黒の系譜01-26『はんにんはクロ』
よく推理物とかでタイトルでネタバレされたり、次回予告で完全にネタバレされたりとかあるとちょっとガッカリしちゃいますよね。
え、サブタイトルを見ろ?
…………あれ?
エミリーの再起動にだいぶ時間がかかっているので、今のうちにルーさんに気になっていた事を尋ねる。
「そういえば、先せ「お姉さま」……ルーお姉さま、魔術って誰でも使えるんですか?」
エミリーだって一応女の子なのだから、無理に前線で戦わなくても、魔術で後方支援できるならその方がいいんじゃないだろうかと、昨日から考えていたのだ。
その事をルーさんに伝えてみると、ルーさんはただ一言、
「むり」
とばっさり切り捨てた。
教えるのが嫌とかそういうことでなく、色々と理由があってエミリーに魔術を使うことは無理だと判断したらしい。
「エミ、魔力、ゴミ」
「え?」
「みす、魔力、低い」
一瞬ゴミとか聞こえたような……いやいや、きっと気のせいだ。
でも魔力が低いってどう言うことだろうか。
「魔力、治癒草以下」
ルーさんが言うにはこの間スケルトンに追われていた際[ポケット・ソナー]で見ていたそうなのだが、あまりに魔力が少なくて、初めはいた事も気付かなかったらしい。
そういえばあの時オレが二つ反応があると言うと、不思議そうにしていたな。
魔力さえあれば一応誰でも魔術は使えるそうなのだが、エミリーは極端に少ないのでそれも難しいと言う。
「あれ? でもそんなに低くないと思いますよ? お姉さまやミラに比べたらそりゃ、少ないですけど。でも武器屋のご主人よりは多いですし」
オレは[ステータス]画面を確認しながら首を傾げる。
「ありえない」
と、言いながらもルーさんは[ポケット・ソナー]を唱えてエミリーを見る。
そして見るなり、手にしていたカップを落として、
「ありえない……」
と鳩が豆鉄砲でも喰らったように呟いた。
「魔力、増えてる。倍以上」
「何かおかしいんですか?」
そりゃレベルアップもするんだし、魔力が上がってもおかしくなさそうなものだが。
「クロ様、本来魔力というのは成長期の魔術師でもたった一日二日で上がるようなものではないんです。それが倍以上ともなると」
「ん、異常」
そ、そうなんだ。
てっきり成長期とかで魔力もぐーんと上がるものなのかと思っていた。
現にこうしている今も、エミリーの魔力は少しづつ上がっている。
と言うことは、これって何かやばい前兆なのではないか?
「エミリーってハーフドワーフみたいなんですけど、その辺が関係したりとかは?」
「ない」
ドワーフと言う種族は元々魔力が低い種族らしく、ハーフのエミリーの魔力が低かった理由にはなるかもしれないが、かといって魔力が急激に成長するなんて話は聞いた事がないそうだ。
「ま、まさか!」
「クロ、わかる?」
まさかエミリーは伝説のあの部族なのか?
死の淵から生還するたびに強くなると言うあの……
現にエミリーはスケルトンに襲われて一度死にかけている。
昨日もラムダさんの特訓によって死ぬような思いをしていたはずだし、今も一度脳みそが死んで再起動の真っ最中だ、と言えなくもない。
(何度も死の淵から蘇ったことで、エミリーの気……もとい魔力が爆発的に成長したんじゃないか?)
そうだ間違いない、完璧な推理だ!
じいやさん(ラムダさん)の名にかけて!
「ふふふ……わかってしまったよ」
ここからオレのターン。
生憎と麻酔針の飛び出す時計も、声を変える蝶ネクタイもないが、なんとかなるさ!
オレが推理パートから証明パートへ移ろうとした時、ミラが申し訳なさそうに『あの……』と手を上げる。
ふっ、名探偵の名推理にはいつでも前座が付き物。
わかっているじゃないかミラ。
「どうしたのミラ?」
オレははやる気持ちをぐっと堪え、まずはミラに譲る。
真打ちは遅れてやってくるものだからね!
