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黒の系譜  作者: 木根樹
黒の系譜―第二章
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黒の系譜02-07『丘の教会』

 サーカスから帰ってきた翌日の事です。

 お昼頃、オレたちの泊まっている宿に可愛らしいお客さんがやって来た。


「ここに〝くろーりあさま〟はいますかー?」

「ちがうよニー。〝くろーじなさま〟だよー?」

「ミーのほうがちがうよ! 〝くりーじあさま〟だよ! ……あれー?」


 宿の方に案内されて来たのは可愛らしい神官見習いの子どもたちだった。

 しかもぴょこぴょこと犬耳としっぽを動かす獣っ娘たちである。


「ふあっ!? なんだこの可愛い生き物はッ!」

「んとねー。ニーは、ニーなの!」

「ミーはミーだよ! おねーちゃんが〝くろーなさま〟?」


 オレは可愛らしく小首をかしげる少女たちの頭を全力でなでなでした。


「そうだよー。言いにくいよね、ごめんねー。おねーちゃんの事はクロでいいからねー♪」

「きゃー♪」

「くすぐったいよー♪」

「ただいm……クロ! アンタ、その小さい子たちどっから……まさか人さらい!?」


 三人できゃっきゃうふふしていると、走り込みから帰ってきたエミリーにドン引きされた。


「人聞きが悪い! この子たちはおねーちゃんに会いに来てくれたんだもんねー?」

「そだよー!」

「クロさまおねーちゃんにおねがいがあって来たのー!」

「アンタって子どもの前だと〝人に化ける〟わよね」

「それを言うなら〝人が変わる〟だよねー? エミリーはバカだねー?」

「「ねー!」」

「……クロ後で覚えときなさいよ」


 やっぱり素直な子どもたちは可愛いなー。

 ついつい餌付けしたくなり、魔力ドロップをあげてしまう。


「あまーい♪ こんなのおとうさまにももらったことないよー?」

「おいひー♪」


 二人の獣っ娘の満面の笑みに、オレもほっこり顔である。

 ……いや、何故君まで口を開けてこっちを見ているのかねエミリー君?

 三人で一緒にエミリーで遊んだあと(誤植ではない)、友達だという契約魔獣のブラックウルフたちを召喚してもらってのもふもふパーティーとなった。

 いやぁ、天国はここにあったね。

 もふもふを一通り堪能したところで、そういえばこの子たちはオレに用があって来たらしい事を思い出した。


「そういえば、おねーちゃんに何か用があったんじゃなかったっけ?」

「そうだった! ……でもなんだっけ?」

「んとねー……ミーたちのおうちにきてほしいのー」

「そうだった! おねーちゃん、おねがい。いっしょにきてー!」

「おうちって、丘の上の?」

「そうだよー!」

「きてくれないと、ミーたちおこられちゃうのー!」


 ふむ? この子たちは間違いなくあの丘の教会の子たちだろう。

 普通に考えるなら、あの男の差し金だろう。 


「きっとあのロリエロとかっていう親父のササニシキよ」

「わかってる。あとエミリー念のために言うけど、ロリエルね」


 ロリエロだったらなんていうか、反社会的な意味にしかならないもの。

 だがどうしたものか。


「おーねーがーいー(うるうる)」

「おねーちゃん……(うるうる)」


 あそこへ行くとなると、相当それ相応の覚悟を決めなくてはならない。

 ここは慎重に……

 

「(うるうる)」

「(うるうる)」


 しんちょうに……?


「クロ、どうすんのよ?」

「……うん! 行く行く行っちゃう!」

「やったー!」

「ありがとー! おねーちゃん!」

 

 うん、こんな可愛い子たちがあんなはげおy……ごほん、神官さんに怒られるのは可愛そうだからね。

 しょうがないよね!


「アンタって、案外ちょろいわよね」

「言わないで……でもエミリーには言われたくはない」

「にゃにおーっ!」


 後になって思えば、あの瞬間から罠に嵌っていたのかもしれない。

 そう、あのロリエルという男の巧妙な罠に……!



