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黒の系譜  作者: 木根樹
黒の系譜―第二章
91/104

黒の系譜02-??『巣』

※注意!

この先、作者的超鬱展開が待っています!

そういうのが『苦手だわ』と言う方は今すぐブラウザバックを!

一応後で、どんな事があったかざっくり補足は入れようと思いますので、話の流れが分からなくなる心配はありません。

『それでも大丈夫さ!』という方はお進みください。

心の準備の為、少し間が開いています。スクロールしてから読み進めてください。

















 坑道の奥、門番ゴブリンを倒したオレは来たるゴブリンキングとの戦いに備え準備を整える。


「……よし!」


 気合いのかけ声と共にオレは門を開け放った。


――そこにいたのは、溢れんばかりのゴブリンだった。

 ただし、


「ゴギャー!」

「ゴギャー、ゴギャー!」

「ギャッギャッ♪」


 今まで戦ってきたゴブリンとは違う。

 生まれたばかりのゴブリンや、やや小さめの若いゴブリンばかりだ。

 人間の赤ん坊より一回りくらい小さなゴブリンたちが、顔を血で真っ赤にして屍肉をむさぼっている姿は、思わず目を覆いたくなるような光景だった。


「ゴギャ!?」

「ゴギャギャ!!」

「ゴーギャー!!」


 しかし子どもとはいえ、魔物は魔物。

 本能的にオレを敵と認識したのか、小さなゴブリンたちはオレめがけ、その小さな身体に似つかず発達した爪や牙で襲いかかってくる。

 

「……来るなら、容赦はしない!」


 オレは数10匹もの子どもゴブリンを一瞬で葬った。

 痛みを感じる暇も与えなかったのが、せめてもの情けだと思ってほしい。

 短剣に付着した緑の血を払い、オレは首を傾げる。


「おかしい……本当にここが、巣の中心部?」


 ざっと見回してみると、あるのは遺体の山(おそらく宿場の工夫たちだろう)や、動物の死骸、穀物などの普通の食料。

 ここは確かに〝巣〟ではあるが、食料庫か何かなのかもしれない。

 何にせよ、奥の方にまだ幾つかの生体反応がある。

 数体のゴブリンと、不明なアイコンが幾つか。

 中には点滅している物もある。

 オレは警戒を怠らず、気配を殺して先に進む。

 部屋の最奥、()せ返るような生臭さと、悪臭の中に、


「…………ぅ」

「……ぁ……」

「………ぅあっ! あぁぁぁぁああぁあっ!?」

「…………ゴギャー! ゴギャー!」


 生きている人間たちがいた。

 丸裸にされた身体にはたくさんの傷や痣があり、全員鎖のような物で天井から吊され、力なくうなだれている。

 中には大きくなったお腹が、うぞうぞと蠢いている人もいた。

 お腹にぽっかりと穴が開いて、事切れている人もいた。

 ゴブリンは繁殖で増える魔物だ。

 先ほどの遺体の山に女性の遺体はなかった。

 ならばこの可能性も考えるべきだった。


「――っ!」


 オレは有無を言わさず、その場にいたゴブリンを全て殺した。

 生後間もないなんて関係なく、首を刎ねた。

 牙もないのにオレの足を甘噛みしてくる赤ん坊ゴブリンの頭を踏み潰した。

 遺体の腹の中にいるまだ生まれてもいないソイツらを、大きめの魔力丸と[キャスリング]で全て取り出して、握り潰した。


――どのぐらい時間が経ったか分からない。

 だが、この場に動くゴブリンはもういなかった。


「……くそっ!」


 短剣を投げ捨て、オレはまだ生きている人たちに駆け寄る。

 拘束されている鎖を引きちぎり、身体を何度も[リ・フレッシュ]で綺麗にする。

 (すす)と汚れがなくなり幾分かマシな格好になった少女は、まだ年端もいかない少女だった。


「しっかり! しっかりして!」

「………………」


 生きている。

 意識もある、はずだ。

 だが、少女は何も答えなかった。

 焦点の合わぬ瞳は虚空を見つめ、口を半開きにしたままピクリとも動かない。


「すぐ回復を……!」

「…………げふっごふっ!」


 奥の方で、口から大きな血の固まりを吐き出して()せている人がいる。

 その人のアイコンは力無く点滅し、今にも黒く染まりそうだ。

 少女も衰弱してはいるが、まだ体力は残っている。

 

「……ごめん! まずはあっちの人を!」

「………………」


 返事はない。

 オレは少女をゆっくり地面に寝かせ、血を吐いている人へ駆け寄る。


「待っていてください! 今回復を!」


 伸ばしたオレの手を、その人は掴む。

 そんな体力どこにも残っていないだろうに。

 痛いくらいの力でオレの腕を掴む。


「……ゃ、めて…………!」

「え…………?」


 アイコンが真っ赤に染まる。

 思考がフリーズする。

 どうして、助けに来たオレに敵意が向けられるのか?


