元魔王、チート生活一日目
ベッドから降りて、鏡の前に立ってみる。
「本当に前のままなんだ」
鏡に映った自分の姿を見て、前と何も変わらないことを確認する。
せめてお胸くらい大きくなっててもええのに。
「ミサ、ご飯ができましたよ」
扉越しに声が聞こえる。
「はーい、今いきます」
扉を開けて、廊下を渡って食堂にいく。
席に座るとご飯が出て来て、私はそれを食べる。
あれ?なんでご飯用意されてるんだろう。
隣に座っている女の子に聞いてみた。
「ねぇねぇ、ここってどこだっけ?」
そう言うと、女の子は変な顔をした。
「何言ってるの?ここは学校の寮だよ」
「学校?」
「本当にどうしたの?大丈夫?」
女の子が本気で心配しはじめた。
「あー、うん!大丈夫!それで、学校ってなんの?」
「はぁ…、本当に大丈夫?私たちが通うこのがっこうは、魔法や剣術を学び、魔物や魔王を討伐できる勇者のような人材を育成することを信念にしている、国立の名門校だよ」
「なるほどぉ」
勇者、私なんだけどなー。
「ミサ、今日はちょっと休んだら?」
名前までそのままなんだ。
「ううん!大丈夫!」
「そっか。変なミサ」
そう言って女の子はまたご飯を食べ始める。
はぁ…。
転生したのはいいけど、転生先の記憶はないのが辛いな。
そんな時は、全てを見通す魔眼で、はっ!
目に魔力を流すイメージをする。
すると、目の前に広がる世界が赤色に変わる。
隣の女の子を見ると、女の子の頭の上に情報が出てきた。
名前 サエル
レベル 13
年齢 10歳
魔法使い見習い
保有スキル 特になし
へぇ、こんな風に出てくるんだ。てゆーか、私より年下なのにしっかりしてる。
「ねぇ、サエル」
隣の女の子に、今度は名前をよんで話しかける。
「なに?」
どうやら魔眼は正常に作動したみたいだ。
「あれ?ミサの目…。あ!魔眼だ!」
「!?」
ばれた。
「先生!ミサが!」
サエルが先生を呼ぶ。
周りの人たちも騒ぎ始める。
「ミサ、ちょっとこっちにきてください」
テンパっていると、先生が手招きをしながら私を呼ぶ。
私は静かに席をたち、先生の元へと向かう。
先生に連れていかれたのは校長室だった。
「校長先生。少しよろしいですか?」
「どうした、ハンカ。そんなに慌てて」
慌ててるの?この人。
「それが、この子が先程A級魔法の魔眼をいとも簡単に使っていたのです。この子は…」
「そう焦るな。どれ、ミサこっちにおいで」
校長先生と言われてる人が私のことを近くに来るようにいった。
「さて、君の魔眼はどこまで見えるのかな?」
どこまで見える?
「わからないか。それもそうだな。よし、私のことを魔眼で見てみてくれないか?」
校長先生はそう言って、微笑みながらこっちを見る。
言われた通りにしてあげましょう。
また、目に魔力を流すイメージを作る。
目を開くと、目の前は赤くなって校長先生の情報が浮き上がってくる。
名前 ココール,サイオン
レベル 72
年齢 345歳
大賢者
保有スキル ????
あれ?保有スキルが見えない。
「どこまで見えた?」
「えっと、名前とレベル、年齢と役職?までは見えました。保有スキルはもやがかかってみえません」
素直に答える。
すると、先生二人は驚いた顔をしていた。
「信じられん。ミサ、今私は自分の情報を保護する魔法をかけていた。だが、保有スキル以外は君の魔眼には映った。つまり、君の魔眼は最高クラスと言うことだ」
「はあ」
何を言っているかわからなかった。
「校長先生、この子はもしかして」
「うむ。そうかも知れん」
「?」
私は首を傾げる。
「君も知っての通り、この世界には役職がある。私のように大賢者があったり、ハンカのような魔女があったり。そこで、君の役職を見てみたいと思う。頭を楽にして私の瞳を見てくれ」
そう言うと、校長先生の目が赤くなる。
瞬間、身体中を舐め回されるような感覚に襲われる。
そのまま硬直し、数分がたったその時だった。
「…っ!?」
「校長先生?」
「いや、大丈夫だ。しかし、彼女のなかは何も見えん。真っ暗で、酷く恐ろしいなにかがあった気がする」
やっと体が自由になる。
「これほどの保護魔法を使えるということは間違いないだろう」
「では、今日中にエントリーしておきます」
一体なんの話をしているんだろう。
「ミサ、いいかい。君は冒険者になるんだ」
「冒険者?」
「そうだ。君のその魔力を、是非とも世界のために役立ててほしい」
「はあ」
冒険者って、魔物や魔王を倒したりするって言ってたよね。
「それに伴い、君は今あがっている候補生と戦ってもらう」
「候補生?」
「そうだ。冒険者に選ばれた人たちは候補生と呼ばれる。そして、その候補生のなかで一番優れている者が勇者になれるのだ」
校長先生が説明を終えると同時に、扉が開かれた。
そして入ってきたのは、どの人も背が高く、大人びている人たちが数人、中には女性もいた。
「校長先生、最後の一人が決まったって本当ですか?」
そのうちの一人が校長先生に話しかける。
「ああ。そこのミサが、最後の一人だ」
「この子が?」
入ってきた人たちのあいだからヒソヒソと聞こえてくる。
「こんな小さい子が…」
「冗談だろ…」
「先生も落ちたな…」
なんか、むかついてきた。特に小さいって言葉が。
「お言葉ですが…」
「却下する」
「はい?」
意義を唱えようとした男の人を、校長先生は否定する。
「君たちが優秀な人材とは思っている。だが、そういった優劣をつけるところはまだまだだな」
「…」
全員が黙る。
「あの、この人たちは?」
やっと私がしゃべれた。
「この人たちは、君と同じ勇者の候補生だ。そして君も、その一人。ミサ、君はこの人たちと戦って勝つんだ。そうすれば君は勇者になれる」
もう勇者なんですけど。と、思っても口にはださないでおくね。
「彼らと戦うのは2日後だ。それまで、各々自分の力を磨いておくように」
「話は以上です。皆さん、2日後までは寮にいてください。なお、訓練場は自由にご使用頂けます」
先生の指示に従い、今日は寮に行くことにした。
ミサ「そう言えばベクは?」
ベク「作者があとで出してくれますよ」
ミサ「そっかぁ!」
作者「ベクさん、お疲れさまでした」
ミサ「!?」
ベク「!!?」
たまたま読んでいただいたのであれば有難うございます。