な長さである。


「それで、先端を相手に突きつけて柄の下にあるスイッチを押してみてください」

「これですね」


 カミュが柄の下のスイッチを押すと先端から蒸気が一気に噴き出した。こんなものを真っ向から受けたなら、暴漢は火傷するだろう。なかなか使いやすい防犯グッズだ。少々過激なきらいはあるが。

 蒸気を吹きだしたことで圧力が下がったのか、特殊警棒が元の長さに縮んでいく。


「実演は以上です。気を付けて帰ってくださいね」

「ありがとうございます」


 カミュは笑顔で礼を言って、蒸幕手榴弾六個分の代金を払って露店を後にする。少し離れたところで待っていたリネアに白い目を向けられた。


「容姿を悪用しすぎだとボクは思うな」

「向こうが勝手に勘違いしたんじゃないか。商売人として客を見る目を養う経験を積めたんだから、特殊警棒の一本くらい安い授業料だよ」

「ああいえばこういう」


 カミュは購入した蒸幕手榴弾六個と警棒を鞄に入れる。金属製のため少々重いが、サーカス団が雇った傭兵に警備されているこの場所でむやみに襲ってくる者がいるとは考えにくく、機動力が落ちたことに不安はなかった。


「それより、食べ物を買っておかないと」


 カミュの言葉で本来の目的を思い出したのか、リネアも市場の端の方にある露店を見る。

 魚の干物やピクルスの瓶詰が置かれている。価格もかなり良心的だ。


「お酒もあるね。グランズさんに買っておく?」

「あのおっさんは必要になったら自分で買うでしょ。オレたちのお金を使う意味がない」

「カミュって財布のひもが固いよね」


 浪費癖があったら旧市街で生活などできない、と言いかけたカミュだったが、近付いてくる足音を聞きつけて後ろを見る。

 グランズがへらへら笑いながら歩いてくるところだった。


「やっと見つけたよ。カミュ君、荷物が重そうだけど、おじさんが持ってあげよっか?」

「自分で持てるよ、これくらい。それよりグランズは自分の食品を買っておかなくていいの?」

「おじさん、お酒を切らしてるんだよね」


 露店を覗いたグランズは木箱に入っている瓶をざっと眺めて、肩をすくめた。

 目当てのものが見つからないと端的に示す態度に眉を顰めた店主をみて、グランズは気安い笑みを浮かべた。


「白ワインのさ、フェアレディってない?」

「あぁ? フェアレディか。ちょっと待ってな」


 店主が拍子抜けしたような顔をして、露店の裏に張っている大型のテントに入っていく。店番がいないのは不用心ではないのかと思うカミュの袖をリネアが引っ張った。


「フェアレディって美味しいお酒なの?」

「大概の飲み屋に置いてる甘口の白ワインだよ。そろそろ帰りそうな女性客に奢って話を続けるのに使う定番のお酒。甘くて香りもいいから飲みやすくて、女性を酔わせるのに使う奴が多い。リネアもラベルくらいは覚えておいた方がいいよ」

「グランズさん……」

「おじさんの事をそんな女の敵を見るような目で見ないでくれないかな! カミュ君の説明も間違いじゃないけど偏見だかんね?」


 咄嗟に名誉回復を図ろうとしたグランズだったが、すぐに何かに気付いたようにカミュを見る。


「むしろカミュ君、なんでそんな知識があるんだい?」


 グランズの指摘を受け、カミュは咄嗟に顔をそむけて知らんふりを決め込もうとする。


「かーみゅー?」


 逃がさないとばかりにつないだ手に力を入れてくるリネア。

 カミュは諦めのため息を吐いて白状した。


「お金がない時に飲み屋にいる余所者のおっさんを騙くらかして奢らせて、フェアレディが出てきた頃合で引き揚げてた」

「カミュ君、なんて生活してんの!?」


 グランズがツッコミを入れ、リネアが頭痛を堪えるように頭を抱える。

 混沌とし始めた露店の前の光景を見て、テントからフェアレディのラベルが貼られた白ワインの瓶を持ってきた露天商が首を傾げた。


「お客さん方、何かあったかい?」


 露天商に問われて、グランズが苦笑気味に答える。


「人を見かけで判断すると痛い目を見るって話をちょっとね」

「上手く落としたね。これが年の功か」

「ボクは歳とりたくないなぁ」

「おじさんそこまでいわれるような歳じゃないよ!?」

「お客さん方、漫才師か何かかい?」


 誤解を招く掛け合いをしながらも代金だけはきっちりと払い、三人は露店の前を離れた。

 必要な物を買いこみ終わったものの、三人分の食料品にグランズの酒まであるとなかなかの大荷物だ。

 元々サーカス見物に来る観光客が中心であるため、荷物を抱え込んでいる三人は少々奇異に映る。

 たまに向けられる好奇とまれに向けられる好色そうな視線を無視しながらカミュはリネアの手を引いて駐車場へ歩く。


「おや、何かあったかな?」


 カミュやリネアより背の高いグランズが駐車場の端に人だかりを見つけて首をかしげる。

 カミュも遠めに人だかりを見てみるが、中心で何かビラを配っていたらしく、警備に当たっていた傭兵がそのビラ配りを止めさせようとしている。

 風に運ばれてきたビラを革のブーツをはいた足で踏みつけて捕まえたカミュは、ビラに書かれた文言を読む。


「国立蒸気科学研究所主催レストアレース?」


 何の事だかわからないながらも、国立の機関が絡んでいるイベントごとに重要参考人として追いかけられているリネアを連れて参加できるはずもない。

 カミュは足をどけてビラが風に飛ばされるのに任せる。

 すると、グランズがカミュの顔を覗き込んできた。


「いいのかい? このご時世にラグーンを乗り回しているカミュ君なら興味がありそうだけど?」

「状況が許さない限り参加できないし。やりたいことができる身分でもないからね」


 カミュが言い返すと、グランズは人の良い笑みを浮かべて見せる。


「やりたいことがあるんならやれるように外堀を埋めるのも努力の内だぜ、カミュ君。まだ若いんだから、やりたいことやっときなよ」

「自分もやれてない事をさも努力すればやれるみたいに言ってんなよ、かっこ悪いおっさんだな」


 吐き捨てるように言って、以前宿で演技を見抜いた時と同じ鋭い視線を向けたカミュは、鼻白むグランズを置いてラグーンに向かう。

 カミュの後を追いかけるリネアがグランズとすれ違いざまに口を開く。


「やりたくもない事してるくせに」


 冷たい言葉の刃物を突きつけられて硬直したグランズを置いて、カミュとリネアは出発の準備を整え始めた。

 グランズは頭を掻いて空に向かってため息を吐く。


「……なんで見抜かれたんだかな」



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