「……ゃ、めて! し、な……せて!」

「し、なせて……? まさか!?」


 この人、今、『死なせて』と言ったのか?


「た……けな、で……! し、なせ……て…………!」

「どうしてそんな!」

「……げぶっ! がぼぁ! も……っら……ぃ…………し、にたぃ…………!」

「でも!」


 再び血を吐く女性。

 強く腕を握られたまま、オレは動くことができなかった。

 

「しに、たぃ…………」


 女性の手から、徐々に力がなくなっていく。


「ぁ、り……がと…………ゃさ、し……」

「ぅあ……!」


 アイコンが一瞬青くなり、淡く点滅した後そのまま真っ黒に変わった。

 オレの腕を掴んでいた手が、だらりと落ちる。


「(どさっ!)」


 カラン、と音がして振り返ったオレが見たのは、オレが投げ捨てた短剣で自身の胸を貫いた少女の姿だった。

 オレが近寄った時には、もう息をしていなかった。

 

「なんだよ、コレ………くそっ! くそぅ………!」


 もう息をしていない、まだ微かに暖かい少女の身体を抱き締め、オレは自身の無力と無知を嘆いた。

 また、救えなかった。


「……ぅ、あ」


 もう一人、いる。

 オレ以外に、もうこの部屋で生きているのは一人だけだ。

 他の女の人たちと同じように、ゴブリンどもに嬲られて、ボロボロになっっている女の人である。

 吊されている鎖を断ち切り、[リ・フレッシュ]で綺麗にした後、持っていた服とも言えないような布を着せ、ゆっくりと地面の上に寝かせる。

 回復魔術をかけようとしたオレの手が、見えない手に掴まれたように動かなくなる。 

 

「アナタは、生きたいですか? ……死にたい、ですか?」

「…………ぅ」


 微かに反応はある。

 ぼんやりとだが、黒目がオレの方を向いている。

 だが、明確な感情は分からない。

 

「じゃあ」


 オレは卑怯者だ。

 あれだけ身勝手に自分の正義感を振りかざしておいて、肝心な時に決断しきれない。


「ここに、2本の瓶があります」


 オレは2本の瓶を女の人の前に置く。

 毒々しい色の液体が入った瓶と、翡翠色の液体の入った瓶。

 見た目からもその効果は一目瞭然である。


「アナタから見て右の瓶は回復薬です。飲めば、体力を取り戻して意識がはっきりするでしょう。左は、毒瓶です。対魔物用なので普通の人にはかなり猛毒です。飲めば、死にます」


 女性は、まっすぐにオレを見る。

 

「どちらでも、お好きな方を選んでください。毒はオススメしませんが、アナタが選ぶというなら止めません」


 オレは目を逸らすしかできなかった。


「アナタの身に起きた事を考えれば、死にたいと思うのも無理がないかもしれません。でも生きていてほしいと思うのは、ワタシのわがままでしょうか?」

「…………ぁ」


 女性からの返答は無かった。

 代わりに、女性の手がゆっくりと左の瓶へと伸びる。

 オレはその女性の姿を最期まで見ることができなかった。


「ごめんなさい……!」


 目を閉ざし、部屋を後にする。

 やらなきゃいけないことが、片づけなきゃいけないことがまだある。

 オレは[マップ]を広げ、今度こそ本当の目的地であろう場所に目星をつけた。


「……更神(アクセス)ッ!」


 オレは血の滲んだ左手を天高く掲げ、絞り出すように叫ぶ。

 ――瞬間、魔力と共に内からあらゆる感情が爆発した。

ゴブリンが相手、ということはどうしても入れなきゃいけないんだろうな、と言う事で書きました。

ゴブリンとは言え小さいモノを惨殺するシーンや、女性が虐げられているシーン、〝救えない事〟への自責……鬱ばかりな内容です。

クロは全能じゃないんだよ、と言うのを思い知らされるお話でした。

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