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黒の系譜  作者: 木根樹
黒の系譜―第二章
74/104

黒の系譜02-25『とあるツンデレ少女の夢』

今語られる、エミリーの夢とは!?

エミリー登場シーンを覚えていらっしゃる方は一瞬『あれ?』となるかもしれませんが、補足説明でなんとなくわかってもらえるかと……


※9/22誤字修正しました! クロのセリフで「能筋」→「脳筋」になおしました。

「ん、まんぷく」


 ルーさんは手早く食事を済ますと、すぐにまた本を読み始めた。


「そんなにおもしろいですか? その【マジカル☆レシピ】」

「ん、錬金術の至宝」

 

 ルーさんに言わせると、これだけのレシピの詰まった錬金術書と言うのはそうそうないとの事だ。

 中には貴重な素材を使ったレシピなどもある事から、これは錬金術師にとって金や銀にも勝る宝なのだとか(通訳:ミラ)


「何か面白いレシピとかありました?」

「ん、【錬金釜】」

「あぁ……ありましたねそんなの」


 説明しよう! 【錬金釜】とは、オレが普段使っている【錬金壺】のでっかい版である。以上! 

 え、他に何か無いのかって? えっと……わかりやすくイメージするなら、魔女とかが怪しい薬とかつくってるそうなアレ?

 レシピを考えた当時のクロードは、某工房の錬金術師がこう釜をかき混ぜながら錬金術やってるのを見てなんか『イイナ』って思っちゃったんだよ。


「素材、驚愕、【賢者の土】」

「あぁ……ありましたねそんなの」


 説明しよう! 【賢者の土】とは、なんかすごい土の事である。以上!

 いや、あれです。栄養満点で植物の生育が良くなったり早まったりする魔法の土の事です。

 材料は【産業廃棄物】とか【岩人形の土塊】とか【牛の糞】とか?

 そんな物に魔力を注いだら出来るんだから、ほんと錬金術ってすごいよね!


「大きい釜作る、もっと錬金できる」

「なるほど、確かにそうですね」


 大きい釜があれば、確かに大きな素材をそのまま突っ込むこともできる。

 そして何より薬品系アイテムの大量生産が可能になる。

 そうなればポーション(リカム)や解毒剤(ガリネ)を大量生産して……


「ふふふふふ♪」

「クロ、悪い顔、ふふふ♪」

「ルーお姉ちゃんこそ♪ ふふふふふふふ♪」


 オレたちは二人では錬金術の未来に思いを馳せると、笑いが止まらなかった。


「……アンタら、変よその顔」

「エミ、しつれい」

「いいんです。エミリーごときに我々の崇高な思いは分からないんですよ」

「ん、のうきん」

「ノーキンの意味は分かんないけど、バカにされてるのは良くわかったわ」


 エミリーは笑顔で拳を構えた(ただし目は笑っていない)


