黒の系譜02-29『メガ〇が来る』
諸事情によりサブタイトルが変更になりました!
〇に入る文字は一体なんなのか!?
って引っ張るほどのものでもないんですけどね。
――黒猫院浮上の翌日。
オレは慌ただしくあちこちを走り回っていた。
「ふんふふーん♪ 黄、簡易住宅、屋根、[アース・ウォール]」
「おぉ、家だ!」
「次! 黄、簡易住宅、屋根、[アース・ウォール]」
「ありがたやあるがたや……」
「もいっちょ! 黄、簡易住宅、屋根、[アース・ウォール]」
「クロさん、ノリノリですわね」
希望者順に仮説住宅を建て、
「ふんふふんふふーん♪ いっちょ上がり!」
「悪いな。あんたの手を煩わせてしまって」
「かまいませんよー。ワタシも料理好きなので」
「……これ料理なの?」
「(しっ! クロネコさんが料理って言ったら料理なんだよ!)」
「(ま、美味しいなら別になんでもいいけど)」
「ふんふふんふふーん♪」
炊き出し場で錬金窯をかき混ぜて料理を作り、
「はい経過は良好ですねー」
「いつも悪いねぇ」
「おとっつぁん、それは言わない約束でしょ?」
「へ?」
「いえ、なんでも……////」
怪我人たちの治療に周り、
「ほら、今日の魔核よ///////」
「わーい。エミリーありがとー!」
「ふん//////」
「「「「「「「姐さん、今日も見事なツンデレ――あぎゃーっ!?」」」」」」」
「ツンデレ言うな!」
エミリーにツンでられ、
「クロネコだー! にげろー!」
「にがさん! 鬼ごっこの鬼の真の実力、見せてやろう!」
「やべー! がんそだー! がんそがでたぞー!」
「ここはにだいめのおれがいんどーわたして……つかまったー!?」
「「「「わー♪」」」」
ちみっ子どもの相手をし、
「(うねうね)」
「えっと、ルーお姉ちゃん。このうねうね動くロープは何ですか?」
「ん、【動くロープ】」
「あぁ、ありましたねそんなレシピ」
「(うねうね)」
「で、なぜワタシは縛られているので?」
「ん、じっけん」
「そうですか、じゃああっちの毒々しい色の瓶は?」
「ん、乙女の秘密」
「そうですか。随分と毒々しい乙女もいたもんですねですね」
「ヤヴァイコーン、一服昇天」
「なるほど、エミリーみたいな破壊力なんですね」
ルーさんの怪しい研究に付き合い、
「ふんふふふーん♪ 大きくなーれ、大きくなーれ」
「……いつも思うの。クロネコさんは何をやっているの?」
「なんか、魔草の発育をよくするための肥料を撒いている、らしいッス」
「大きくなーれ、大きくなーれ♪」
「踊ってるようにしかみえないの……」
「ッスよねぇ……」
「よし、じゃあ次は牧場でヤヴァイコーン共と戯れてこようか」
農場や牧場などの生産施設を回って調整を行い、
「はふぅ……極楽極楽♪」
一風呂浴びたり、
「んぐんぐんぐ……っぷはー♪ 炭酸ガリネもいいけど、風呂上がりはやっぱヤーヴァミルクだよねー♪」
風呂上がりの一杯を楽しんだり、とやることがたくさんなのだ……はぁー、いい気持ちだった♪
「後はマッサージチェアをどうにかして……」
オレが牛乳髭を拭き取りながら次なる計画を練っている時だった。
「クロさん、お客様がお見えなのですが……」
「お客さん?」
教えに来てくれたミラの表情は固い。
ひょっとして招かれざる客、と言う奴だろうか。
「相手は?」
「教会の神官です。この間の広場の……」
「ギース、だね?」
「はい」
なるほど、あの時の禁術の男か?
上級神官とか言っていたが、そんな大層な相手がわざわざこんな門外まで何の用だと言うのだろうか?
ま、せっかくご足労頂いたんだ。会ってやるとしますか。
「わかった。着替えたら、すぐ行くよ」
「はい。あ、その格好もお似合いですわ。ご衣裳ですか?」
「そんなとこかな?」
オレは自由街で買って来てもらった東方大陸の民族衣装、ユカタン(浴衣みたいなやつ)を脱ぎ捨てる。
生まれたままの姿になると同時に、一瞬でいつもの服を[装備]した。
サービスシーン?
