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黒の系譜  作者: 木根樹
黒の系譜―第二章
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黒の系譜02-21『拝啓、お元気ですか? 私は元気(意味深)です』

本来、拝啓の後には季節ごとの挨拶を入れたりしますが、そこはほら異世界だから? いえ、しっくりくるのが思いつかなかっただけなんですぅ……


 ――禁術。

 それはかつてのクロード(オレ)が最も中二病を拗らせていて時に編み出した数々の禁忌の魔術。

 あまりの危険さ故に、女神によってその記憶と共に封印された強大すぎる魔術。


「つっ……!」

「クロさん、無理はしないでください」


 思い出そうとするたびに、封印のせいか頭が割れそうになるほど痛み出す。

 まだ、今は思い出す時ではないと言う事だろう。

 思い出そうとするたびにそんな調子になるので、みんなオレが禁術を知っている理由は深く尋ねないでいてくれた。


(ホント、みんなには隠し事してばかりだ)


 今はまたその好意に甘えてしまうが、いつか必ず全部話そう。

 オレはひそかに心に誓う。


(でもあの神官……どうして禁術を?)


 本当はすぐにでも直接確かめたかったが。今はまだ情報が少なすぎて危険の度合いが未知数だ。

 藪をつついて出てきたのが(オーガ)(ドラゴン)ならなんとか出来る自信はある。

 だがもし出てきたのが魔王や中二病黒魔導師とかだったらやばいかもしれない。

 だから今はまだ情報収集に徹するべきだ。

 じっと我慢、来るべき戦いに向けて十分に策を練る必要がある。

 そのためにも、まずは皇都攻略の為に作戦会議だ。


「さて、じゃあ気分を入れ替えて報告会といきますか!」

「はい」

「ん」

「む」


 オレたちはそれぞれが見てきた街の様子を伝え合う事になった。

 とりあえず場所はさっきの広場。

 オレのせいでどこかお店に入ることができなく申し訳なくも思う。

 その辺の事情も合わせて、ここ自由街の様子を報告した。


「――って、感じかな?」


 当然こちらの報告はオレからになる。


「ん、だいたい、あってる」


 ルーさんがこんなカンジだからね。


「袋の鼠、獣人族の方のお店なんてものがあったんですわね」

「それに鍛冶屋。『女子供は入るな』なんて、最っ低ね! ……ま、こっちの方がもっと最悪だったけど!」


 エミリーは貴族街から帰ってきてからずっとこんな調子である。

 一体、何があったのだろうか?


「えっと、じゃあそっちはどうだ――」

「さいっっっあくよ!」


 超しかめっ面のエミリーがかなり食い気味で答えた。

 しかしそれでは全然説明になっていないので、オレは改めてちゃんとした説明をミラにお願いした。


「貴族街では〝皇国騎士団〟という者たちの横暴が目に余りました」

「……聞いた事ない名前だね?」

「はい、私も聞き覚えがなかったのですが、どうやらつい最近できた組織のようです。リーフィさんがすごいお顔で言っていました」


 出来たのは本当に1、2か月くらい前。

 その間皇都へ来ていなかったミラも知らなかったようだ。

 構成員は貴族街出身の貴族のボンボンたち。豪華で派手な鎧を身に纏い、装飾だらけのゴテゴテとした武器を振り回しては好き放題、暴れ放題だと言う。

 貴族のボンボンと言う事もあって、何をやっても周りの者は何も言えない。

 親からの報復で、一家離散させられた家族もいるのだという。

   