――――――



「来ちゃったねぇ……」

「来ちゃったねぇ、じゃないわよ」

「ミーたちの家だよー♪」

「あ、さーらー! ただいまー♪」

「おかえり、ミー、二ー。それからようこそおいで下さいました。クローディア様に、エミリー様」


 獣っ娘たちに案内されるまま丘の上の教会にやって来たオレたち。

 海人族の神官さん(耳の辺りがヒレになっていて、首筋にエラがある)に笑顔で迎えられ、本当に引くに引けなくなってしまった。


「あははは、どうも」


 ここは神音派の神官、ロリエルの本拠地である。

 つまりオレにとっては敵地、完全にアウェーだ。


「どうぞ、中でロリエル様がお待ちです」

「あ、あははは……ですよねー?」


 オレは覚悟を決め、教会へ足を踏み入れた。



―――――



「さぁどうぞお召し上がりください、クローディア様、エミリー様」

「ど、どうも」

「そう? じゃ遠慮なく」


 満面の笑みを浮かべテーブルの料理を勧める、禿げ面の神官を前に、オレは困惑の笑みを浮かべていた。

 目の前に出された料理は素晴らしく、言う事もない。

 エミリーなんて美味しそうに料理を頬張っている、というか君は食に対して節操がなさすぎだと言わせてもらいたい。


「おや、お気に召しませんでしたかな? やはり猫族の方には魚の方が宜しかったでしょうか?」

「すみません。この辺りでは中々魚類は手に入らないので。やはり木の実や野草の料理では……」

「あ、いえそういう事ではないんです!」


 申し訳なさそうに頭を下げる海人族の神官さんにオレは慌ててフォローを入れる。

 料理自体は、山で採ってきたのだろう木の実や野草を丁寧に調理した、美味しそうな料理である。

 まずそうだとかはまったくないので、気を遣わせても悪いし頂くことにしよう。


「美味しそうな料理ですね。いただきます……うまっ!」

「ほっ、お口にあった用なら何よりです。わたしにはこれしか出来ませんから……」


 神官さんは謙遜しているが、どの料理も丹精込めて作られている。

 これしか出来ない、なんて言わずもっと自信を持ってもいいのに。


「クロ『うまっ!』はないでしょ? もっとお上品にしなさいよもう……たいへん美味しゅうございマッハ♪」

「…………エミリー。無理したって何にもならないよ?」

「にゃによっ! クロ、ゴメンあそばせ!?」


 そう、オレが困惑していたのは他でもない。

 目の前で厭らしい笑みを浮かべている神官、ロリエルのことでだ。


【ロリエル=ド=コンロリー:Lv.32

 種族:人族

 年齢:42歳

 職業:神官

 メイジン村の教会で神官を勤める神音派の男。獣人族の子ども教会に帰依させ、修業させることを生き甲斐とする。

 この度スーサでの奇跡を目撃した事から、教皇より直々に聖女召喚の任を賜った】


 相手は超の突く危険人物(オレに対してだが)、不用意な発言はすぐさまオレのバッドエンドルートへ直結しかねない。

 慎重に慎重を重ねたうえで行動しなくては。

 その結果、こうして夕食の席に招かれてしまったと言う訳だ。

 

「もぐもぐ……(今はとりあえず、こうして食事をしながら、相手の出方を伺おう)」


 料理を食べるオレを、じっと見続けているロリエル。

 やたらねちっこい視線を受け、どうにも食べづらい。


「……ごくん。あの、見られてると食べづらいんですが」

「あぁ、すみません。あまりにも食べ方が可愛らしかったので。ぐふふふふ」

「ぶほっ!? ごほっ、ごほっ!」

「だ、大丈夫ですか!? こちらをお飲みください!」


 オレは神官さんから水を受け取って飲み干す。


「ぷは! 死ぬかと思った……」

「ぐふふふ! 慌てるクローディア様もなかなか……でゅふふふ!」


 ほんとマジこのロリエルなんなの!?

 オレは若干睨みながら、また料理を食べ始める。

 

「さて、では本題といきましょうか?」

「むむむぐぐっ!? ごほっごほっ! ……ほ、本題とは何でしょうか?」


 何度でも言おう。コイツは、オレの、天敵だ。

 先ほどの言い草から別にオレの正体に気付いている様子はなさそうではあるが、この男が油断ならなそうな人物なのは確かだ。

 ここは慎重に出方を伺わなくては……。


「クローディア様は、モーミジヤ教に入信されるおつもりはありませんかな?」

「ぶおっふぉぇ!」

「ちょっとクロ汚いわよ!」


 ド直球キター!?


