1-6
「よし、魁人」
父さんの声に顔を上げる。
見上げた父は竹刀を持っていた。
「……何?」
嫌な予感がしつつも何とかそう返す。
「とりあえずグローブをつけて庭に出ろ」
竹刀の先を向けたテーブルの上には、確かにボクシングのグローブが置いてある。
「なんで?」
「いいから。それをつけたら庭に来い!」
(何がいいんだ?)
疑問に思いつつもグローブをはめて庭に出る。
「いいか。これから竹刀でお前を殴るから、その竹刀を拳で殴り返せ」
「はい?」
「行くぞ!」
父さんは竹刀を振り上げる。
「いや、待って。ぜんぜん、意味が分からない」
新手の虐待か。
「大丈夫だ。初めは軽くやる」
「大丈夫じゃねえ!」
少なくとも小学生にやらせることじゃない!
*
夢に追い立てられるように目を覚ます。
見覚えのない部屋に疑問を持ちながら上体を起こし、辺りを見回して確認する。
微かな朝日の差し込む部屋。ここは、どこだっけ?
寝ぼけている頭を無理やり動かして記憶をたどり、昨日のことを思い出す。
そういえば、異世界に来てたんだったな。
改めて考えると受け入れがたいな。
目が覚めたら全部夢だった。なんてことはないみたいだ。
とりあえずベッドから降りて、机の上に置いていた腕時計を見る。
午前五時半。
いつも通りの起床時間だ。こんな状況でも、体内時計は正確だな。
早起きをしたものの、何をすればいいのか分からない。
悩んだ末に出した結論は、とりあえずいつも通りにしようというものだった。
昨日心配した筋肉痛は、思ったよりも起こっていない。多少は痛いが、これくらいなら許容範囲だろう。
いつも五時半起床の後は、準備をしてランニングだ。
ちなみに、両手にはハンドグリップを握りながらである。
これは先程の夢で見たのと同じ、父さんの謎トレーニングの一つだ。
体力作りでランニングは分からなくはないが、同時に握力を鍛えるのは意味があるのか。
ないよりはあるほうがいいのかもしれないが、それでも使うような状況は限られるだろう。
まあ、今はどうでもいいか。
そんなことを思いながら、カッターシャツと制服ズボンに着替える。
着替えを終えると、部屋を出て左手にある階段を下りる。
下りた先の廊下は左右に別れており、そこを右に曲がる。ちなみに、左に曲がると浴室があるらしい。
短い廊下を歩いて突き当たりのドアを開くと、泊まらせてもらった部屋よりもやや広いくらいの部屋に入る。
この家の間取りはだいたい覚えたかな。
頭で簡単な道のりを反復しながら、部屋の全体を見渡す。
部屋の反対側に見えるドアが、昨日俺が家に入ってきた扉。つまりはこの家の玄関というわけだ。普段は平和な村のようで鍵はそもそもないようだが、つっかい棒の置く場所を急造したらしい。ドア枠の左右に金属の枠が無骨に取り付けられていて、その間に木の棒が挟まれている。
ほかには四人掛けの机と椅子のほかに、現代の地球で見るような調理場があり、そこには水道やガスコンロのようなものまである。
昨日はランプの灯りだけだったため暗くてよく分からなかったが、この部屋は台所兼居間といったような場所らしい。
水道やガスは使えるのか疑問だが、勝手に使うわけにもいかない。
調理場を横目に突っ切り、外につながるドアのつっかい棒を――まだ眠っているのであろうルウやイリナさんには許可を取っていないので悪いとは思いつつ――外そうと手をかけたその時、カチャリというノブをひねる音と共に廊下側のドアが開かれた。
俺は反射的にそちらを向くと、髪をアップに纏めたルウが部屋に入ってくるところだった。
右手には籠を持ち、左手にはこの村のことがなければなぜ持っているのかと疑問に思うような物を提げている。
ルウは俺がいるとは思わなかったのか、入ってくると同時に驚いた顔をする。
「早いですね。何かありました?」
首を傾げ、そんなことを聞いてくる。
隠すほどのことでもないので、彼女に向き直り答える。
「村の周りをランニングしようと思って」
「ランニング。どうしてまた?」
「日課なんだよ。体力作りでやってる」
