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黒の系譜  作者: 木根樹
黒の系譜―第一章〝黒の目覚め〟
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黒の系譜01-番外編02『未来ある翼たち2』

さあ紙芝居のはじまりはじまりー♪

 というワケで紙芝居当日。

 準備を整えて広場までやって来たのだが……


「な、なんかすごい人がいるよ?」

「これは予想以上ですね。私も少し緊張してきましたわ」


 午後の暖かい陽気に包まれた広場にはたくさんの子どもたちと親御さん、あと通りすがりの人々と、予想していたよりも多い人数が集まっている。

 オレたちが出ていくと暖かい拍手で迎えられた。


「どーもどー……も?」


 その中には当然、わくわくしながら待つこの間の子たちと、むっつりしているアーノ少年。

 あと、なぜか最前列で子どもに混じって瞳を輝かせるエミリーの姿があった。

 滅茶苦茶良い笑顔ではしゃいでいるエミリーにオレは尋ねる。


「ねえエミリー。なんでここにいるのさ?」


 エミリーとは午前中に会っている。

 ラムダさんとの特訓を終えたエミリーは紙芝居の打ち合わせをしていたオレの部屋までわざわざやってきて、人の短パンを強引にひっぺがしていったのだ。

 あまりの剣幕にちょっとちびって……否、ビビッてしまった。

 おかげでこっちは朝っぱらからレギンスを洗濯した上で、丈の長いスカートに着替え直してこなくなったのだ。

 レギンスが無かったらいつもの服だと下着が見えちゃうからね。

 

「エミリーのせいでこっちは下がスース―してしょうがないんだよ? 『とても大事な用事があるけど下の替えがない』って言うから泣く泣く貸してあげたのに……納得のいく理由を教えてもらいたいんだけど!」

「ば、バカじゃないの!? あの紙芝居を見るのに汗だくなまま見れる分けないじゃない! 宿に戻って着替えてきたのよ!」


 とは容疑者Eの供述である。


「むぅ……」


 そう言われると嬉しいような、少し複雑な気分だ。

 

「でもだったらわざわざオレから奪わなくてもシェラさんとこ行けばよかったじゃない。服屋さんなんだから」

「……アンタはアタシにあの魔境へ一人で行けと?」

「……うん、ゴメン」

「いいわよ。ってか、服取りに行くときは付いてきてよね。親友」

「おーけー。死ぬときは一緒だぜブラザー」

「誰がブラザーよ。ベストフレンドといいなさい、バカ」

 

 その内依頼していた服を取りに行かなくてはいけない事を思い出し、どんよりするオレとエミリー。

 しかし広場をよくよく見回すとそこにはシェラさんの姿もあった。

 なにやら手に箱みたいな怪しい道具を持ってこちらに『バチコーン☆』とアイコンタクトをしている。全く何の合図かわからない。


「うん、まぁ。短パンは今度洗って返してね」

「わかってるわよ! その……ありがと(ごにょごにょ)」


 ここでツンデレさんに何か言ってもオレの短パンは返ってきそうにないので、諦めることにした。

 