「おや、これは申し訳ありません。それほどまで驚かれるとは思いもしなかったもので」

「い、いえこちらこそお見苦しい物を」

「それで、どうですかな?」

「どうですかな、と言われましても」


 何度でも言うが、教会はオレというより〝クロード=ヴァン=ジョーカー〟にとって敵に他ならない。

 そのオレが教会に入信? いやいやいやいや、どう考えてもそれはない。

 なぜ自ら死地に赴くような真似をしなくてはならないのか。

 かといってこれ見よがしに入信を断ると不要に怪しまれることも考えられる。

 とにかくこの場はお茶を濁しつつ、上手に立ち回ろう。


「な、なぜそのようにお考えられたのでしょうか?」

「そうですね。まずはご覧ください」


 ロリエルが手を鳴らすと、奥から神官さんたちがぞろぞろとやってくる。

 犬耳、ウサ耳、キツネ耳、翼のある子から、蜥蜴のような鱗のある子まで、全員が全員体に特徴を持つ獣人族や海人族、翼人族の女の子たちである。

 1、2、3、……10人くらいはいるだろうか?

 皆おそろいのチョーカー(モーミジヤ教のシンボル、モミジを象った銀飾りがあしらわれている)を付けている。

 ひょっとすれば、あれが神音派の証なのかもしれないな。

 よく見れば、中にはニーちゃんミーちゃんたち獣っ娘もいて、オレに気づいて可愛らしく手を振っている。


「皆さん、多種族でいらっしゃる?」

「はい。皆、私の元で修業中の者たちです」


 ロリエルが手を降ろすと、みんな礼儀正しく礼をして奥へ戻って行った。


「皆、訳あって私に預けられた者や、親をなくした者、中には親に捨てられた者も居ります」

「みんな、ですか?」

「そうです。それだけ人々の異形に対する目は厳しい。相手が自分たちより弱い子どもともなれば、容易に石を投げ、蔑み、蔑視するのです」


 そんなまさか、と思いたかったが横にいたエミリーもそれを肯定する。

 

「胸くそ悪いけど、世間一般ってヤツででは割とあるのよ獣人族差別。『獣人族はしょせん獣だから人族より下等だ』って子どもみたいな考えがね。この辺ではあんま見ないみたいだけど、北の大陸(ノーザニア)では結構当たり前のように思われてたわ」


 しかしエミリー自身はそれに納得がいっていないようだ。


この大陸(ウェステリオ)でもそう。皇都に行って見なさい。街中で〝獣人族お断り〟なんて看板しょっちゅう見かけるわ……あーっ! 思い出しただけで腹立ってきたわ……ムカムカする!(ガツガツ!)」


 エミリーはそれ以上何も言いたくなくなったようで、やけになったように料理を食べ始めた。

 エミリーは以前皇都にいたらしいから、本当の事なんだろう。


「エミリー様の仰る通り、皇都にも獣人差別は蔓延しております。……嘆かわしい事です。ですから私は彼女たちのような者たちを集め、獣人族でも女神の加護が受けられるようにと、修練を与えているのです」


 なるほど、この人なりに色々と理由があると言う事はよく分かった。

 話を聞く限りでは、確かに立派な人物のように思えるかもしれない。 


「ふむ……でもそれでどうしてワタシを入信させる事につながるんです?」

「決まっております!」


 だがオレはどうしてもこの男を信用できない。

 生理的に受け付けない、と言ってしまえば元も子もないのだが、どうにも好きになれないのだ。

 この男の視線は、笑みは、酷く(いびつ)で気味が悪い。


「アナタを救いたいのです! 偽りの家族、偽りの愛、偽りの平穏から!」


 ロリエルは興奮して、目を充血させながら立ち上がった。

 先ほどまでの差別を嘆いていた時と同じ瞳で、しかし狂気に染まりきった色で。


「話は村人から聞いております! チェスター殿の家に拾われたのでしょう? それはさぞや肩身の狭い思いをしたでしょう! 相手は領主、家族と持て囃されながらも使用人の如き扱いを受けたこともあるはずだ!」

「……それは、村の人たちがそうおっしゃってのですか?」

「いいえ! 彼らはアナタが領主様の身内だとしか……ですが! そこから先は言われなくても簡単に想像できることでしょう?」

「それは、アナタの勝手な推測です。チェスターさんはワタシに本当に良くしてくださいました」

「それはきっと単なる同情にすぎないでしょう? 自分より惨めで弱いアナタを飼う事で、己の自尊心を満たしていたに違いない!」


 この男は、果たしてあの身内に甘くて、イケメンで、でも奥さんに頭の上がらない優しい領主のチェスターさんの、何を知っているというのだろうか?