「たぶんですが、これが原因ではないかと」
「あめ?」
ミラが取り出したのはオレの作った〝魔力ドロップ〟である。
そういえばルーさんにはちゃんと説明してなかったし、どういうものか簡単に説明する。
「クロ、ちょうだい」
「はい、いいですけど?」
オレは魔製珠を取り出して魔力を込め、即席でドロップを作成する。
ルーさんはそれをいつものキラキラした目で眺めながら、何度も頷いていた。
出来上がったドロップを差し出すと、ひょいぱくっ、と口に放り込み、『クロの味』とか言いながら口の中で転がしている。
なんかちょっとハズい。
そして、
「ん、わかった」
「え、わかったって何が」
「犯人、クロ」
ズビシィ! とオレを指さしルーさんはおっしゃった。
えー!? オレのせいってどう言うことですか!?
オレが尋ねると、名探偵ミラの名推理が始まった。
「クロ様が作ったこの魔力ドロップですが、高濃度、高純度、高吸収率の魔力が込められています。なのでこれを摂取することで体に魔力が馴染み、魔力の最大値が増えたのではないかと考えたのです」
なるほど確かにミラの推測が正しいなら、ここ最近で一気に魔力が増えた理由もうなづける。
エミリーには事あるごとにドロップをあげてたもんな。
「でも意義あり!」
だがオレも簡単に引き下がれない。
ミラの推測の方が正しそうだからムキになっている、だけじゃない。
ある純然たる事実が、ミラの推理が外れていると証明しているのだ。
「夢衰病の治療で似たような物を飲んだ人もいたけど、魔力が増えるなんてことはなかったよ」
「グロウズさんの件、でしょうか? 詳しい事は私も存じていないのではっきりとはわかりませんが」
ミラもチェスターさんから大まかな話は聞いていたそうだが、詳しい経緯は聞いていないらしい。
大まかな状況を端折って説明する。
親父さんの治療には魔力ドロップのミニサイズ、魔力丸を使っている。
「いくら込めている魔力に差があってもほとんど同じ物。わずかでも魔力に変化がないのはおかしいよね?」
オレの脳裏に『論破!』と言う文字が浮かぶ、が、
「んーん。歳とる、成長止まる」
「え?」
話を聞いていたルーさんがあっさり教えてくれた。
筋肉などがある一定の年齢をピークに減少していくように、魔力にもピークや減少があるらしい。
魔力はピークを超えると、多少の成長はあるもののほぼ成長が止まり、むしろ訓練などを怠ると徐々に減少していくそうだ。
「おやっさん、成長しない」
「あれれー?」
こうしてオレの突きつけた証拠はあっさりと論破されたわけだが。
ということはということでひょっとして?
「やっぱりオレのせい?」
「ん」
「クロ様のせいといいますか、コレのせいといいますか」
試しにミラにも舐めてみてもらった所、ルーさんが『ん、増えてる』と教えてくれた。
魔力回復薬どころか魔力アップ薬? また危険な物を作り出してしまった。
当然この事は三人だけの秘密にしたが、街の子どもたちの魔力を高めるのにこっそりあげるのはいいかもしれないな、とオレは企んでいた。
「そういえば何か忘れているような気が……?」
「奇遇、わたしも」
「えぇ、何かとても大事な事を忘れているような……?」
オレたちが顔を見合わせて『うーん?』と唸っていると後ろから、
「魔獣は心臓抉ると消える!」
という物騒な声を聞いた。
うん、そういえばエミリーの事をすっかり忘れていた。
「あってるけど他に言い方はなかったの? しかもその話はほとんど最初の方だよ」
あれだけ時間をかけてようやく理解できたのがそれだけなのだろうか。
オレが大きなため息を使うと、
「エミ、魔術むり。一番の理由」
ルーさんが無表情で言う。
「ばか」
はっきり言う。
「えぇ、バカですもんね」
オレも言う。
「そんな、ただちょっと思考能力に欠ける所はあるかもしれませんが……」
オブラートに包んでミラも言う。
「なんだかよくわかんないけど、アンタたち人の事バカにしてる?」
エミリーの額に青筋が浮かんだので、めんどくさいことになる前にオレとルーさんは首を横にぶんぶん振って額した。
ミラは困ったように笑って誤魔化した。
自覚がないのが一番やっかいだ。
次回! エミリーが覚醒します!
え、前書きを見ろ?
…………あ。
えっと、さっきのなしで。
え?『じゃあエミリー覚醒しないのか』って?
いや、しますよ。しますけど聞かなかったことにしといてください。
……小芝居にお付き合いいただきありがとうございました。
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