「クロ様、そろそろ始めてもいいのではないでしょうか?」

「うんそうだね。それではみなさんご静粛にー!」


 オレはにぎわっている人々に一声かけて、

ぺこりとお辞儀をする。


「これから第1回〝かみしばいの会〟を始めます!」


 広場が盛大な拍手に包まれる。

 オレはミラに合図を送ると、ミラが数名のメイドさんに目配せする。


「えっと、始める前にギルドのケーナさんからお菓子をいただいてますので、お配りします。といってもあまり数はないのでお子様優先になります。ご容赦ください」

「わー♪」

「おかしだー!」

「おかしちょうだいー!」


 オレが言うやいなや、子どもたちが元気に立ち上がってオレたちの前に走りよってきた。


「はーい。順番ですよ。並んでくださいね」


 ミラが言うと、子どもたちは素直に並び、お菓子を受け取っていく。

 それと一緒にオレ特製のガリネジュース(1000倍希釈)を笑顔で受け取りお礼を言って席へ戻っていく。

 そこにはむくれっ面のアーノ少年もいた。


「なんだ。お菓子はいらないとかあれだけ偉そうに言っといて結局貰いにきたの?」

「ちがっ! これはノノの分だ!」


 ちょっと意地悪を言っただけなのに。すぐ真っ赤になって言い返してくる。


「じゃあ、これ」

「なんだよ。オレはいらないっていってるだろ!」


 オレが二人分のお菓子とジュースを渡すとアーノ少年はぷんすかと怒り出す。


「いい? もしアーノ君が一人分しか持っていかなかったらノノちゃんが遠慮しちゃうでしょ?」

「それは! ……そうかもしんねえけど」

「食べないならノノちゃんにあげてもいいから、持っていきなよ。でもせっかくケーナさんがみんなのために作ったんだから、食べてくれるとうれしいけどね」

「……! ふ、ふん! だったらしょうがねえからもらってってやるよ」


 アーノ君はぶんどるように二人分のお菓子をとって戻っていった。

 ちょろいな少年、エミリーといい勝負だよ。

 そしてそのエミリーだが、


「というかエミリーの分はないよ?」

「にゃ、にゃによ! じょうだん、冗談に決まってるじゃない!」


 なぜかちゃっかりと最後尾に並んでいたエミリーにオレが告げると、エミリーは肩を落として戻っていく。

 でもエミリーはあのアーノ君を連れてくるきっかけを作ってくれた立役者でもあるし、しょうがない。


「エミリー、あーん」

「……? あーん……むぐっ!?」


 あまりにかわいそうなので試作品の魔力キャンディ(仮)をエミリーの口へ放りこんだ。

 これはリカムポーションを魔力ドロップでコーティングした、言ってみれば簡易ポーションである。

 回復量は少ないが、手軽に回復できる上に甘くておいしいし、ちょっと魔力も回復するという優れものだ。

 一応回復効果はないがガリネ味のやつもあるので、将来的にはお菓子として売り出すのも悪くないかなと目下計画中である。


「どう?」

「も、もにゅもにゅもにゅにゅ♪」

「おっけー。わかったから無理にしゃべんなくてもいいよ」


 幸せそうなエミリーの表情でだいたいわかった。中に入っているのがポーションとも知らず、キャンディをなめるエミリーにほくそ笑みながら、ミラにメイドさんたちへ指示出しをお願いする。


