黒の系譜01-33『魔の夜』
ここからちょっと暗い展開が続きます。
読むのが苦手な方もいるかもしれませんが、少しの間お付き合いいただければと思います。
「で、結局のところ記憶は戻ったの?」
「それはなんと言いますか。戻ったような、戻らないような?」
「ん、どこにいた?」
「それは隠し部屋なんですが、どうにも説明に困る場所でして」
「お、お怪我はないのですか!? いきなり絵の中に吸い込まれたように見えたので、とても心配していたんですよ」
「あ、ありがとうございます。ご心配をおかけしました」
黒の間から戻ってきたオレを待っていたのは正座でのお説教タイムである。
ティー様からの[メール]がかなりの長文だったので読みきるのに結構な時間を要し、更にそこからの懺悔タイムでかなりの時間メンバーを待たせてしまったのだ。
本当ならちゃんと説明したいところなのだが、ティー様の事とか、パワーアップアイテムの事とか、隠し部屋のヒミツとか色々と話せない内容が盛りだくさんすぎる。
なんとかお茶を濁したいだが、
「なっとくいかなーい!」
約一名、まったく納得してくれる気配がない。
さて、どうしたものか?
「おそらくクローディア様も突然記憶が戻ってまだ混乱されているのかもしれませんな。今宵は満月、すっかり夜も更けて魔物たちが最も活発になる時間ですし、何か起こる前に一度戻られてはいかがでしょうか? 話を聞くのはそれからでも遅くないでしょう」
ナイスですラムダさん!
さすがお気遣い執事、困り果てたオレの様子を察して助け船を出してくれる。
「むぅ……師匠がそういうなら。今日のところは勘弁してあげるわ! 感謝しなさい」
「うん、ありがとう。エミリー」
オレが素直に言うと、エミリーは顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
「(いつか、いつかきっと説明するから)」
オレはエミリーには聞こえないよう小声で謝った。
「では急いで屋敷へ戻りましょう。少し気になることがありましてな」
「気になること、ですか?」
「はい。ミニパトが帰ってこんのです」
「ミニ、なんですか? 初耳です」
――ミニパト、それはオレが昔夢に描いていたRPGの王道の一つ、召喚獣のことだという。
この世界では契約魔獣と言うそうだが、特別な技などで従わせた魔獣や魔物を使役する術が存在しているそうだ。
(っていうか、召喚系の魔導書みたいなものも作っていたようn……うっ! 頭が痛い!)
突然の頭痛に悶絶したオレは、一度思考を逸らせることにした。
ソレを思い出すには、まだ早いらしい。
ともかく、ミニパトというのはその契約魔獣の一種で少し大きな鳩のような魔獣らしい。
契約魔獣としては割と一般的で、伝書鳩代わりに人々の間の連絡手段として用いられているようだ。
「そんなの連れてましたっけ?」
「普段はこの魔石に封じていて、必要なときだけ魔力で呼び出すのですな」
ラムダさんが取り出したのは小さめの魔石、別のミニパトから取り出した魔核を加工して作られたもので、魔石にはそんな使い方もあったのかと感心する。
「それが帰ってこない?」
「はい。クローディア様が居なくなった際に、帰りが遅くなるかも知れない旨を書に認めて屋敷へ送ったのですが、いっこうに帰ってきません。もう戻ってきてもおかしくない時間なのですが」
「みにぱと、可愛いけど、優秀」
一般に広く普及しているとはいえ、やはり魔獣は魔獣。
大陸間の連絡にも使われており、飛行速度はなかなかのものらしい。
ここからスーサの街くらいまでなら、往復10分もかからないとか。
いくら向こうの返事を待っていたとしても、未だに帰ってきていないのは確かにおかしい。
([マップ]で確認してみるか?)
そう考えたオレはすぐに[マップ]を開くが、そこでそもそもミニパトを[アナライズ]していない事に気付く。
仮に、[マップ]上を速く移動するアイコンとかがあれば、当りも付けられるかもしれないが、生憎そんなに速く移動するアイコンは存在していない。
この館内に居るのもオレたちとナイトストーカーだけだし、他にミニパトらしきアイコンは存在していない。
「うーん、それっぽいのはどこにも……」
言いかけたオレの視界にスーサの街の様子が表示される。
そしてオレは見てしまった。
「え? え? なに……コレ?」
オレの表情が変わったことに、みんな気が付いた。
「クロ? いったいどうしたのよ? あ、まさかトイ――」
「ラムダさん、急いで戻りましょう!」
「にゃっ! ちょっとびっくりさせないでよ!」
オレはすぐに[マップ]を閉じて立ち上がる。
「く、クローディア様、どうかされましたか?」
「クロ、顔こわい」
果たして今のオレはどんな顔をしていたことだろう。
さっきまでの和やかなだったムードは一気に吹き飛び、緊張が走る。
ラムダさんも険しい表情を崩さない。
「何か、あったのですな?」
他の人には[マップ]が見えないから、説明のしようもない。
でもオレは見た。見てしまった。
「はい。街で、何かが起きています」
スーサの街を埋め尽くす無数の〝黒いアイコン〟だった。
一度切ります。
まだちょっと序の口ですが、あまり暗い展開を長引かせたくなかったので、本格的に入る前に一度切りました。
ここから先、少しシリアスパートです。