「ぼ、暴力反対! 別にバカにしたわけじゃないよ!?」

「ん、褒め言葉」

「……へぇ?(ニギニギ)」

「ほ、ほら! 常に頭の中で戦闘の事を考えているすごい人って意味だよ!」

「なるほど。それは確かに褒め言葉ね♪」

「(ん、単純)」

「(えぇ、エミリーが脳筋で助かりました)」


 エミリーは一伸びすると、食べかけだったホットサンドを美味しそうに頬張った。

 やけに上機嫌だが、そんなに読書が楽しかったのか。脳筋のくせに。 


「んー♪ それにしても頭使った後だから、ご飯がおいしいわねー!」

「ルーさんは分かるけど、エミリーが読書なんて珍しいね。何読んでたの?」

「あ、ちょっと! 返しなさいよ!」

「返せも何も、元々ワタシの本だから」

「そ、そうとも言うわね」

「そうとしか言わないから!」


 オレはエミリーが持っていた本を取る。

 エミリーが必死に読んでいたのは【匠の技全集】だ。

 これはアイテムのレシピが書かれた【マジカル☆レシピ】に対して、武器や防具とそのレシピが書かれている本である。

 能筋のエミリーの事だからてっきり戦技が載っている【戦技奥義書】あたりでも読んでいたのかと思ったがそうではなかったらしい。

 ちょっと意外だった。


「うぅーっ! まだ途中なんだから返しなさいよー!」

「だからこれはワタシの本だと」

「アンタの本はアタシの本! パーティーのショーユ財産よ!」

「共有財産ね。でも、どうしよっかなぁ? エミリーにはさっき殴られかけたし」

「う゛」

「これは返してもらおっかなぁ……?」

「ちょ、ちょっとだけ待って! あと少し、あと少しでなんか掴めそうなのよ! お願い!」


 珍しくエミリーが食い下がるので、オレはちょっと意地悪を言ってみる。


「んー、じゃあ。エミリーの分のヤモ肉、半分くれたら考えてもいいよ」

「うぐっ! 足の裏見るじゃない」

「見ないよ! それを言うなら足元! で、どうする?」


 エミリーはしばし自分のお皿と本を見比べた後、震える手でヤモ肉を差し出してきた。

 驚いた。まさかあの食い意地の申し子エミリーが自分のお肉を差し出すなんて……そこまでしても見たいのか。


「は、はやく! アタシが正気を保っているうちに!」

「……はぁ。いいよ、お肉はエミリーが食べて。本も貸してあげるから」

「ホント!? 嘘じゃないわね!?」


 オレは本をエミリーに貸してやる。

 エミリーは大事そうにそれを抱えて喜んだ後、食事中だというのに本を開こうとしている。


「エミリーちゃん、お行儀が悪いですよ」

「ん、本、逃げない。あとにする」

「ちぇっ、わかったわよ」


 エミリーのはしゃぎようと言ったらまるで子どもみたいだ。

 まぁ、16歳なんてオレからしたら全然子どもだけどさ。

 でも、いつも子どもみたいなエミリーがいつも以上にはしゃぐなんて……


「どうしてそんなに読みたいの?」

「うぐっ、それは……! オトメの秘密よ!」

「ダーメ。乙女って柄じゃないでしょ? 貸してあげるんだから、それぐらい話してもらうよ?」

「……わかった。教えるわよ」


 断われば本をまた返せと言われると思ったのだろう。

 エミリーは観念して理由を教えてくれた。


「アタシの親父って、鍛冶師なのよね」

「そうだったんですか」

「ん、初耳にみず」

「ソ、ソウナンダー!」

「クロ、何よそのうさんくさい反応は?」


 うん、実は[ステータス]を見て知ってたからね。


「でね、ちっちゃい頃からよく仕事場に遊びに行っては親父の背中を見てきたわけね。で、やっぱ思うじゃない? 『アタシもいつか親父みたいな鍛冶師になりたい』って」


 ふむ? オレの持っている情報と違うぞ?

 たしかエミリーって、『実家の鍛冶屋を継ぐのが嫌で家出した』んじゃなかったっけ?


「エミリーちゃんって、男の子みたいな事考えるんですね」

「ん、おとこらしい」

「ホントだよ。ふつう女の子がそんな事考える?」

「それよ!」

「どれ?」


 エミリーも父親にその話をしたら『鍛冶は男の仕事だ! お前は婿を取って家に入れ』と突っぱねられたらしい。

 あぁそうか。実家の鍛冶屋を継ぐのが嫌だったっていうのは、結婚して主婦になるのが嫌だったって事なのか。紛らわしい。

 まったく、エミリーは[ステータス]までめんどくさいとは。


「それでケンカしたの?」

「えぇ。ケンカしたその日に家出してやったわ」

「エミリーちゃん……(男らしいですわ)」

「エミ……(男らしい)」

「エミリー、超(おとこ)らしいじゃん!」

「男らしい言うな!」


 と言う訳で、エミリーのあまり要領を得ないめんどくさい説明がしばらく続くので、ここはダイジェストでお送りいたします。

 漢らしく家出したエミリーはたまたま街に来ていた商隊の馬車の積み荷の中に潜入、そのまま寝てしまっていたら気がつけば西大陸(ウェステリオ)

 大陸越えに少し焦ったりもしたが来てしまった以上考えてもしょうがない。

 とりあえず皇都で活動しようと冒険者デビューしたが皇都はご覧のありさまで空気が肌に合わず、有り金全部叩いてスーサの街へ。

 細々と薬草採取などで生活していたが、これではいけないと死霊の館へ挑戦。


「で、ワタシたちに助けられた、と」

「思えば、あの時アンタらに会ってなかったら今頃アタシもどうなってたことか……あんま信じてなかったけど、女神ってホントにいるのかもね」


 いるけど、エミリーの件とは多分関係ないかなぁ……?