「えっと、お子さま以外の方にはリカムティーを用意していますので、どうぞ飲みながら見てください」


 全体に飲み物が行き渡ったのを確認して、オレとミラは紙芝居を取り出す。


「で、でわはじめたいとおもいましゅ……ます!」

「はい、〝ゴブリンでもわかる! レベルアップの仕組み〟はじまりはじまりー♪」


 こうして緊張して噛み噛みなオレと、小慣れた感のあるミラの挨拶とともに紙芝居はスタートした。



―――――



「――こうして、勇者は初めてレベルアップしましたとさ。そして、ここから勇者の物語が始まっていくのです、つづく(上擦り声)」


 オレが最後の行を読み終えると、広場は温かい拍手と子どもたちの歓声や泣き声でいっぱいになった。


「うわーん! ゴブすけー!」

「ゴブすけは、ゆうしゃのためにぎせいになったんだよ……いいやつだったのに」

「ゆうしゃさまのばかー!」

「ちがうよ! ゆうしゃさまだってつらかったんだよ! だってないてたもん!」


 子どもたちは思い思いにこの紙芝居を感じ取ってくれたようだ。

 ひとまずは大成功、と言っていいだろう。


「うぼぁー!」


 こらエミリー君、感動したのはわかるけど、女の子が涙と鼻水を一緒に垂れ流すのはみっともないからおやめなさい。


「ふ、ふん! やっぱりコドモダマシじゃんか! ぐすっ!」

「おにいちゃん、これつかいなよ」

「けっ! っちーん!」


 どうやらあの兄妹も気に入ってくたようだ。アーノ君も文句を言いながらも、目に涙を浮かべている。


「ねぇ、つづきはー? つづきはどうなるのー!」

「ゆうしゃさまどうなっちゃうのー!?」

「きになるー! ちょうきになるー!」

「ぞくへんきぼうー!」


 どこかで誰かが言った言葉を皮切りに、続きを望む子どもたちの声があちらこちらから聞こえてくる。

 オレとミラはお互いに顔を合わせて微笑んだ。


「じゃあ続きが気になる人、手をあげてー!」

「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」


 子どもたちが元気に手を挙げる。

 子どもだけじゃない。そこにいたたくさんの大人たちも手を挙げてくれている。

 エミリーに至っては両手を挙げている。

 ふっ、オレの名演技にみんなすっかり虜になってしまったようだ。。


「よし、じゃあそんな君たちにプレゼントです」


 オレの合図でミラが取り出したもの、それは……


「じゃーん! スタンプカードー!」

「なにそれ-?」

「よくわかんないけどスゲー!」


 子どもたちはミラが持つソレに興味津々である。


「これはね、かみしばいの会に参加したら貰えるスタンプを押すためのカードなんだ。……こうやって、ぺったん、っと」


 オレがカードにスタンプを押すと、子どもたちから歓声が上がる。

 ふふふ、子どもというのはこういうモノが好きなんだよねー。

 オレもスタンプ欲しさに頑張って夏休みはラジオ体操に通ったものだ。


「それで、このカードがスタンプでいっぱいになったら、特別なプレゼントが貰えまーす!」

「「「「「「「「「「わー♪」」」」」」」」」」


 プレゼントの候補はいくつかあるが、ケーナさんと計画しているのは新米ギルドタグだ。

 例の未成年用ギルドタグをギルドへの登録はせずに渡す、というものだ。

 当然ギルドタグとしての効果は持たないが、いずれ登録の際には使えるし、そして何より誇らしいだろう。

 それはまぁ後々煮詰めていくとして、今はこのスタンプカードである。


「じゃあ欲しい子は並んだ並んだー!」


 オレが言うと、我先にと立ち上がる子どもたち、すぐにオレとミラの前には長い列が出来上がった。


「はいどうぞ」

「ありがとー!」


 最初のスタンプが押されたカードを受け取った子どもたちは、胸にかけてお互いに見せ合っている。

 その様子をほっこり眺めていると、どうやら例の問題児君がやってきた。


「ふふん♪ 来たなアーノ少年。それにノノちゃんも♪」

「おねえちゃん、ノノにもカードちょうだーい!」

「はいどうぞ」

「ありがとー♪」


 オレがカードを渡すと、ノノちゃんははソレを受け取って自慢げに胸にかけた。

 アーノ少年はそれをちらちらと羨ましそうに見ながら、でも自分からは欲しいと言えないのか相変わらずムッツリと立っている。

 しょうがないので、オレは手づからツンデレ少年の首にカードをかけてやる。


「なっ/////」

「最後までちゃんと見てくれたお礼。受け取ってくれるでしょ?」


 オレがニッコリと微笑むと少年は耳まで真っ赤にして、口をパクパクさせている。

 なんとなくその様子が初々しくて可愛かったのでつい頭を撫でてしまうと。


「――っ! こ、子どもあつかいすんな!」


 照れ隠しだろう叫び声を上げながら、アーノ少年は勢いよく両手を振り上げた。

 そう、オレのスカートめがけてである。


「あれ?」←アーノ君

「あ」←オレ

「まっ」←ミラ

「?」←ノノちゃん


 アーノ君によってめくり上げられたスカートの中身、そこにはふりふりレースがあしらわれた純白の布があった。

 うん、そりゃ短パンもレギンスも穿いてなかったら、そうなるよねー。

 

「な、ななななななんでズボンはいてないんだよー!」


 アーノ少年は顔を真っ赤にして走り去っていった。

 女子のパンツを一枚見たくらいであの反応、初々しいなー。

 でも最初にスカート捲りした時は短パンを履いている事に文句を言っていたくせに、まったく訳が分からないな。


「ん。クロ、きょうもきゅーと」


 そしてどこからともなく現れたルーさんに抱え上げられる。

 うん、いつものかんしょ……事だからもう動じたりしないよ。

 なんで抱きかかえられたのかとか、なぜ頬を朱に染めているのかとか、色々突っ込んでも無駄だって分かってるから、とりあえず聞きたい事は一つだ。


「ルーお姉さま、どうしてここへ?」

「クロ、見守る、お姉ちゃんのつとめ」

「さいでっか……」


 もうホントどこから突っ込んでいいやら。

 にしても広場の人は一通り見ていたが、ルーさんがいたのは今の今まで気がつかなかった。

 恐るべき隠遁スキルである。


「クロちゃーん!」

「わぷぁっ!」


 そして今度は前から抱きすくめられる。

 な、なんという桃源郷!