ルウは何か考える素振りを見せた後、再び口を開く。
「昨夜は皆にも理解を示していただけましたが、あまり動き回るとさすがに怪しまれますよ? まだあなたが敵だと疑っている人もいるでしょうから」
「あっ、そうか!」
それは確かにあり得るな。盲点だった。
俺は悩むように腕を組み、目線を下に向ける。
「やっぱり、俺を疑ってる人はいるのか?」
「昨夜、帰ってきた祖父から聞いたのですが、疑っている人は半分ほどだそうです」
「半分か。案外多いな」
「わたしは少ないと思いますよ。もっと疑う人がいてもおかしくない状況ですから」
「それもそうか」
俺はうなずいて、顔を上げる。
「じゃあ、なんで少ないんだ? ルウを助けたからか?」
「それもあると思いますが、一番の理由はこの森に『精霊の加護』があるからだと思いますよ」
「精霊の加護?」
突如として出た熟語に首を傾げる俺を見て、ルウはクスッと微笑を浮かべる。
「歩きながら話しませんか?」
「え?」
「ランニング、するのでしょう?」
ルウは俺の後ろにある扉を指した。
*
家を出て町の中を歩く。
ランニングは取りあえず村の周りを五周ほどしようかと思っている。
いつもはコースがだいたい決まっていたので時間はよめたが、今回は初めての場所なので時間がよめない。部屋の机に置きっぱなしの腕時計を持ってくればよかったと思ったが、今更取りに戻るのも面倒だと思い、そのまま歩を進めている。
ルウはというと、昨夜と同じくフード付きケープを目深に被り、俺の左側の少し離れた位置を歩いている。
最初は隣にいたのだが、俺の服が汗臭いという理由で距離を取られた。
「ランニングが終わったら、まずは洗濯ですね。桶と洗剤をお渡しするので洗ってください」
横目で見られ、そんなことを言われた。
一応、椅子の背もたれに掛けたりして干してはいたんだけどな。あれだけ汗をかいてればしょうがないか。
臭いのことはこの際気にしても仕方ないので、先程の話の続きを聞くことにした。
「あの、質問を二つほどいいかな?」
「どうぞ」
ルウはこちらに振り向きうなずいた。
「さっき言ってた『精霊の加護』っていうのはなんなんだ?」
「そのままの意味です。この森には『精霊の加護』が掛けられているのです。具体的にどの様なものかと問われるならば、森や村に不利益を成そうとする思考を持った者が侵入した場合、その人物は目的の場所には辿り着くことができず森の中で迷ってしまいます。もっとも、数時間、あるいは数日で森の外に出られますけれどね」
「ふーん。不利益を成そうと侵入して迷わない方法はあるの?」
「村の誰かが案内をすれば一応可能です。そもそも、道を知っているのは村の方々だけなのですが、聞いた話では子供が森で迷子になってもすぐに見つかったりもするそうで、自分達は迷わないのではなく、精霊が誘ってくれているのではないかと言われる方もいます」
「森はもちろん、この村の人達も精霊の加護を受けているってことか。でも、なんでこの森には精霊が加護なんて掛けてるんだ?」
その問いに、ルウは説明を続ける。
「もともとこの森には『精霊』を祭る祭壇があるらしいのです。そして、この村に住む住人の先祖は、もともとその祭壇の管理を行っていたとされています。この村に名前がないのも当時は住んでいた人数が少なく、あくまで管理者の駐在所のような場所で、名前を付ける必要のなかった名残だとか」
「らしいとかされているって、何か曖昧だな」
「村にそのような記録は残されていませんから仕方がありません。ですが、そのような加護があるのは確かです。でなければ、森の規模を考慮しても、さすがに包囲されて二ヶ月もの間、ウェーンベル兵に見つかっていないことが説明できません」
包囲されて二ヶ月も経っているのか。思ったよりも長い。
「確かにそうかもな。でも、それなら昨日、ルウが敵に見つかったのはおかしくないか? 精霊の加護が守ってくれてるんじゃないのか?」
「それは……そういう時もあります。いかに精霊の力といえど、万能ではないということでしょう」