「その、結構今更になるし、前にも言ったかもしれないけど……クロ、ルーミア、それとミラ。あ、あんがとね/////」

「ん、ツンデレ」

「ツンデレですわね」

「はいはいツンデレツンデレ」

「ツンデレ言うな!」


 でもそっか。

 エミリーにも色々あったんだなぁ。

 鍛冶師になりたくて家出、ねぇ。


「あ、じゃあエミリーって、鍛冶とか出来るの?」

「出来なくはないわ! やったことないけど!」

「なぜ自信満々にそう言えるのか?」

「私、エミリーちゃんのあの底知れない自信が今はすごく羨ましいです」

「んーん。やめとく」


 でもそうか、鍛冶の知識はあるんだ。


「…………ふふ♪」

「ん、また、悪い顔」

「クロさんの悪い癖ですわね」

「な、なによ! 何なのよ!」


 オレはエミリーの肩をつかんだまま止めどなく溢れ出すアイディーアァを押さえることが出来なかった。


「うふふふふふふふふ……♪」

「クロ、アタシたまにアンタが怖くなるわ」


 怖いとは失礼な。

 オレってばこんなに天使なのに。

 ……止めよう、自分で言ってて虚しくなってきた。



―――――



「こんな感じでどう?」

「んー、いいんじゃない?」


 お昼休憩が終わり、ミラの魔術指南をルーさんにお願い(オレの魔術ではミラの参考にならないため)したオレは、エミリーと少し離れた場所へやって来た。

 そしてエミリー監修の元、魔術で簡易的な鍛冶場を作り実際に武器を打ってみることにしたのだ。 


「金属を溶かす炉と、武器を打つための台、あとは何かいる?」

「そうね。確かこう、ジュワ―っと熱い剣を覚ます水槽とか、シュコシュコ風を送るヤツ?」

「水槽ね、おっけー。それと、シュコシュコ……。? あぁ、ふいごとかって言うのかな? それなら大丈夫。火力は魔術で調節するから」


 炉の中に火を入れるのは魔封珠(inファイア・ボール)で行う。

 込める魔力を調節すれば火力調節は自由自在だからね。

 なのでオレは取りあえず[アース・ウォール]で水槽を作って、[アクア・ドロップ]で水を張る。


「で、あとは道具ね。ハンマーと、こう金属を挟むでっかいガションガション、ってヤツと」

「どんな形?」


 オレはエミリーに描いてもらった絵を参考に、[アース・ウォール]ででっかいペンチみたいな物を作り出す。


「こんな感じ?」

「うん、悪くないわ」


 オーケーサインがでたのでオレは前に袋の鼠で買ったハンマーをエミリーに渡し、早速炉に魔封珠を入れて魔力を調節、火を入れる。

 うん、魔力調節で火力は問題なく調節出来そうだ。


「火の感じはどう?」

「多分、悪くないとは思う」

「そっか、さすがに火の調節具合まではわかんないか」

「ハンマー入れるとこは見てたのよ?」


 まぁ、火力はやりながら研究してみよう。

 今日のとりあえずの目標は[鍛冶]スキルの獲得だからね。


「でも肝心の金属がないんだけどどうすんの? 要らない武器でも潰す?」

「ふふふ……その辺は抜かりありませんぜ、旦那!」

「旦那って誰よ……?」


 オレは地面に意識を集中させイメージする。

 砂鉄などがいい例だが、普通の地面の中にも金属物質は存在している。

 他にも銅やアルミなど、微細ながらも成分として金属はしっかりあるはずなのだ。

 まぁ元の世界とこっちの世界、多少地質は違うかもしれないがその辺はきっと似たようなもんだろう、多分?

 それを集めたら、どうなると思う?


「金属、棘、[アース・ニードル]!」


 バッキィーン、と言う金属音と共に地面から突き出た針がその答えだ。

 地中に含まれる金属割合が少ないせいか、大きさはオレの身長の半分くらいしかない。

 だが、光沢があり叩くと固い手ごたえのソレは間違いなく金属の塊である。


「お姉さま……本当に私にも、クロさんのように魔術が使える日が本当に来るのでしょうか?」

「ミラ、ふぁいと」


 なんか向こうでミラが地面にうなだれているが、何か上手くいかないことでもあったのかな? ガンバレ、ミラ!