「大体わかった。そいつらがエミリーに粗相をはたらいたんだ?」

「い、いえ! エミリーちゃんは私を守って下さろうとしただけなんです!」

「そーなの?」

「いーのよ。アタシがムカついただけなんだから」

「で、結局悪いのは?」

「「あの男よ!」ですわ!」


 二人が街を歩いていると、その皇国騎士団の連中がミラに絡んできた。

 初めは物腰丁寧にお茶の誘いをしてきたそうだが、ミラが断リ続けていたら相手の態度が徐々にエスカレート、次第に失礼な暴言を吐いたり、直接手を出してきたりした。

 で、ミラに代わって頭にきたエミリーがぶっ飛ばしたらしい。


「だってアイツ、何かあれば『キューシン、キューシン』ってエラッソーに!」

「エミリーちゃん、『一級市民』ですわ」

「なにその一級市民って?」

「そりゃ、あれよ。ほら……ミラ、説明ヨロシク!」


 エミリー、わかんなくて逃げたな。

 ま、オレもエミリーの説明はアテにしてなかったけどさ。


「私もリーフィさんに聞いた話なので恐縮ですが、一級市民とは、分かりやすく言えばこの皇都での身分の一つだそうですわ」


 皇都市民に与えられるという身分は4つ。

 門外街にしか住む事を許されない〝三級市民〟

 自由街に住むことが許される〝二級市民〟

 貴族街に住むことが許される〝一級市民〟

 神官や王族などの特別待遇となる〝特級市民〟に分けられるそうだ。


「二級以上の市民は納税の義務が課せられますが、城内に住むことを許され法律で保護されます。三級市民は主に納税の義務が果たせなくなった方や、地方からの移民、皇都で罪を犯し身分をはく奪された者などなど、色々な事情の方々がいるそうですわ」


 三級市民に納税の義務はないが、城壁内への侵入を禁じられ法で守られることもなくなる。

 一応ギルドタグを持っている冒険者は身元が保証されているので城内へ入ることは許されるが、中に家を持つことは出来ないし、皇都の法で守られることはない。

 それは逆に何か問題を起こしてもよほどの重罪にならない限り法には縛られないと言う事でもあるらしい。


「割としっかりしているようで、杜撰(ずさん)な制度だね」

「ですわね。市民と言えど、門の外にいる者たちが死のうが生きようが門の中の者には関係ない。悲しい事ですが、それが皇都の一般的な考え方だそうです」


 つまりあの城壁の外で何が起きようと、皇都の兵は知らぬ存ぜぬという態度を貫くと言う事か。

 あの子が襲われた時も衛兵は……いや、今はそれを思い出すのはよそう。


「って、ちょっと待って。エミリーはつまり一級市民とかって人をぶっ飛ばしたの!?」

「まぁ、そうね」

「だ、大丈夫なの!?」

「ほら、アタシ冒険者だし? 皇都の法になんて縛られないのよ!」

「そういう問題なの!?」

「さ、幸いと言っていいのかは分かりませんが、相手の方は気を失っただけでしたので……」

「そ、それなら大丈夫、なのかな?」

「さぁ?」


 いや、きっと大丈夫。

 そう思う事にしておこう。深く考えたら駄目だ。


「んで、交通の邪魔にならないとこに捨ててきたわ」

「せ、せめて避難させたと言いませんか?」

「なんで? ゴミは捨てるもんでしょ?」

「だ、大丈夫なんだよね?」

「多分ね!」

「お、おそらく……?」


 不安しか残らないが、まぁその男の命に別状はないみたいだし大丈夫さ。

 アハハハハ……はぁ。

 かと言って暴力沙汰を起こしたのは間違いないので、ほとぼりが冷めるまで二人はリーフィさんの店で匿ってもらっていたらしい。

 

「エミリー?」

「な、なによ! なんか文句あるわけ?」

「色々言いたい事はある……」


 やはり暴力沙汰は良くない。

 しかも相手は仮にも皇都の兵士で貴族のボンボンで、一級市民。

 今回はたまたま難を逃れたが、もし二人の身に何か起きてたらと思うと気が気でない。


「でも、よくやった! 褒めてしんぜよう!」

「え? 怒んないの?」


 結果論にはなってしまうが、悪い奴からミラを守ってくれたと言うだけで、全部帳消しにしていいくらいの活躍だ。

 今回は特別出血大サービスで、お咎めなしにしておこう。


「ミラを守ってくれてありがと。もし一緒にいたのがワタシだったら、無事にすまなかったかもしれないから……」

「そ、そう? ふ、ふん! ま、トーゼンよ/////」


 やはりエミリーに護衛を頼んでいてよかった。

 もしオレがエミリーの立場だったら、そんな無礼な奴ら簀巻きにし……おっと、これ以上は教育に悪いからとてもオレの口からは言えない。

 ただ、産まれてきた事を後悔しながら土下座して謝るぐらいにはぎったんぎったんにしてやったかな? 


「でも、そのせいもあってほとんど街は歩くことが出来なくなっってしまい……申し訳ありません」

「ううん、二人が無事ならそれに越した事ないよ」

「そ、そのかわりアレよ! リーフィに色々聞いて来たわ!」

「おー、エミリーもたまには……」

「ミラが!」 


 うん、しょせんはそうだろうと思ったよ!