途中、考えるようにうつむき言いよどんだが、すぐに顔を上げるとそう答えた。
その考えが正しいとすると、百パーセント敵の侵入を防げる訳ではないということか。
だが、ルウの言うことが事実だとすれば、この村はほぼ安全と言うことでもある。
それが分かっただけでも、質問の意味はあった。
「精霊の加護についてはよくわかった。ありがとう。で、二つ目の質問なんだけど……」
俺はルウの左手を指した。
「その手に持ってる剣は何?」
「これですか?」
ルウは自分の手に持った剣を見やすくするように、軽く持ち上げて見せた。
そうすると、今までは彼女の陰に隠れて見づらかった剣の全体がよく分かるようになる。
剣の刀身は細めで、どちらかといえば細剣と言ったほうがいいだろう。
鞘は木製で、柄の部分は白い簡素な物。ただ、鍔の中央には正方形の緑色の宝石が埋め込まれていた。
何か見覚えのある形だな。
そんなことを思っていると、ルウは剣を下ろし口を開いた。
「護身用です。これから薬草を取りに行こうと思うので、用意しました」
「え! これから?」
まだ早朝だ。空も微かに明るくなり始めたくらいで、昨夜は満月だったのか、充分に周りが見える月明かりがあったが、今は月もなく、朝日は昇り始めたばかりで充分な明るさとはいえない。森を歩くのは危険なのではないだろうか。
俺のそんな心配をよそに、ルウは淡々とうなずく。
「はい。今くらいの明るさなら道が分からなければ危険なので、兵士であろうと森の探索はしないと思います。昨日取ってきたのは一人分だったので、早いうちに出来るだけ取っておかないと、また病気になる人がいたら大変ですから」
「それならもっと人を呼んだほうがいいんじゃないか?」
「駄目です。それをすれば、必ず止められてしまいますから」
自分が殺されるかもしれないという心配はないのか。
「わたしだけなら見つからなければ大丈夫です。昨日の失態は焦っていただけ。こう見えてもわたしは気配を消すのが得意です。けれど、村の皆は違います。それに、人数を増やせばそれだけ見つかりやすくもなります。昨日のことで『加護』も絶対ではないということが分かりましたから」
俺の考えていることが分かったのか、そう付け加える。
つまり、基本は隠れてやり過ごすつもりということか。そして、もしも見つかってしまった時は細剣で牽制しつつ逃げるといったところか。
確かに昨日見た動きの速さなどはすごかったが、それでもあの兵士にはやられている。油断していたのか別の理由があるのかは知らないが、もっと危機感を持つべきだ。
それを声に出そうとしたところで、それより先に一人の男が声をかけてきた。
「おはよう、ルウちゃん。相変わらず早いな」
髭を蓄えたその男は笑顔でそう挨拶する。
ルウは笑顔で対応しつつ、左手に持った剣を体の後ろへ隠す。
「おはようございます、ノーマンさん。見回りですか?」
この男はノーマンというらしい。
ノーマンはルウの質問に首を振る。
「いいや。これから交代するんだ。見回りを引き継ぎに詰め所に行くところなんだ」
「そうなのですか。頑張って下さい」
ルウはぺこりと頭を下げた。
「ありがとう。そう言って貰えると、頑張ろうって気になるよ。まあ、精霊の加護があるから大丈夫だろうけどな。実際二ヶ月ものあいだ見つかってないんだから。早く諦めて撤退すればいいものを」
ノーマンは軽く舌打ちをする。
「そうですね」
ルウは相槌を打ちながら周りに人がいないか確認しているようだった。
背中に隠した剣を見られたくないのだろう。止められると言っていたし。でも、それならなんで俺にはこれから薬草を取りに行くことを教えてくれたのだろうか。
俺なら止めないとでも思っているのか。
だが、俺だってルウに危険なことはさせたくはない。
この場には村の人もいるし、今がそれを言うチャンスだ。
そう思った俺はノーマンに、ルウがこれから森に行こうとしていることを伝えようとしたのだが、その前に彼に先を越されてしまった。
「それで、ルウちゃん。昨日はどうもありがとう。今は娘も熱が下がって、気持ちよさそうに寝ているよ」
