表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊戦記  作者: 天仁
4/9

1-3

とりあえず状況確認です。

 少女と出会ってから五分後。

 俺は再び息を切らせていた。


「ま、待って」


 なんとかそれだけ言うと足を止め、膝に手を付き肩で息をする。

 目の前を走る少女は、魁人の言葉が聞こえたようで数メートル前で立ち止まると、振り返り戻ってくる。


「すみません。大丈夫ですか?」


「いや。……こっちこそ、ごめん」


 それだけ言うのが精一杯だった。

 あれから話をして、少女の住んでいる村まで案内して貰う事になったのだが、少女の足は速く、それから約三分の間、全力疾走だった。むしろ、よくついてこれたと自分では思っている。


 というか、足速い。いつも森の中を走ってるからか。

 なんとか息を整えようとするが、そんな俺に少女は控えめに声を出す。


「でも、急いでいるのです。早く戻らなくては」


 少女は俺の心配をしながらも村を気にしているのか、目が今まで向かっていた方向を向いている。

 先程の兵士の事か、それとも他に心配事があるのか。どちらにしても、急いでいることには変わりない。


「あと……どれくらいで……着くの?」


「今は、さっきいた場所から半分くらいです」


 割と近い。

 村は思ったよりも近い場所にあったようだ。


「方向は……こっちに……一直線で……いいんだよな?」


 息も絶え絶えに正面を指差した。少女が向かって走っていた方角である。


「はい。最短距離で移動していましたから、方向は間違いないです」


「じゃあ、先に行ってくれ。俺は……体力が……戻ったら……追いかけるから」


「ですが……」


 少女は迷っているかのように、俺に目を向ける。


「いいから。急がないと、ダメなんだろ。俺はすぐ、行くから」


 それを聞いて、少女はうなずいた。


「わかりました。では、お気をつけて」


 少女は軽く頭を下げると、背を向け走り出した。

 やっぱり、速いな。

 というより、さっきよりも速くないか。

 今までは俺に気を使って遅めに走っていたってことか。

 大きく深呼吸をする。


 とりあえず、状況を整理しよう。

 俺は息を整えつつ、思考を巡らせた。

 先程までは少女と話していたり、走り回っていて考えられる状況ではなかったが、今は時間を無駄にしないためにも、状況の確認は必要だろう。


 おそらくここは、俗に異世界と言われる場所だろう。

 どこかのジャングルに瞬間移動した、なんて可能性も考えたがなかったか。


 この状況は異世界に召喚された、ってことか。

 状況が緊迫しすぎてなかなか現実味はないが、まず間違いないだろう。召喚よりは迷い込んだといったほうが正しいか。


 言葉は通じるんだな。便利だからいいけど。

 そこは何かの力なのか、それとも元々日本語と同じ言語なのか、確かめるすべは今のところない。


 とりあえず落ち着かないと。戦争とか、状況が飛躍しすぎてる。

 どう考えても俺一人の手におえるものではない。

 自分の右手を見た。鎧を着た兵士を殴り飛ばしたのを思い出す。

 あれ、チートってやつか? 普通の人間にはできないだろうけど、体力やそもそもの力は変わってない気がするんだよなぁ。

 三分間の全力疾走などやったことはないが、いまだに息が整わないところを見ると相当無理をしていたようだ。足も太腿がやばい。

 明日は間違いなく筋肉痛になるだろう。


 いや、そんな事よりも考えなければならないのは、なぜ自分がここにいるのかということだろう。

 ライトノベルなど全く読まないわけではない。そういった作品では、危険に陥った国の権力者――王様や皇帝のような存在――が業を煮やして勇者を呼ぶような作品もいくつかある。いわゆる王道の一つだろう。


 だが、着いた場所は城や神殿のような場所ではなく、かなり深い森の中。

 魔法使いや姫みたいな人もいない。

 一応女の子と合うことはできたが、結構な時間歩き回った後だ。

 意図があるのか偶然なのか、この森のある国は戦争中で、さらには森の外は敵の軍隊に包囲されている。


 戦争を止めようとした神様みたいなのが呼んだとか。

 ……なくはないか。

 それはそれでよくある展開だと思う。

 とはいえ、俺にあるものはあのよくわからない力――武装した男を殴り飛ばしたこと位だ。それだけでどうにかできるような戦争だとは正直思えない。


「………はあ」


 分からないことだらけだ。

 今考えても仕方がないか。どうにかするしかないわけだしな。

 俺は整ってきた息を確認しながらペットボトルのお茶を一口飲み、少女の村に向かって歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