「ん、エミ、やくたたず」

「ルーミア、アンタにだけは言われたくないわ!」


 仲良くじゃれ合っているルーさんとエミリーはさておいて、ミラはリーフィさんから聞きだしてくれた情報をまとめたメモ用紙を取り出した。


「実はこれは私も知らなかったことなのですが、今この皇都で実権を握っているのはどうやら教会ではないようです」

「違うの?」

「数か月前、時の教皇マーリン=ティンバー=レイク様が崩御された際、一切の政治的権利を今の王家に差し出した、との事です」

「ふむ……? と言う事は、今皇都の実権を握っているのはその王家なの?」

「はい。〝皇国騎士団〟のような輩がでしゃばっているのも、王政になって貴族たちが力を持つようになったことに原因があるようですわ」


 なんだかますますオレの知っている皇都からかけ離れている。


「現在この皇都を収めているのは、前王ラック=ボン1世の息子ラック=ボン2世。ただし、ラック=ボン2世は9歳とまだまだ幼く、政治の一切は臣下たちに任せているようですの」

「9歳って若すぎるでしょ? なんで即位できたの?」

「前王ラック=ボン1世が政権獲得後、すぐにお亡くなりになられたせいで、急な王位継承となった様ですわ」

「なるほど、不審な前王の死に、幼い王の悪徳側近。よく聞く政治腐敗の王道パターンだね」

「よく聞いちゃダメなんじゃない、ソレ?」

「んーん、物語の定番」

「話を続けますわね。―‐結局、教会は政治とは一切関わりのない宗教文化の象徴としてだけ存在しているようですわ。皇都の獣人差別や身分による格差が酷くなったのも王政、もっと言えばラック=ボン2世の側近たちによる政治が始まってからのようです」


 つまり皇都を何とかするには教会もそうだけど、その王政の方も何とかしなきゃいけないわけか。


「思った以上に問題だらけだね」

「ですわね」

「ん」

「むぅ……さっきからつまんない話ばっか」

「しょうがないでしょ? 皇都を変える為なんだから。それに楽しいことなんてそんな簡単には……」

「ふふん! それがあるのよ♪ ミラ! アレを出して!」

「あ! そうでした! クロさん、これをどうぞ」

「これは?」


 ミラがアイテムボックスから木箱を取り出す。

 見れば、〝クローディア御一行へ〟と書かれているが、これは一体なんだろうか?

 

「リーフィさんから預かってまいりました」

「それだけ聞くと嫌な予感しかしないのだけど」

「安心して驚きなさい! シェラさんからよ!」

「言葉の意味は分からないけど確かに驚いた! ホントに!?」


 ひさしぶりに聞いた懐かしい名前に、オレの沈んでいた心は急浮上した。


「……昨日皇都へパトが届けに来たみたいですわ」

「これをパトが……!?」

「はい。息も絶え絶えだったと、リーフィさんが爆笑されていました」


 小さ目ではあるが、荷物としてはなかなかの大きさがあるこの箱をパトが……。

 

(無茶しやがって……いや、シェラさんの指示か。可哀そうに……南無)


 オレは心の中で戦士ミニパトへ敬礼を捧げた。

 気を取り直して箱を開けたオレは、中に入っていた物を取り出していく。


「どれどれ……手紙と袋……中身は服? それから綺麗な小箱だね」


 手紙はシェラさんとシゲーロさんから一通ずつ。服の入った袋はオレたち4人それぞれに一つずつと、小箱はどうやらオレ宛みたいだ。

 服とかを開けるより、まずは手紙を読むのがマナーってもんだろうね。


「クロ! 手紙! 手紙なんて書いてあんのよ!」

「今読むから待っててよ。えっと、じゃあシゲーロさんの方から読むね。えー……」


 オレは一字一句違わず声に出す。


「〝た、たすけて……もうやすまそ…………〟」

「「「………………」」」

「………………すっ(手紙を無言でしまうオレ)」


 うん、シゲーロさんからの手紙なんてあったけ?