「アンタ、ホント……いや、何でもないわ」

「で、どうさ? どうなのさ?」

「どうも何も、ぐっちゃぐっちゃじゃないのコレ?」


 ぐっちゃぐちゃ、というのは見た目の事だろうか?

 確かに言われてみればこの金属針、色々な金属の集合体ではあるようだが色々混じり合っていて全体がまだら模様になっている。


「ダメなの?」

「ダメに決まってんじゃない! いい? そもそも鍛冶ってのはねぇ……」


 そこから鍛冶とはなんたるかを延々とエミリーに語られたのだが、全体の半分くらいしか記憶がない。昨日もあんま寝てなかったからなぁ。

 でもつまりはまぁ、金属が混ざってたら溶ける温度の違いとかで加工しづらい(意訳)ということらしい。


「うーん、じゃあ分ければいいって事?」

「あのね、そうやって簡単に言うけど、そもそもどの金属がどの温度で溶け出すかなんてちゃんと修行してないアタシが知るわけないじゃない! どうやって……」

「えっと、含有金属、分別、[アース・ウォール]?」


 オレが唱えると、金属針がうぞうぞと動き、数秒後にはきれいに金属ごとにきっちりと分けられた板上の物ができあがっていた。


「できたよ?」

「できたって……いやできてるけど」

「どやぁ……!」


 エミリーは、それをみて溜め息をつく。


「…………はぁ。もう好きにしなさいよ。でもアンタ、今世界中の鍛冶師を敵に回したって事だけ覚えときなさい」

「ふんふふーん♪ きっこえなーい♪」


 オレは[ウィンド・カッター]で板を切り分け、鉄と銅、銀なんかをエミリーに渡した。

 一部堅くてどうしても切れなかった部分は、そのまま[アイテム]にしまい込む。

 なんか[アイテム]欄に〝ミスリルアダマン合板〟とか心躍るフレーズが見えたが、今の俺にはまだそれを加工する術がない。残念の極みである。

 まぁ今はそんな事より[鍛冶]スキルだ。


「先生、おなしゃーっす!」

「もういっそのこと、アンタが魔術で剣にすればいいんじゃない?」

「そこをなんとか!」


 今の一件ですっかりへそを曲げてしまったエミリーを必死で説得すること1分(普通にチョロかった)、エミリーのお父さんの見よう見まねだという作業にオレもあーだこーだ言いながら、一緒にハンマーを打ってみること数時間。


「できたね」

「えぇ、できたわ」


――クローディアは[鍛冶]を習得した!


 ペラッペラなため普通の人はまともに振りぬくことのできない剣や、果物ナイフサイズの両手剣、恐ろしい切れ味の(くわ)など、数々の試作品(※失敗作ではない)を重ね、ようやくオレは念願の[鍛冶]スキルを手に入れられた。


「……できたの?」

「……できた、ってことにしときましょ」

「そうだね。じゃあ乾杯しよっか」

「いいわね! ……飲んで忘れましょ」


 オレもエミリーもへとへとだったが、最後に完成させた巨大なナイフ(全長2メートルの純鉄製)を作り終えた後に二人で飲んだ炭酸ガリネの味は格別だった。

 どうやら魔力を使う[錬金]と違って、身体を使う[鍛冶]はスキルであっても一筋縄ではいかないようだった。

 取りあえず目下の目標は如何にして普通の人間が使えるサイズまで小さくするか、である。

こ、こじつけちゃうねん! ……失礼しました。

よくよく考えたら、エミリーが家を飛び出した理由が明確になっておらず、エミリー登場当時、あまり踏み込んだこともかけないし、かといってストレートすぎるのもアレだし、ここまでエミリーが活躍すると思ってなかごほんごほん!

と、ともかく色々考えた結果の『実家を継ぐのが嫌で家出』だったのです。

い、言い訳っぽい? は、はてナンノコトアルカ? ワタシ、チョトムツカシイコトワカランノコトヨ?

あ、あれです! [ステータス]も何も万能ではないと言う事ですよ! うん!


※9/20の活動報告にてちょっとしたアンケート? みたいなのやってます。

 そっちにも書いてますが、ちょっとしたネタバレ含むので読む際は少し注意してお読みください。ご意見などお待ちしております。

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