 おそらくこの男は〝人族は獣人族を差別する物〟という固定観念に捕らわれているのだろう。

 だがそれは人族の差別を嘆いていたかのように思えるこの男こそが、実は一番彼らを差別しているということではないのか。

 

「しかもあの家の娘、ミラ様と言いましたかな? 彼女が気まぐれで旅をしたいなどと言い出した物だから、こんな危険な旅に無理矢理連れてこられたというではないですか! しかも彼女はあの……あぁ、名を口に出すだけでも穢れてしまうあの神への叛逆者に心酔していると言う噂もあるではありませんか。そのような者の元に居ては、アナタもいつ気が触れてしまうか分からない! そんな者のせいで若者の未来が閉ざされるなど、あってはならない事だそうでしょう!?」

「失礼ですが、ミラと会ったことは?」

「ありませんよ? ありませんが……火のないところに煙は立ちません! ですから噂になると言う事はつまりは彼女がそういう人間だと言う事でしょう!? 疑わしきは罪! 罰せられていないのは我らが女神が寛大だからです!」


 一体この薄汚い笑みを浮かべる禿親父は、心配性だけど芯が強くて、確かにクロードの話をする時の雰囲気はちょっと心配だけど、誰にも分け隔てなく優しく接することが出来るミラの、何を知っているというのだろうか?

 クロードに関わるだけで罪、それ以外の人間性も何もかも全否定なんて狭量のどこが寛容といえるのか。


「ですが私は違う…………私ならば、アナタを救える。いや、私しかアナタを救えない」


 偉そうに高説を垂れるこの禿親父は、一体どこのどいつ様なのだろうか?

 オレは少し、いやかなりムシャクシャしてきた。

 それは隣でフォークの手を止める赤髪ツンデレ一直線娘(誉め言葉)も同じだった。


「……クロ、ちょっと料理持ってて」

「おーけー」


 オレがエミリーに言われるままテーブルの上に残っていた料理の皿を持つ。

 するとエミリーはにっこりと、ただし完全に据わった目で、口元をひくつかせたまま思い切り手を振り上げた。


「おや、エミリー様どうされましたか? まさか料理がお口にあいませんでし……」

「ぅだらっしゃぁっ!」

 

 こちらへ手を伸ばしたロリエルの目の前で、バコーン!という凄まじい音を立ててテーブルが真っ二つになった。

 エミリー、いい仕事をしてくれる。


「ひぃっ!?」


 ロリエルは驚いて、尻から後ろに倒れた。

 倒れた拍子なのかエミリーの剣幕にやられたのかは分からないが、ローブの股間部に汚い染みが出来ている。別に知りたくもなかったけど。


「不愉快だわ。帰る」


 口にフォークを加えたまま吐き捨てるように言ったエミリーはそのまま部屋を出て行った。


「ど、どうかなさいま……!? ロリエル様!? なにが……」


 大きな物音に何事かとやって来たのは、鱗のある神官さんと海人族の神官さんである。

 彼女たちは、部屋の惨状を見て一瞬戸惑ったが、それでもすぐに鱗のある神官さんが腰の抜けて立ち上がれない禿親父に肩を貸し、海人の神官さんは壊れたテーブルを片づけ始めた。

 後から他の神官さんたちもやって来たので、オレは彼女たちに皿を渡してエミリーの行為を謝罪した。


「料理はとても美味しかったです。ありがとうございました。テーブルは申し訳ありませんが、コレを修理代に充ててください」


 オレが神官さんたちに丁寧に頭を下げ、少し多めに銀貨を残して部屋を後にする。


「お、お待ちなさい!」


 後ろから、どこかのどいつ様のありがた迷惑な喚き声が聞こえてくる。


「後悔するぞ! 神の御心に背いた事を! この私の慈悲を受けなかったことを!」


 脂肪で包まれた醜い体を汚い脂汗で濡らした男に、オレは答える。


「どこの誰かも分からない部外者が、オレの家族を悪く言うんじゃねぇ! ……その醜い脂肪の一片まで燃やし尽くすぞ」

「ぶひぃっ!?」


 少女にしては低くドスの聞いた声で、オレは本心をぶちまけた。

 ロリエルは一瞬呆けたが、すぐに顔面を薄汚い笑いで染める。


「ぐふ……ぐふふふふ! いい、いいぞその顔! ただの小娘かと思っていたが、とんだ食わせ物だ! ゾクゾクする! お前も、あの小娘も! いずれ私が救ってやる! 私の物になりたいと、泣いて懇願させてやる! でゅふふふふふふっふふふふ……ぶひゃひゃひゃひゃひゃっひゃ!」


