第30話 冬紗のやりたい事と真意
「お、おいこいつ...なんで立ってるんだ!」
「ソメリヤ...本気で行くぞ」
エビヤがそう言い、2人が本気になったのを凛は悟った。
この2人...まだ本気を出していなかったのね。
でも、冬紗のあの力...能力を調べたときあんなのなかった!
「気になる...」
凛はそう呟いた
「‘力の解放’!」
冬紗がそう叫んでいた
あの能力...なんてまがまがしいのよ。
冬紗の能力を調べてみると、能力によって抑えられていた力が何かのきっかけによって解放される感じか
「あれは...冬紗なの?」
「......」
冬紗はものすごい力を解放したのにただ単に敵を殴っているだけだった
「あれは、手を抜いているの?でも...」
「ソメリヤ、こいつどんなすごい能力を使ってくるかと思ったけど弱いぞ」
「そうだな!全然痛くねえ」
2人は冬紗の攻撃を痛みを感じる様子もなくただ食らっていた
冬紗の方はそろそろ疲れ始め、体力の限界にきている感じだ
「さすがソレッドベリアの人間。やっぱり簡単には倒せないか」
凛はどうしようか考えていた
冬紗が倒されると次は私が殺られる番だ
だとしても、今逃げてもすぐに捕まってしまう
それに、逃げる場所なんて...私を助けてくれたひよりを巻き込みたくはない
「力...使いたくなかったんだけど」
凛はポケットに入れていた黒いビー玉サイズの玉を取り出した。
これを使うのは正直嫌だ。
今使えば...私の正体はバレるかもしれない。
でも、死ぬわけにはいかないし
冬紗の方を見てみると、ふさっきの威勢はなくなり、倒れていてソメリヤとエビヤは最上級魔法を唱える準備をしていた
「‘!暗黒竜覇神剣’...これくらいの力なら楽勝に倒せるわね」
凛はさっきポケットから出した黒い玉を右手に持って‘暗黒竜覇神剣と唱えると、黒い玉が剣に変わった。
その剣は黒く、ただ黒く人の内臓を綺麗に切りとれる凶々しい形をしている。
「さあ...いきますか」
凛は2人の前に出て、一瞬で斬った
「...え、ここは!」
冬紗は眼が覚めると見られない天井が見えた。
周りを見渡すと、地上に立っている家の部屋らしかった
まだ崩れていない家があるのか...そう思い部屋を見渡すとボロボロだったが、机が自分の寝ているベッドの隣にあったのを見つけた
「写真...」
その写真は家族写真だった
左に父親、右に母親、そして真ん中に凛...らしき少女が笑顔で写っていた
「ということは...凛の部屋か」
「起きたのね...あと、年上を呼び捨てで呼ぶってどうかと思うけど?」
そう言って、俺に近づいてきた
あ...そういえば無意識に呼び捨てにしてたな
「ご、ごめんなさい...凛さん」
あれ...なんで俺はここにいるんだっけ?
たしか...ソメリヤとエビヤと戦っていたはず...!
「え、あの2人は?」
「あの2人は私が倒したわ」
「え、凛さんが!もしかして...最初から1人で倒せる力を持ってるんですか?」
この人...少し怖いけど、すごい力を持っているんだなぁと感心した
「私は...好きで戦っているわけじゃない。こんな力...前まではいらないと思ってた。でも、もうそんなこと言っている場合じゃない」
みんなの前では無口な凛さんが、こんなにも多く話すなんて...何かあったのかな?
「俺...あいつらに負けたのか」
体を斬られた時からの記憶がなかった。
傷は凛さんが回復魔法を使って直してくれたのだろう
「そろそろ...ひよりのところに戻るわよ?」
凛さんはあまりここにいたくはないって顔をしている。
何か...あったんだ。絶対に
「あの、俺...凛さんの力になりたいです」
「え...?」
「俺は弱いけど...人を守りたくなったんです」
ひよりに会って気づいた。
守りたい人がいると...俺を救ってくれたひより。
そして...シュリの家族に会うために必死に戦っていた姿。
人は人無しじゃ生きられない。
俺は家族は生まれた時からいなかった。
ひよりやひよりの親に引き取られ一緒に暮らした。
ユイナだって、許嫁から逃れるために助けを求めていた。
カスミとサヤカだってもしどっちか片方失っていたら大変なことになっていた。
人は人無しじゃ生きられない...だから俺はそんな人に寄り添う人間になりたい。
悲しんでいる人を助けてあげる。俺はスミレを助けた時もそうだった。
彼女が文化祭の劇で失敗して、クラスメイトの連中から責められていたのを助けた。
だけど、それは皆の作戦で俺と彼女を引っ付けるためにわざと失敗して、みんなから責められていた。
俺に助けてもらうために...俺を利用して
騙されたってもういい...俺はもう1人にはなりたくない...
スミレを振った時から、毎日のようにいじめられた。
教科書を捨てられたり、靴を隠されたり、俺の写真がネットに出回ったり...充分辛いことは経験した。
もうそんな...辛い経験をする人間が出てきて欲しくない。
「こう考えるだけは...簡単なんだけどなぁ...」
「何言ってんのよ」
この俺の考えていたことがいつの間にか口に出ていたらしく、変な目で凛さんに見られた。
こんなことを考える俺は変なんだろうか...
俺は...演じるんだ。
ちゃんと...良い人になって1人になるために
「冬紗...あなたは」
凛は見抜いていた。
冬紗がつぶやいていた、誰かのために何かをしたいってことの...冬紗の心を。
「なんだ?凛さん」
「いや、なんでもないわ...」
本人が気付いていないなら、それで良いけど。
もし気付いているのなら...たいした演技ね。
冬紗...あなたは気付いていなと思うけど、それはただのあなたの願望よ。
さすがに強欲すぎるわ
凛は心の中でその考えに至った
冬紗はどうしてこんな事を考えていたのか...凛はそれを見抜いていて
2人の出会いが...さらに冬紗を悩ませる事になる