「それはなによりです。……本当によかった」
ルウは安堵の息を吐いた。
それは本当に安心した表情で、彼女がどれほどその女の子を心配していたのかが伝わってくる。
そんなルウを見てしまうと、森に行くことをノーマンに伝えるべきかどうか迷ってしまう。
おそらくは伝えれば、ノーマンはルウを止めてくれるだろう。
だが、それをすると、今後病気にかかる人がいても助けられないということでもある。
もしここでルウを止めれば、彼女はそうなった時、きっと自分を責めるだろう。
そして、無理やりにでも森に行こうとするに違いない。
その時何の準備もしないで行くよりは、今行かせたほうがいいんじゃないか。
それとも、やはり止めるべきなのか。
俺が迷っているあいだも、ルウとノーマンの会話は続いている。
「ルウちゃんのおかげだ。ロイスさんに薬草がないって言われた時、どうなることかと思ったんだけど。本当にありがとう」
「お礼ならあの人に言ってください。彼のおかげでわたしも無事に帰ってこれたので」
俺を示すようにルウはこちらを向いた。
それを追うようにノーマンもこちらを向くと、俺の存在に気づいたようで、こちらに向かって近づいてくるとガッと俺の肩を掴んだ。
「そうか。君がルウちゃんを助けてくれた子か。話は聞いてるよ。君もありがとう」
「いえ、そんな」
「謙遜することはないぞ。君のおかげでルウちゃんも帰ってこられたし、娘の薬も作れたんだ。俺にとって君は救世主だ」
そこまで誠実に頭を下げられると、俺が昨晩決めたことがすごく後ろめたく感じる。
当然何もしないで村に置いて貰おうとは思っていない。今はいいかもしれないが、それでもずっとルウを助けたことを鼻にかけるようなことはしたくない。
どう返したらいいのか分からず固まっていると、それを見ていたルウが助け船を出してくれた。
「ノーマンさん。カイトさんが困っています。落ち着いてください」
「おお、そうか。すまないな」
ノーマンはそう言って俺から離れた。
その後、俺とルウの二人を見比べる。
「それはそうと、ルウちゃんとカイトくん? はどうしてこんな早朝から外へ?」
当然の疑問だな。
ルウのことを言うべきか言わないべきか、やっぱり迷うな。
ルウも一瞬硬直するが、すぐに笑みを浮かべ口を開いた。
「カイトさんがランニングをするというので、それを詰め所の方に言っておこうと思いまして、こうして二人で向かっていたのです」
「そうか。昨夜は彼に見張りをつけたんだったな」
見張りとかついてたの!?
全然気づかなかった。
「また見張りをつけるのかい?」
ノーマンにとっては俺も恩人の一人だからか、あまり乗り気ではないらしい。
「それは今朝の会議で決めるかと思いますが、今はいいですよ。走るコースはこちらで言ったものを使って貰いますし、村からは出ないでしょう。それよりも、そろそろ時間なのでは?」
これ以上追及されたくないからか、ルウは話を打ち切るためにそう問う。
「ああ、そうだった。早く行かないとな」
時間がないと気づいたらしいノーマンは、最後にもう一度俺に顔を向ける。
「カイトくん。もし分からないことがあったり、知らないことがあったら聞いてくれ。出来る限り力になるから」
「カイトさんのランニングのことも伝えておいていただいてもいいですか?」
自信満々に胸を張るノーマンに、思い出したかのようにルウがそう付け加えた。
「わかった。じゃあ、またあとでな」
ノーマンはうなずいた後、背を向け歩き出した。言っていた通り詰め所――森が囲まれてから、村のみんなが集まるために作ったと思われる――に行くらしい。
ルウはそれを見送った後、俺のほうへ向き直る。
「これでランニングをしても大丈夫です。ただ、村の敷地内で走って下さい。あなたも、これ以上疑われないようにしたほうがいいでしょう?」
「まあ、そうだけど」
ルウはそれだけ聞くと、もう伝えることはないと言わんばかりにお辞儀をして歩き出してしまう。
そっけないなあ。それとも避けられてる?