 オレはその戯言を聞き流して、さっさと教会を出た。

 入口ではエミリーが待っていてくれた。


「遅かったわね。なんか言われたの?」

「さてね? 生憎と猫の言葉は分かるけど、(オーク)の言語は分からないからね」

「言うじゃない」


 エミリーはフォークをぷっ、と吐き捨てると頭で腕を組んで歩き出した。


「やりすぎたかしらねー?」

「ううん、スカッとした。ありがと」

「べっつにー? アタシがムカッとしただけだしー? アンタの為じゃないわよ」

「じゃあこれは独り言。ありがと」

「ふん/////」

「あの!」


 オレたちが振り返ると、立っていたのは海人族の神官さんだった。

 彼女は思いつめたような表情で何か言おうとしているが、結局口をつぐんでしまう。

 気まずくなる空気に、代わりに口を開いたのはエミリーである。


「……アンタら、よくあんな親父のとこに居られるわね」

「そうですよ! 無理してあんな所に居なくたって!」

「……それも、神の試練ですから」

 

 オレたちは軽口のつもりで言ったのだが、神官さんの表情は一層暗くなる。


「わたしたちは、わたしたちの神を捨てられないのです。わたしたちは神の僕。親を亡くしたその日に神にこの身を捧げると、誓ったのです」

「でも!」


 神官さんはチョーカーの飾りを握りしめて微笑むが、その瞳は、何かを悟っているようにも、あきらめているようにも見えた。


「ここが。いえ、もうここしか、わたしたちの帰る場所はないんです」

「あの……!」

「それでは、わたしが戻らなくてはあの子たちが怒られてしまうかもしれないので」


 オレの制止も待たずに、神官さんは教会の中へと戻って行った。 

 オレもエミリーも、やりきれない思いでいっぱいだった。


「クロ、あのままでいいと思う?」

「本人たちがああ言っている以上、悔しいけど何も言えない」

「じゃあアンタの気持ちとしては?」

「どうにかしたい、けど難しいかも」

「そうね」


 実際問題として、彼女たちを〝救う〟くらいなら簡単だろう。

 だが一方的に〝救う〟事では問題を表面上しか解決できない。

 それこそ、結局はロリエルとやっていることがほとんど変わらないだろう。

 しなくてはいけないのは彼女たちが、本当の意味で〝救われる〟事だ。

 オレたちが押し付けるんじゃなく、彼女たちが自分たちで〝救われる〟道を提示する事、それが多分本当に必要な事だ。


「考えるのは任せるわ。アタシそういうの苦手だし」

「もう、エミリーは投げやりだなぁ」

「その代り、殴るとか、蹴るとか、叩き割るとか、そういうのは任せなさい。さっきみたいに」

「うん、頼りにしてる」


 オレはエミリーを拳をくっつけ笑いあった。


「さて、そっちの問題もそうなんだけど、さっきの豚神官のセリフ……ちょっと気になるかも」

「アンタも言うわね……で、なんて言ってたの?」

「んとね、『お前も、あの小娘も! いずれ私の物になる!』だって。まるでオレ以外にも獲物がいるみたいな言い方だった」

「げ、アタシも狙われてんの? ……うぅ寒気してきたわ」


 普通に考えれば、エミリーを狙っているかのように聞こえる。

 だがあの男の獣人族への執着具合を考えるともしや……


(なんにせよ、明日も大変な事になりそうだな……やれやれ、この世界はホントオレを退屈させてくれないよ。嫌と言うほどに)


 オレはため息をついてこのクソッタレな世界を想った。

ロリエロ……悪意を感じるまちがえ方ですね。

ちなみに教会にいるのは、

犬耳っ子2人(5歳)

ウサ耳っ子(8歳)

キツネ耳っ子(8歳)

羽っ子2人(5歳)

トカゲっ子(16歳)

海人っ子2人(4歳、5歳)

海人族の神官さん(18歳)

です。見事にロリっこばっかりですね。


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