プロローグ
人はいつか死ぬ。
それは当然のことだ。
だけど、それはもっと先だと思っていた。
でも、父さんの死は唐突だった。
四十九日も終わり、お坊さんや他の遺族も帰った後、たった一人で墓の前に立ち尽くす。
俺には実の母親の記憶がない。物心がつく前に亡くなったらしい。
だからこそ、父さんには色々教えて貰った。何の役に立つかはわからないことのほうが多いが、それでもいい父親だったと思う。
三年前には再婚し、新しい家族が出来た所だったのに。
「ありがとう」
軽く頭を下げそう呟くと、踵を返す。
道路まで出て、止めてあった車に乗り込む。
「遅いわよ」
隣に座る妹がそう呟く。
「……ごめん」
「相変わらず根暗で無愛想ね」
お前も俺には無愛想だろ。
それに相変わらずは聞き捨てならないな。友達の前では結構フレンドリーだぞ。
今日は状況が状況だ。根暗にもなるだろう。
「あまり言ってあげるなよ。彼のほうが一緒にいた時間は長いんだ。一人でお別れをしたかったんだろう」
そう答えたのは運転席に座り車を動かす男。なんでも母親の弟だとか。つまりは俺の叔父というわけだ。
母親のほうは何を思っているのか、何の反応もない。というより、父さんが死んでから俺と母親の会話の数は減っていて、最近では生活に必要最低限のことしか話をしていない。
妹は、今の俺と母親では会話の相手は無理と判断したのか、その矛先を叔父に向けた。
「あのさ、叔父さん」
「ん? 何かな?」
俺は話し始める妹と叔父を後目に、ふと物思いにふけった。
父さんと一緒にやったトレーニングを思い出す。
だが、俺は何かのスポーツをやっているわけではない。それでも、父さんは続けるようにと言っていたし、俺は俺で今では日課としている。
この時俺は、トレーニングを無駄にしない為に高校に入ったら部活でもやるかな、などと考えていた。
俺がこのトレーニングの意味を知るのはそれから二年後のことだった。
その時に気づいた。
俺は父さんのことを何も知らなかったのだと。
初投稿です。




