黒の系譜01-21『Re:Tundele』
タイトルに関しては完全に造語? ですのでスペルミスとかではないです。
昼食後もせっせとアイテムを作り続けていると、コンコン、とドアがノックされる音がする。
「はい?」
オレが何の気になしにドアを開けると、そこにいたのはリリメさん。
抱きつかれる!?
とっさに衝撃に身構えたオレだったが、いつまで経ってもあの柔らかな感触がやってこない。
いや、別に期待していたわけじゃないよ?
ないけどなんていうか拍子抜けしたような感じになる。
「どうかされましたか?」
「い、いえ、何でもありません。アハハハハ……」
ごほん、と咳払いを一つ。
気を取り直したオレは用件を尋ねる。
「いえ、家の前にクローディア様のご友人だと言い張る者がおりまして、そのご確認に」
「友人??」
はて? この世界に来て数日経つが、友人なんて呼べる人ができるほど人付き合いは多くないと思うのだが……
「どんな方ですか?」
「えっと、赤い髪の少し背の小さい方で……」
あ、なんとなく分かったかも?
「こう、可愛らしい方なのですが、そのちょっと言い方が悪いかもしれないんですが態度が大きいというかなんというか……あ、あと本人は〝友人〟というのは否定していたんですが、口振りからするとどうにもそんな印象を受けたもので……」
「あ、はい。何となく分かりました。たぶん知り合いです」
「でわ、お連れ致しますねー」
一礼して部屋を後にするリリメさん。
……ホントに何もなかったな。
いや、ホントに期待していたわけじゃないんだけど、いつもなら隙あらば抱き着こうとしてくるから変な感じがするっていうだけなんだ、うん。
「あ、そうです! ……ってどうされたんですか?」
急に戻って来たリリメさんを変な構えで待ち受けたオレ。
「いえ、何でもないデスヨ? あはははは……」
今度こそ来たか、と思ったがそんな事もなかったようだ。
リリメさんは『お嬢様がクロ様が最近構ってくれないと、さびしがっておりましたよー』とだけ言うと、一礼してとてとて走って行った。
「さ、三回目って事は?」
構えを崩さないまま恐る恐る廊下に出てみるが、そこにリリメさんの姿はなかった。
べ、別にさびしくなんて、ないんだからね!
ツンデレっぽく言ってみた。
―――――
「べ、別にアンタとはトモダチでもなんでも、ないんだからね! 勘違いしないでよね!」
「あ、あははははは……」
本物のツンデレがやって来た。
そうです、エミリーです。
なんかぷりぷり怒りながらやって来たエミリーは、部屋に入るなり我が物顔でベッドの上を占拠してしまった。
なんなんでしょうね、この娘。
「で、一体全体何の用? 文句を言いに来ただけなら、悪いけど後にしてくれない? 今ちょっと立て込んでるんだ」
「――っ!」
エミリーは『あー』とか『うー』とかひとしきり呻いた後、覚悟を決めたようにまっすぐこちらを見ると一言。
「昨日は、その……あんがと」
言った後顔を真っ赤にして、布団に潜り込んでなんかめっちゃ叫んでいる。
感謝の言葉を伝えるのが恥ずかしいとか、どんだけだ。
「えっと、なんか『助けなくても良かった』とか偉そうな事言ってなかったっけ?」
「それは、ほら。勢いよ、勢い! あの時はすごく気持ちがハイになってたから、ついあんな事言っちゃったのよ」
布団から頭だけ出して、気まずそうに視線をそらすエミリーを見て、なんとなくハムスターを想像して和んだ。
「でも宿に戻ってご飯食べてベッドに入って……目を閉じて『あぁ、アタシ死んでたかもしれないんだ』って考えたら急に怖くなっちゃって……」
「なるほど泣いた、と」
「な、泣いてないし!」
よく見れば目の周り真っ赤になってるし、これは泣いたな。
「そ、それで。昨日は色々言っちゃったりしたし? ……ちゃんとお礼しとこうと思って……」
「別に気にしなくても良かったのに」
「ふ、ふん! それじゃアタシの気が済まなかったのよ! ほらコレ!」
「コレは?」
エミリーに差し出された包みを開くと、
――クローディアは【治癒草】を手に入れた!