 これが伝説に聞くおっ×(ピー)いサンド……!


「もがもが!?」


 なんて言ってる場合じゃない!

 死ぬ! これはマジで息できない!

 圧死する!


「く、クロ様が死んでしまいます! お二人とも離れてください!」

「ん、しかたない」

「あら、ごめんねー」

「ぷはっ!」


 シェラさんが離れ、ルーさんは大人しくオレを降ろしてくれた。

 ミラが二人を引き離してくれなかったら、本当にやばかったかもしれない。

 そんなこんなでオレを幸せ殺そうとした犯人はシェラさんだ。

 手に持った怪しい箱の中身をルーさんに見せて、何か確認している。


「どう? これなんてよく撮れてると思わない?」

「ん、ないすシェラ」

「そんでさっきの決定的瞬間も……♪」

「――っ! 買った!(ぽたぽた)」

「毎度あり♪」


 シェラさんとルーさん(鼻血中)の間で不当な取引が行われている気がするが、今のオレにそれを覗き込むだけの身長はなかった。

 ……うん、毎日牛乳飲もう。


「おねーたま?」


 スカートのすそを引っ張る小さな手は、ノノちゃんである。

 ノノちゃんはルーさんを指さしながらしきりに『おねーたま?』と聞いてくる。


「そうだよ。ワタシのお姉さま」


 とオレが答えると、ノノちゃんは少し考えた後、オレを指さして、


「ノノのおねーたま!」


 と嬉しそうに笑った。


「――っ! なにこの可愛い生き物!」

「おねーたま、くるしーよー♪」

「うーん、良い笑顔♪」


 オレとノノちゃんがきゃっきゃきゃっきゃと戯れていると、その様子をシェラさんが手に持っていた箱でパチリ、と治めた。

 あの箱みたいなものはカメラ的な何かだったようだ。

 と言う事は、あの二人の間で行われていた取引は……うん、と考えたら頭が痛くなってきたから、考えない様にしよう。

 紙芝居成功してよかったなーあははは。

 


―――――



 そしてなんやかんやでかみしばいの会の最終日。


「こうして勇者は魔王を倒して、伝説となったのでした。めでたしめでたし」


 オレが物語の終わりを告げると、広場はとても温かい拍手に包まれた。


「ゆうしゃさまー! よかったー!」

「まさかごぶすけがあんな……!」

「ごぶすけまじかっけー!」

「うぼぁーっ!」

「おわっちゃやだー!」


 一部、大きいお友達(お子様レベル)の叫び声が混じっていたが、おおむね子どもたちには好評だったようで何よりだ。   


「じゃあ最後のスタンプとキャンディをあげるよー! みんな並んでー!」

「「「「「わー!」」」」」


 オレとミラはちゃんと並んでいる子どもたちのカードにスタンプを押していく。

 それと同時に魔力キャンディの詰め合わせもプレゼントし、魔力育成にもこっそり一役買ったりする。

 そしていつものように最後尾、ノノちゃんとアーノ君が並んでいた。

 結局アーノ君は文句を言いながらも最終日まできっちりと参加してくれた。


「おねーたま、スタンプください!」

「はいどうぞ♪ それからキャンディもね」

「ありがとー!」


 小さな胸を精一杯張ってカードを自慢するノノちゃんの頭を『よく頑張ったね』と撫でてあげると、彼女はオレにひしと抱きついてきた。

 うーん、ホントに可愛いなぁもう!

 あ、でもオレは断じてロリコンではないよ?