俺は慌ててルウの後を追う。
村の人達に疑われているのかどうかということももちろん大事だが、それよりも気になることがあった。
「見張り、つけてたのか?」
「はい。わたしがお爺様に頼みました」
さも当然のことというようにルウはうなずく。
「言うほど信用されてなかったってことか」
肩を落とす俺を見て、ルウは溜め息をつく。
「むしろ、そこまで信用されているという自信はどこから来たのですか?」
「少なくともルウには信用されてると思ったんだよ」
ルウはそんな俺に横目でチラチラと何度か視線を向けると、再び溜め息をつく。
「こういうと信用してないように聞こえるかもしれませんが、あくまで念のためです。あそこで見張りもなくわたしが家に連れて行けば、あなたを信用する派としない派で村の中が二つに分かれていたかもしれないのです」
「そういうものか?」
「あくまで可能性の話です。信用できないという人達を納得させるには、ほかに思いつきませんでした。それでも、騙したということには違いないですね。すみませんでした」
ルウは立ち止まると、俺に向かって頭を下げた。
本当に生真面目だな。
「いや、えーと。言われてみればその通りだし、説明を聞いて理由は分かったから頭上げて」
「ありがとうございます」
ルウは頭を上げお礼を言った。
なんとなく気まずかったため、俺は辺りを見回した。
すると、村の外れまでもうすぐという位置に来ていた。
ルウもつられて周りを確認して、それに気づいたらしい。
「もう森の近くですね。カイトさん。走る時は出来るだけ村の内側にしてください。見張りのことと同じ理由で、皆にあまり不安をあおりたくないので。それでは、またのちほど」
「待って!」
軽く頭を下げて森へ向かおうとするルウの手を取った。
「え!?」
さすがに俺に止められるとは思っていなかったのか、珍しく声を上げる。
俺はルウの目を見ると、ついさっき決めたことを口にする。
「薬草集めるの、俺も手伝うよ」
「いきなり何を言っているのですか?」
「薬草集めるの、俺も手伝うよ」
「いえ、聞き返したわけではないのですが」
ルウは困惑の表情を俺に向ける。
二回同じことを言うとは思ってもみなかったようだ。
「やっぱり一人だと危険だろう? 俺が護衛ってことで、一緒に薬草を集めれば一石二鳥」
「いえ、わたし一人でも大丈夫ですから。昨夜は確かに助けていただきましたが、今日は武器もありますし」
ルウは明らかな作り笑顔でそう返した。迷惑だとその表情が告げている。
だが、俺も譲ることが出来ないこともある。
一人でいつ敵が現れるともしれない森の中に入るのはやはり危険だ。
昨日の力がまた使えるのかどうかはわからないが、それでもいないよりはましなはずだ。
「連れて行ってくれないなら、大声で村の人を呼ぼうかな」
「そんなことをしたら、あなたの立場がなくなるかもしれませんよ?」
「森に行こうとするルウを止めるための行為が、マイナスな印象になるとは思えないけど」
脅しのようになってしまったが、ルウを一人で森に行かせないのが目的だし、まあいいだろう。
「…………」
「…………」
無言のにらみ合いが発生する。
先に根負けしたのはルウのほうだった。もっとも、早朝の内に森に行きたい彼女には時間がなく、早く終わらせたかっただけかもしれない。
「わかりました。では、護衛という形でお願いします」
「ああ、任せてくれ」
俺は自信を持ってそう返した。
やっと精霊って言葉を本編で出せた。