残念ながらそういった物をオレに求めるのは間違っているよ。
―――――
オレは[フレア・ミスト(弱熱風)]で髪をさっと、乾かして男の待つ応接室へ入った。
ギースは2人の神官を後ろに立たせ、ふんぞり返るように椅子に座っていた。
「お待たせしました。アナタがギースさん?」
「そうだが……何だこの獣人の子どもは? 僕は責任者を出せと言ったはずだが?」
言い方が余りに人を小馬鹿にしくさっていて、さすがにオレもカチンときました。
応接室の床に手を置いて[アース・ウォール]を唱える。
一瞬でできあがった簡易テーブルに、ギース以下お供の神官たちは度肝を抜かれているようだった。
どーだこのやろ……いけないいけない。
紳士がこんなことで取り乱してはダメだな。
いや、今は淑女ですよしくしく。
「失礼。あった方が便利かと思いまして。なーに、ここを建てた時に比べれば大した苦労はありませんでしたし。おほほほほほ♪」
「ここを建てただって!? バカな、そんなこと……!」
「いやいい。今日はそんなことを聞きに来たわけじゃない」
なかなかいいリアクションを取ってくれる取り巻きAとは違い、ギースの方はあまりリアクションが無くてつまらなかった。
つまらない男はもてんぞ? ギース君や。
「しかしギース殿」
「忘れるな。僕たちの使命はなんだ?」
「はっ、門外街に現れたという女神の真意を確かめるためです!」
「そうだ。それでいい」
明らかに年上の神官に対して命令口調で話すギース。
どうやら上級神官と言うだけあって、ギースの方が立場は上と言うことらしい。
ってか、今大変不穏なワードが聞こえて気がするんですが?
「さて、くだらない話はこのくらいにして本題に入ろうか。獣人」
「クロネコ。せめてそう呼んでくれません? ここには壁の中と違ってたくさん獣人族が暮らしているので紛らわしいじゃないですか」
「いいだろう、クロネコ」
うんうん、素直でよろしい。
まぁ若干上から目線なのはまだ癪に障るけど。
「で、ギース様のようなお忙しい方がなぜこのような下賤な場所に?」
「お前は数日前に御光臨されたという女神の話を知っているか?」
オレの嫌味を意にも解せず、ギースは淡々と用件だけ言ってきた。
相変わらずの上から目線。
人にものを尋ねる態度ではないな。
「さて? どうでしょうかね?」
実のところ知っているのだが、オレは惚けて見せた。
まぁ『知っている』と言うより、オレは当事者。
しかもオレのせいでやってきたような物だから、オレが原因と言っても過言ではないんだが。
――少し日は遡って、オレが皇都に来たその日。
どうしても心残りがあったオレは一人、文字通り城壁を飛び越えて門外街へとやってきた。
一瞬、誰かに見られたような気もしたが、先を急いでいたのでその時はまったく気にも止めなかった。
「……野晒しってのは、さすがにね」
あの場所に、その子たちはまだいた。
オレの下手な正義感のせいで落としてしまった命たち。
どうせ誰も彼らを弔わないだろうから、せめてオレがと思ったのだ。
(それにしても遺体をそのまま放置なんて、いや荒らされていないだけまだいいのかな?)