「ん!」

「うん?」

「……ん!」

「あ、ごめんごめん。アーノ君も、はい。これで全部だね」


 それに引き替えこの兄のかわいげのなさと言ったら……まぁ思春期の男の子なんてこんなもんかもしれないな。

 オレは全員にカードが行き渡った事を確認すると再び子どもたちに声をかける。


「おめでとう! これでみんなはめでたく冒険者見習いとなりました!」


 オレの発表に、子どもたちは頭にクエスチョンマークを浮かべている。


「はい! みならいってなにですかー?」

「うんうん♪ いい質問だね。じゃあ逆に質問だけど、冒険者になるには何歳にならなきゃいけなかったかな?」

「「「「16さいー!」」」」

「うん正解」


 こどもたちの元気な答えに、紙芝居で教えた知識が根付いていると実感する。


「じゃあ、大人の冒険者の人が許してくれたら、子どもでも登録できるのは?」

「えっと、みせ……みせ……?」

「みせーじん?」

「みせーねんだよー!」

「ちょっと難しかったかな? そうだね、未成年冒険者登録っていうんだよね」


 オレが合図をすると、木箱を抱えたケーナさんがやってきた。


「見習い冒険者っていうのは、この未成年冒険者だけが持つことが許されるこのギルドタグを特別に持ってもいい子たちのことだよ!」

「よくわかんないー!」

「どうなるのー?」

「もっと分かりやすく説明しなさいよね!」

「エミリー君お黙りなさい」


 ぶーたれるエミリーは置いておいたとして。

 いくら紙芝居で分かりやすくしたからと言って平均年齢6歳くらいの子どもたちに、そういったシステムとかの説明はちょっと難しかったかもしれないな。

 

「つまり、すごい! って事よ」

「「「「おー!」」」」


 ケーナさんのかなり噛み砕いた説明に、子どもたちは大っ興奮! である。

 さすが2児の子を持つお母様、お子様の扱いに慣れていらっしゃる。


「じゃあ欲しい人はスタンプカードと交換だよー!」

「「「「「わーわーきゃーきゃー!」」」」」


 子どもたちがケーナさんの前に一斉になだれ込んでいったので、オレとミラはちょっと慌ててしまったが、そこはさすがベテラン受付嬢。

 見事に子どもたちをさばいていく。


「あ、オレこれにする!」

「あたしはわんちゃんー♪」

「ほし! ほしがほしいー!」

「クロおねちゃんとおそろいにするー!」

「わ、わたしもー!」


 見ればあの大人しいノノちゃんも子どもたちの中にいる。

 ちょっとの間で随分とたくましくなったなぁ、とオレが思っていると服をくいくいと引っ張る何者かがいた。


「ん? あぁ、アーノ君か。アーノ君は行かなくていいの?」

「あとでいい。それより」


 少年は何やら顔を赤くしながらもじもじと手を動かしている。

 おっとー? なんとなくこの感じはイヤな予感がしてきたぞー?

 

「あ、あのさ! オレ、強くなるから! ゼッタイ、強くなるから!」

「う、うん?」


 アーノ少年はそれだけ言って、タグを貰いにケーナさんの方へ走っていった。

 どうやらオレが想像していたような甘酸っぱい展開にはならなかったようで、正直ほっとしている。

 いや、だっていたいけな少年の恋心をもてあそぶとか、ねぇ?

 でもどうしてわざわざオレの所に報告しに来たのだろうか?

 ……まぁ、悪い事ではなさそうだし、いっか。 


「か、かーちゃん! オレにもくれ! かっこいいやつ!」

「あら? クロちゃんとおそろいじゃなくていいの? うふふ♪」

「わたしはおねーたまとおそろいー♪」


 ……ん?


「かーちゃん!?」


 え、ということはあの兄妹ってケーナさんのお子さんだったの!?

 いや、子どもがいるっていってたからこの中にいるかなくらいには思ってたけどなんとまぁ……。

 でもそっかー。たしかにアーノ君はマセマセだったもんなーうん。

 オレが一人納得していると、その妙齢の受付嬢さんは、うちの子たちをよろしくね、と言わんばかりのウインクをしてきた。

 やはりこのヒト、侮れない……!

 こうして、かみしばいの会は大成功の内に幕を閉じたのだった。

クロはアーノ君の遠回しな告白の意味を理解してません。

元男なのに男心の分からない子なんです。

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