「…………………………わーい?」
「何よその反応! 集めてるって聞いたからわざわざ採ってきてあげたんじゃない!」
「また一人で街の外に出たの? 危なっかしいなぁ」
「街の近くだから平気よ! って言うか余計なお世話よ!」
正直治癒草は庭に生えている分でもう十分足りているんだが……あ、そうだ。
「じゃあ治癒草のお礼にコレを……」
「な、なによ、ソレ」
オレは懐からポーションを2、3本取り出してエミリーに渡す。
「ポーションだけど?」
「ぽぽぽぽぽーしょん!?」
なんかやたら顔が引き攣っているけど、なにかポーションに嫌な思い出でもあるのだろうか?
「うん、持ってるだけで違うと思うよ? ポーション」
「そそそそそうかもしれないけど……アタシなんていうかポーション苦手なのよ!」
「そうなの?」
ポーション嫌いの冒険者って、それ大丈夫なんだろうか?
「前は普通に使ってたんだけど……なんていうか、今はほんと無理! 緑だし! ドロドロしてるし! 生理的に受けつけないのよ!」
「あぁ、それなら大丈夫。これはワタシの特製ポーションだから」
エミリーに翡翠色のポーションを手渡すと、エミリーは目を見開いて驚いた。
飲む用に促すと、少しためらった後、目を閉じ腰に手を当てて一気に飲み干した。
おぉ、良い飲みっぷりだ。
飲み終わったエミリーはカッ! と目を見開くとポーションの瓶を握り潰し(恐ッ!)、ものすごい形相でこちらを睨んできた。
「ひぃっ!」
あまりの剣幕に若干引くと、近づいてきて両肩を掴まれ激しくシェイクされる。
「おーたーすーけーをー!?」
「これを! どこで! 手に入れたの!?」
言わなきゃ殺されるかと思い、正直に自分で作ったと話すと、ぴたっ、と動きが止まる。
「し、しぬかとおもった…………」
まさか命を救った相手に殺されそうになるとは思わなかった。
情けは人の為ならず、とはよく言うがアレは間違いだ。
情けは人を殺す! 今身に染みて分かった。
「一応確認。これを、アンタが、作った。オーケー?」
「お、おーけー」
「まさか今朝街の人に配られてた〝魔力丸〟とかを作ったのもアンタ?」
「い、いえす」
「……じゃあ、武器屋のオッサンを助けたってーのも?」
「まぁ、ワタシ一人の力ではないけど。協力したのは確か?」
そこまで聞いてエミリーは顔を伏せて盛大なため息をつく。
え、なんかオレ悪いことした?
「そういえばちゃんと名前も聞いてなかったわね。アンタ『クロ』って呼ばれてたけどあれがアンタの名前?」
「えっと、名前はクローディア。歳はじゅうよんさい、かな?」
「14って、まだ未成年じゃない!」
「ひぃっ、なんか知らないけどごめんなさい!」
「アタシより年下でこんだけって……正直へこむわ」
中身は28歳ですけどねー。
ちなみにこの世界では16歳からが成人とされ、お酒も結婚も16歳からできるようになる。
一応エミリーも16歳で成人しているのだけど、身長とか色々小さいから、14歳のオレと同じくらいには見える。
「でも未成年ならなんであんな場所に……あぁ、あの無愛想魔術師がいたか。ちっ!」
エミリーは顎に手を置いて何やらぶつぶつと言い始めた。
無愛想魔術師というのはルーさんの事だろうか?
考えに集中しているのかオレの事もアウトオブ眼中のようだが、一体何を真剣に悩んでいるのか。
「にしたって、これだけの事ができるんだし、それなりにレベルがあるはず……うん、もうこの際何だっていいわ。よし決めた。すぐ決めた。今決めた! ――アンタ、アタシとパーティー組ませてあげるわ!」
「…………………………えー?」
「何よ、その反応は!」
なんか色々一人で勝手に考えた挙句、完全に上から目線。
やっぱりこの子めんどくさい。
「何よ。言いたいことがあるなら、怒らないから正直に言いなさいよ」
「やっぱりこの子めんどくさい」
「めんどくさいって何よ!」
怒らないっていったじゃん! 超激オコじゃん!