それでも、やっぱりこんなのおかしい。
オレは冷たくなった小さな体をそっと抱きしめた。
自分の無力さが、嫌と言うほど思い知らされる。
「にいちゃ……?」
もぞ、と、少年の下じきになっていたもう一つの小さな体が動く。
「にいちゃ、おきたの?」
倒れたまま動けない様子だが、息をしてる。
あの時少年と一緒にいた小さな少女が、
「おなかすいたよぅ……」
「生きて……!」
「にいちゃ? どしたの? いたいよ?」
生きてくれていた。
「よかった……!」
「へんなにいちゃ」
オレは少女を抱きしめたまま、しばらくその温かさを感じていたかった。
―――――
「これで、よし」
少女はあの時深い傷を負って気を失ったが、少年が持っていたポーションが割れた拍子に中身を浴びて、一命だけは取り留めたようだった。
オレは少女に回復魔術を使い傷を治したのだが、どういう訳か視力だけは完治しなかった。
時間が経ちすぎたせいなのか、それとも精神的な物が原因なのかは不明だが、どの回復魔術をもってしても完全に目が見えるようには治らなかった。
オレは少女に自分が兄ではないと言う事と、兄は亡くなった事を伝えた後、二人で少年の遺体を埋葬した。
「ねえちゃ。にいちゃは、もううごけないの?」
まだ、死というものをよく理解できていないのだろう。
純粋なその疑問の言葉に、オレの胸は締め付けられる。
「うん、ごめんね。全部、全部ワタシのせいなんだ……!」
「どして?」
オレは答えることができなかった。
『きっと分からないだろうから』
勝手に理由を付けて誤魔化して、この少女が真実を知ることを恐れていた。
彼女に嫌われ、このまま罪を償う機会が失われてしまうのが怖かった。
いつの日か真実を理解した少女が、オレを卑怯者だと罵るなら罵ってくれていい、偽善者と蔑むなら、甘んじてそれを受け入れよう。
でも、今は彼女のために側に立つ事を許してほしかった。
だからオレにはただ謝る事しかできなかった。
「ごめん、ごめんね……」
「よくわからないけど、いいよ。ゆるしたげる」
少女の優しい手が、オレの頭を撫でてくれる。
きっと何を許すのかもわかっていないだろう。
それでも、その言葉にオレの心は救われた。
「ありがとう……!」
「ねえちゃ、だからいたいよー」
抱きしめたこのぬくもりを、オレは二度と失わせてはいけない。
そのためにオレは出来ることなら何だってやってやる。
「よし!」
まずは安全な場所の確保だ。
飢えた野獣のような人々からこの子が隠れる為の場所を確保しなくてはいけない。
いや、この子だけじゃない。
門外街で暮らす全ての子どもたちが安全に生きていける場所を作らなくちゃいけない。
「そうと決まれば……頑張るぞー!」
「がんばるぞー!」
「「おー!」」
オレたちは夜の門外街で笑い合った。
――そして数時間かけて出来たのが地下施設だ。ここなら少女一人を置いても、それなりに生きていける。
食料も水も十分に備蓄しておいたし、明日の夜にはまた様子を見にやってくるつもりだ。
ただ問題があるとすれば、
「ねえちゃ、行っちゃうの? さみしいよー」
「うぅ……」
入り口の所まで来たところで、少女に服を掴まれたまま帰ることが出来なくなっていると言うことだ。
そりゃそうだ。
こんな広い所にたった一人残されて、寂しくないはずがない。
今まで兄妹二人で生きてきたのに、兄と生き別れてたった一人。
目だってほとんど見えないのに、不安が無いはずがないだろう。
だからといって、少女を連れて行く事も出来ない。
門外街から少女を連れて行ったせいで、余計な揉め事に巻き込んでしまってはいけない。
(どうするオレ? どうするよ……!)
一人でうんうん唸っていると、どこからともなく声が聞こえた気がした。
というより、門を越えた辺りからずっと、誰かに見られているような気がしていたのだ。
しかし何度周囲を見回してみても、人の気配はない。
いや、人目に付かないよう細心の注意は払っていたから当然だ。
(じゃあ、この視線は一体? ……まさかおばけ!? ま、まさかそんなことあるはずない。お、お化けなんて非科学的なものが実在するわけないんだあははははなんまんだぶなんまんだぶ!)