 そんなものナイナイ。


「じゃ、じゃあ手紙を読むね! わーなんて書いてあるのかなぁー!?」

「そ、そうね!」

「シゲーロさん、頑張ってください……」

「ん、子ども、楽しみ」


 オレはシェラさんの手紙を広げて読み始める。


「〝拝啓、お元気ですか? 私は元気です〟」

「……でしょうね」

「で、ですわね/////」

「ん、おさかん」

「ルーお姉ちゃん、多分正解ですがその表現はアウトです」


 みんなから一斉に納得の声が上がった。

 オレは苦笑いしつつ、続きを読み始めた。


『クロちゃんとの約束を守るために、私は旦那と共に毎日頑張っています。クロちゃんが旦那に持たせてくれた丸薬のおかげもあって、(一部表現が不適切なため検閲)……これなら、早く約束が果たせそうです。早くクロちゃんたちに自慢の娘を紹介したいなぁ、と旦那に毎晩枕元で囁いています』


 うん、生々しいのでその辺は大幅に割愛していこう。


『(大幅に中略)毎日が充実しているおかげで、私の創作意欲もどんどん溢れてきます。幾つか形になったので、お礼の意味も込めて贈らせてください』


 やたら丁寧な文調でシェラさんっぽくない気もするが……きっとアレだ。

 この手紙を書いたときはきっと賢者のようにすがすがしい気持ちで書いていたんだろうな、うん。

 服の説明はいつもの調子に戻っているようだし、特に問題はないだろう。

 

「手紙に書いてあるお礼とはこの服の事でしょうか?」

「だね。服の説明も詳しく書いてあるよ」


 オレとエミリーの服はほぼそのまま今着ている物。

 代えがあった方がいいだろうと同じ物を用意してくれたそうだ。

 新しいのは自分で着せたいとの事なので、早くその日が来ることを楽しみに待っていよう。


「んで、まずミラの服の説明だね」

「はい。とても可愛らしい服ですわ♪」


 ミラのは白い布で織られた上の服と膝丈くらいのスカート、タイツのようなインナーとマントが二着ずつだ。

 タイツはオレのスパッツとエミリーのニーソックスを足した感じで、素材も同じ物で編まれている。

 マントはオレのネコ耳フードと同じ素材だが、ミラのフードには猫耳が付いていないようだ。

 そして上下の服は一見するとニット地のように見えるが、毛糸を編んでいるのではなく、ニット地に見える布から作られているものだと分かる。

 袖がリボンで繋がれたようなデザインになっており、リボンを外せば取りはずしが出来るように作られている。

 それから首元に飾られたモコモコしたぼんぼり飾りがとてもチャーミングだ。


『ミラちゃんの服は【スィープ・ゴート】の毛皮で作ってあるわ。歩くだけで周囲の者をくっつけてしまうと言われるほど柔らかい毛並だからそれなりに強い衝撃も吸収してくれるはずよ。それからミラちゃんは弓士見習いだし、腕の保護や髪が邪魔にならないように工夫したのもポイントね』

「なるほど、袖は取り外してアームカバーに。首の飾りも取り外して髪をまとめるゴムになるみたい」

「ありがとうございますシェラさん。大事にします……」

「次はルーさんの服かな?」

「ん」


 ルーさんのは上下一体型の服と、やはりマント、そしてこちらもタイツだが網目がミラの物より若干粗い、いわゆる網タイツというせくすぃーなヤツだ。

 タイツとマントはミラのとほぼ同じなので説明は省略。

 服の方はと言うと、見た目は少しチャイナドレスっぽい感じで今ルーさんが着ている服に比べると大分露出面積は減っている。

 そう聞いて少しガッカリした諸君(オレ含む)、安心したまえ。

 新しい服は布面積が増えた分局所的なスリットが増えている。

 具体的に言うと、谷間が見える隙間があったり(通気性をよくするため)、背中がやや透ける素材になっていたり(通気性の良い素材を利用)、足の付け根付近に深いスリットが入っていたり(動きやすくするため)、とあふれ出るちらリズムがすごいのだよ。

 この服と網タイツが組み合わさった日にゃもう……ご飯三杯は行けるね!


『ルーちゃんの服は【スネーク・キング】の皮で作った状態異常耐性と隠密性のある服よ。攻撃や魔術による毒、麻痺、睡眠なんかの効果を中和する効果があるわ。ただし口から入った物には効果がちゃんと発揮されない場合もあるから気をつけてね。伸縮性に優れているから衣擦れの音なんかもしないし、まだまだ成長しているルーちゃんの身体にいつまでもフィットしてくれるはずよ』

「……成長、してるんですか?」


 オレは生唾を飲んでその豊かな双丘を見る。


「ん、成長期」


 ルーさんは誇らしげに胸を張る。

 これでまだ成長している、だと? スーサの錬金術師は化け物か!?