エミリーが両手を振り上げてきーきー言っていると、脳内にピコーンという電子音が聞こえてくる。
どうやら[オラクル]が発動したらしい。
――冒険者見習いのエミリーが仲間にしたそうにこちらを見ている!
――仲間になりますか? はい/いいえ
そんな選択肢わざわざいらんわ!
「とりあえず〝いいえ〟で」
「一体何の話よ!?」
相変わらず叫んでいるエミリーを軽く無視してオレはまたポーションを作り始めた。
後ろでエミリーが何か叫んでいるが無視だ無視。
マクラが飛んできてオレに命中したが無視だ無視。
「―――――――っ!?」
何度かマクラの衝突を受けながらオレはのんびりと、やっぱりエミリーを助けたのは間違いだっただろうかと考えていた。
「だから! アタシと! パーティー組ませてあげるって! 言ってるで! しょ!」
「よーし、これだけ作れば十分かな?」
「無視! するなー!」
枕でボフボフと叩かれながら、オレはポーションを箱詰めしていく。
「はぁ……というかそもそもなんでワタシ? ギルドに行けばたくさん冒険者がいるでしょ?」
「それがそうでもないのよ」
最近、例の〝夢衰病〟のせいでギルドから冒険者が減っているそうだ。
命を落とした冒険者もいたらしい。
町に残っているのは高レベルの冒険者で、しかも男の人ばかりらしい。
「あんな連中とパーティーを組むくらいなら、一人で治癒草でも取ってた方がましだわ!」
「……その人たちと何かあったの? いや、いい。何でもない」
聞いた途端に虫けらを見るような表情をエミリーが浮かべたので、それ以上は何も聞かない事をした。
間違いなく何かあったのだろう。
「アンタなら、ほら女同士だし? 変な事もないかなって」
「女同士……」
中身は男ですけどねー。
「それに、ほら。アンタなんか強そうだし?」
「そんな強くないよ? レベルも9くらいだし?」
「う、嘘よ! だってスケルトン倒したり、ポーション作ったり、変なアイテム作ったり……絶対レベル高いに決まってるじゃない!」
まぁ致死性初級魔術や特攻系戦技が使える事を考えたらレベル9どころの話ではないのだろうけど、[ステータス]画面から確認できるレベルは9(この間スケルトンを倒してレベルアップした)だ。
なので嘘はついていない。
「嘘じゃないんだけどなぁ」
「じょ、上等よ! 今からギルドにレベル確認しにいくわよ! もし嘘だったらそのままパーティー組んでもらうんだからね!」
別にオレもパーティー組むのは構わないけど、でもエミリーと二人だけと言うのも戦力に不安があるし、もう少しまともに戦えるようになってからの方がいいと思うんだけどなぁ。
まぁ、オレもギルドで冒険者登録とかちょっと興味があるし、付き合ってあげよう。
「ん、じゃあ。ちょっと屋敷の人に出てくるって伝えてくる」
「……そういえばアンタ、なんで領主様のお屋敷でお世話になってるのよ?」
「その辺はそうだなー。歩きながら話すよ」
オレは歩きながら事情(いつもの記憶喪失などの設定)を話し、呆れられてしまった。
同情されることはあっても、『記憶喪失なのに人助けとかアンタ馬鹿?』などと呆れられることははじめてだったのでちょっと新鮮だった。
チェスターさんたちは見つからなかったが広間にミラが居たので、エミリーを紹介して『ちょっとギルドに行ってくる』と伝えると、ミラも付いて来ると言い出した。
まぁギルドくらいまでなら別に危険もないだろうし、良いよと言ったらすごく喜んでいた。
「よろしく。ミラ、だっけ?」
「はい♪ よろしくお願いします、エミリーちゃん」
エミリーは相手が領主の娘だと言うのに物怖じせずに気さくに話しかけている。
こういう所はほんと大物だよなぁ。
そんなこんなで、オレはポーションと魔力丸の入った箱をメイド長さんに預け、ギルドへと向かった。
次回! 説明回だよ! みんな覚悟はいいかい!?
大丈夫、おばk……頭があまりよくないエミリーでも分かる説明だから!
でわ、ご意見ご感想、質問評価誤字脱字報告などなど、お待ちしております。