「あれ、にいちゃ?」
少女が、オレの後ろの方を指さして言う。
当然だが、そこには誰もいない。
「や、やだなぁ。ダレモイナイヨ?」
「んっと、でも、にいちゃがいるきがするの」
「ひ、ひゃー!?」
聞いたことがある。
人は視力を失うと他の感覚が鋭くなると。
普通は嗅覚とか聴覚とからしいけどここは異世界。
そういうシックスセンス的な? レーカン的な? 何かが発達してもおかしくはない。
そういや、メイリーンさんも亡くなったとき成仏出来ず留まっていたとか言っていたし、ややややっぱりおばけはじつざいって……待てよ? メイリーンさん…………
「魂がある。でも身体はない。作るのは今のオレには無理。何か代用出来る物は……」
「ねえちゃ、どうしたの?」
「そういえば魔核が……いやでも待てよ。そうすると……」
「???????」
オレは考える。
これからオレがやろうとしていることは、ある意味で神に背く行為。
下手すれば今度こそペナルティが課せられるかもしれない。
そうなればオレだけでなく、この子にまで不幸が及ぶ可能性もある。
でも、
(今更何を怖がる、クローディア。いや、クロード=ヴァン=ジョーカー! お前は何だ、何者だ!)
そうとも、この子のために何だってやってやると心に決めたばかりじゃないか。
女神が敵対するなら、それでもいい。
世界がこの小さな少女に牙を剥くと言うなら、そんな世界ぶっ壊してやる。
「ねえちゃ、どうしたの?」
「いい? これから起きる事は誰にもナイショだよ?」
「……うん?」
オレは懐から小さな魔核を取り出す。
(そうとも、オレは神への反逆者だ)
だったら女神だって騙しきってやる。
「([ポケット・ソナー]、特殊な魔力の流れを……あった、これが魂? 分からないけど、この子の言葉を信じよう! [キャスリング]!)」
オレは、魔核内の魔素とその魂と思われる物を入れ替える。
正直出来るかどうかなんて確証はなかったが、魔核内が今までとは別種の淡い光で満たされる。
先ほどまで宙を漂っていた魔素の塊もなくなっているし、たぶん上手くいったのではないだろうか?
(さて、ここからは本当に試した事ないけど……何とかなるでしょ)
何せ、この世界の元になったのはオレの黒歴史なのだから。
「クローディア=サッカー=ノーウェイの名に於いてここに契を交わす!」
魔核の輝きが一層輝きを増していく。
上手くいきそうだ。
こういう時、チートって便利だよね。
「えっと、現れよ! 契約魔獣!」
魔核内部の光の奔流に耐えきれなくなった魔核に亀裂が生じ始める。
く、やはりチート頼りで何の知識もなしにやろうとしたのが間違いだったのだろうか?
亀裂が全体にまで及んだ魔核は音を立てて弾け、そして……
「わふ?」
代わりに可愛らしい黒い子犬がちょこん、とお座りしていた。
「きゃ」
オレは心の底から叫んだ。
「きゃーわぁーいぃーいぃーーーーーーー!」
「あれ、おにちゃ?」
「わふ!」
子犬はしっぽをふりふり少女の頬を舐める。
うん、ちょっと想像とは違ったけど、これはこれでいいんじゃないかな?
可愛いは正義だからね。
「あはは、くすぐったいよー!」
「わふっ!」
可愛いは正義だからね! ※大事な事なので2回言いました。
「さ、あとは……」
オレは夜だというのに徐々に明るみ出す空を見上げた。
天から幕のように降りてくる光の中を、美しい女性がゆっくりと降りてくる。
まさに女神光臨ってね。
≪ぱぱさま、お久しぶりです≫
「ぱぱさま言うな」
≪失礼。今日は公務でしたね。クローディア様≫
「私用でもぱぱさまはやめて。久しぶりだね。女神様?」
「めがみさま?」
「わふ?」
女神はオレたちの前までやってくると、呆れたように言う。
≪以前忠告したはずですが? ――禁を侵してはならないと≫
女神は前に現れたときと全く同じような生真面目な顔で淡々と告げる。
≪そして二度目はない。そうも言ったはずですが?≫
「さて、何のことかな?」
ここからはオレの一世一代の大芝居だ。
たとえ相手が女神だろうと、誤魔化しきってやる。
〇に入るのは〝ネ〟であって、〝ミ〟でもあります。
そう、ダブルミーニングというヤツです! ……違いますか? そうですか。
ちなみにこのちみっ子とワンコはちょいちょい出て来ています。
どうしてもね。
どうしても、あのままにはできなかったんです。
あ、クロが野ざらしにしとけなかったって話ですよ? べ、別に作者があの子どもたちを死なせたままでいられなかったとか、そういう事ではありませんよ!
……たぶん。