 驚愕の事実はさておき、ルーさんは貰った服を大層気に入ったようで、すぐに着替えようとしている。

 ん? 『着替えようとしている』?


「(ぬぎっ!)」

「わー!? ルーお姉ちゃんすとーっぷ! ここ外! 外ですから!」


 周囲に他の人の姿はないが、ここはいつ誰が通ってもおかしくない場所だ。

 慌ててオレは羽織っているマントでカーテンを作る。


「え、エミリーちゃんもマントで隠してください!」

「バカルーミア! アンタ〝ちゅーちちん〟って物がにゃいわけ!?」

「エミリーそれを言うなら羞恥心!」

「わかってるわよ! 噛んだのよ! ……かんでにゃいわよ!」

「噛んでるよ!」

「(ぬぎぬぎ)」

「だからここで着替えないでくださいってー!」


――3分後。


「ん、着心地、ないす」

「さいでっか……」

「それは、よかったですわ……」

「つ、つかれた……」


 ルーさんのマイペースは相変わらずでした。

 手紙はこれで終わりかと思いきや、まだ少しだけ続きがあった。


『それから最後に、小箱の中身はすばらしい物を旦那に持たせてくれたクロちゃんへのささやかな贈り物よ。大切に使ってね♪』

「――だって……なんだろう?」


 まぁシェラさんがわざわざ送ってよこすほどのものだ。良いものには違いない。


「わくわく、わくわ…………? うん(パタン)」


 箱を開けたオレは、中身を見てすぐ箱を閉じた。

 なんていうか、とんでもないモノが入っていたからだ。


「あの人は……!」


 スーサでの感動の別れなどがあったせいでしっかり失念していた。

 服飾の鬼、シェラさんと言う人はこういう人だった。


「こんなの絶対につけないからね! シェラさんには悪いけどこれは封印させてもらうよ」


 箱をそのまま[アイテム]に封印しようとオレが手を伸ばす。

 しかしその手を掴んで止める者がいた。


「え、エミリー?」

「クロ、せっかくシェラさんがくれた物を、一度も着けずにしまうなんて失礼じゃない?」

「い、いやでも……」


 オレがもう片方の手を箱に伸ばそうとすると、その箱をルーさんがひょいと取り上げる。


「る、ルーお姉ちゃん?」

「クロ、シェラの気持ち、無下にする、だめ」


 ルーさんがおもむろに箱を開くと、ミラがその中身を手に取る。

 その黒い狂気の塊を。


「み、ミラ! お願いだからそれをしまって!」

「わかりました」


 ミラの笑顔にオレは安堵する。

 ただし、次の瞬間開かれたミラの血走った目に、オレは底知れぬ恐怖を感じた。


「ただ、一度着けてみてからにしましょう」

「ミラ!?」

「いぎなーしー!」

「ん、さんせー!」

「満場一致、ですわね♪」

「いや、ワタシは反対! はんたっ――ちょ、まっ!」


 エミリーに羽交い絞めされ、両手をルーさんに掴まれてオレは完全に逃げ場をなくす。

 ゆっくりと、陽炎のように迫るミラ。

 その手に、シェラさんの産み出した狂気を携えて。


「クロさん、大丈夫です。痛くしませんから」

「痛いとかそういう問題じゃなくて! というかソレ着けたら絶対痛いヤツ……」

「クロ、おーじょーしなさい! ぷぷっ!」

「ん、覚悟する」


 エミリーの笑いを堪える声と、ルーさんの荒い鼻息の音だけがはっきりと聞こえる。


「や、やめ――」


 ミラの手に持つソレが、オレの頭に触れた。


「ぎにゃぁぁぁぁぁぁーーーー!?」


 そしてオレは一匹の獣となった。

というわけで引っ張ります。

獣になったクロ、その意味とは? そしてその運命とは!?

ヒント1、入っていた物はアクセサリーで、本体部分はカチューシャ。

ヒント2、色は黒で、クロの毛並、もとい髪と同じ色。

ヒント3、動く。

ヒント4、クロの言葉『着けたら絶対痛いヤツ』

さぁ、正解は一体なんなのか!? 次話更新を待て! ……すみませんどうぞお待ちください。

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