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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔法の捕らわれ人

作者: 水沫

初投稿です。

是非最後まで読んで頂けると嬉しいです!

 ――何で魔法なんかが在るんだろう。


 いつもそう思う。こんな力が無かったら、きっと、世界はもっと平和になるのに。


 私の周辺には、穴という穴から血を流している人間がいた。生きてるのは、私だけだった。


「流石化け物様!」


 ふいに声が聞こえて振り向くと、機械人形(召使い)がこちらを向いていた。


「お見事で御座います! “これら”はすぐに片付けさせて頂きます、少々お待ちくださいませ」


 機械人形は死人を片付け始めた。


 魔法。それは、対象を破壊する為だけに存在する。過去、生活に役立てようとした者はそれなりにいたようだが、魔法の力の源となる魔力の扱い辛さと、魔法自体の規模の大きさがそれを不可能にしていた。


 魔力は多かれ少なかれ、誰もが生まれながらにして持つ物だ。しかし、千年に一人、強大な魔力を持つ者が現れる。それが私だった。


「こちら、片付け完了致しました。ごゆっくりおくつろぎ下さいませ。化け物様」


 機械人形は片付けが終わったようで、さっさと帰っていった。


 体内に強大な魔力があると、常に身体の中から空気中に魔力が放出される状態になる。そして残念なことに、魔力は空気中にあると生き物にとって毒となる性質があった。


 つまり、私は存在自体が害なのだ。


 だからこその、魔法の通じない、物や光すら無い石の部屋であり、私を床につなぐ頑丈な鎖であるのだ。


 では、何故私を殺さないのか?


 それは、魔力が強大である程、無駄に防御力・回復力・生命力があり、何かを摂取しなくても生きていけるからだ。そう、殺さないのではなく、殺せないのだ。回復力が邪魔をしてしまうから。


 対処に困った国は、私を処刑道具として扱った。つまり、先程の死人は罪人だったのだ。


 さて、最初の問題に戻ろう。時間はたっぷりある。――何で魔法があるのか?


 人々が争う為にあるとしか思えなかった。破壊する事しか能の無い魔法を、どうして他の使い道に使えるものか。


 どうせ、外ではきっと自分が正しいんだと叫びながら、武器を振るい魔法を飛ばしているのだろう。そうして、人は人を殺し殺されるのだ。私をずっと閉じ込めている奴等だ、清々する。


 そう考えると、ここは外より平和だ。自由の無い平和。触れただけで壊れるような、薄氷の上に出来ている。


 ドゴォォォオオオンン!!!


 突然、この建物に大きな何かが当たった音がした。魔法だ。魔法をぶつけられている。


 外の世界の人間が、薄氷に触れたのだ。


 私は立ち上がった。私は化け物だ。存在してはならない者。何処に居たって救われる事は無いし、そのような事があってはならない。――結局、人を殺めているのは私も同じなのだから。


 壁が、天井が崩れていく。外の――太陽の輝きが、部屋の中を照らした。久し振りに嗅ぐ、自然の匂い。そして、何かが焼ける匂い。


 今、私を遮る物は何もない。鎖を引きちぎって、部屋の外への一歩を踏み出した。

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