黒の系譜01-16『若葉の冒険者』
[メニュー]の[装備]を使うと一瞬で服が着脱できますが、装備する部位は自動で選択されるので重ね着とかには対応していません。装備の上に何か装備する時は面倒ですがやはり自分で着る必要があります。
似たような理由でアクセサリーも装備位置は自動で調節されるので、オシャレしたい時は自分でつけたほうが早かったりします。
服屋さんにやって来たオレは、更衣室で受け取った服をすぐに[装備]し、着ていた服は[アイテム]で収納する。
うーむ、やはりこの[メニュー]はなかなかに便利だ。
昨晩も[錬金]というショートカット機能を作ったおかげで、レシピ指定ですぐにアイテムを作りだせるようになった。
これで材料さえあればアイテムを大量生産することができるだろう。
ちなみにポーションだが、本当ならもっとたくさんのポーションを作り出せたのだが、あまりにも大量だと不自然なので実際に作れるくらいの量に留めておいた。
実質作成時間は十分とかかっていないのだが、[錬金]のショートカットを作るのにやたら時間がかかった。
ティー様は『頭の中に説明書をぶっこんどいたから!(意訳)』と言っていたが、実際やってみると上手く行かない。
おかげで何度もティー様に[メール]を送って確認する羽目になったのだ。
おまけに返事が帰ってくるたびに頭がどうかしているとしか思えないポエムが添えられてくる。
オレも眠かったので何度〝間違って〟読まずに消してしまった事か。
ともかく、そうこうやっているうちに、作業が終わるころには朝日が上り始めていた。
だが、魔力に制限がないから実質材料さえあれば、この[錬金]を使って一瞬で物が出来上がる。
(ほんとチートさまさまだな)
ティー様のおかげ? ハハハ、冗談はよしこさんだYO。
まぁ、[メニュー]の偉大さはさておいて、オレは服に袖を通した素直な感想を口にする。
「うぅ……今まで以上にスース―する……」
別に服に不満があるわけじゃない。
服屋さんに頼んでおいた風は上下共に完璧な仕上がりだった。
上は綺麗な金刺繍の模様が生える若草色のチュニックで、動きやすいように袖は短くしてもらった。
きつ過ぎず緩すぎない、ほど良い着心地でとても肌触りもいい。
だがさりげなくアイテムを入れるためのポケットが付いているのもポイントだ。
下は動きやすさと、(オレはいらなかったのだが)可愛らしさを両立させた結果、膝より少し上くらいの丈のミニスカートになった。
初めこれを提案した時、そのあまりの生地の少なさに大胆すぎるとミラからも店員さんからも却下された。
そりゃまあそうだ。
この世界でもスカートは短くてもせいぜい膝丈らしく、こんなちょっと動くだけで下着が見えそうになるスカートを穿いている人間はまずいない。
だがオレは下にショートパンツを穿くつもりだったし、苦し紛れに『柔らかくてなめらかな素材で下半身を覆うような衣装を作って履くとか……』と言ったところ、
『ふ、服飾界の革命だわ!』
と店員さんが衝撃を受けていた。
オレとしてはタイツとかそういう物を想像していたのだが、実際出来上がったのはレギンスである。
レギンス、と言うよりスパッツと言った方が分かりやすいだろうか?
この世界にも〝レギンス〟は存在しているが、それはあくまで装備としてだ。
金属や魔物の鱗などで作られた頑丈な防具で、それをまさかわざわざ防御力の無いに等しい素材で作ろうという発想がなかったらしい。
そして店員さん注文通り柔らかく、艶やかな光沢を放つ黒いレギンス(タイツ?)を作ってくれた。
そう、注文通りだから当然下は超ミニスカートにレギンスという、とても心もとない防御力(対露出)なのだ。
「どう? 我ながら会心の出来だと思うんだけど?」
「泣きそうです」
「そう? 泣くほど嬉しいのね! 良かったわ!」
装備し終えてからカーテンを開けると、店員さんの目がカッ! と見開き、上から下までなめまわすように見られる。
店員さんは鼻を押さえながら(たまに首を手刀でとんとん叩いているのは何かのおまじないだろうか?)とても良い顔でオーケーサインをくれた。
しばらく食い入るように見られ続けているので正直居心地がわるい。
オレはステータス画面に視線を逸らし装備を確認する。
【若葉のチュニック:E
朝露に濡れる若葉をイメージした若草色のチュニック。魔妖樹の新芽で染め上げたため、魔力を込めると自動で服が修復される】
【爽風のスカート:E
爽やかな風イメージした翡翠色のスカート。〝シルフの羽〟が織り込まれているため、風の加護を受ける事ができる】
【蟲惑のレギンス:E
ブラックモスのシルク糸で編まれたレギンス。程よい通気性と防御力、そして見る者をひきつける魔性の魅力を持っている】
……なんかすごい物が出来上がっている。
というか、これ素材もすごいんじゃなかろうか?
え? これ、本当に貰っちゃっていいの?
なんか『お代はいらない!』とか言っていた気がするが、これはそういう話ですむレベルじゃないだろう。
「あの、やっぱりお代を……」
「それにはおよばないわ! 良いものを、本当に良いものを作らせてもらったお礼よ! 眼福だわ!」
店員さんのギラギラした目がレギンスから離れない。
怖い、なんかすっごく怖い。
「で、でも」
「どうしてもというならそうね。こんど時間がある時にその姿を絵に残してこの店の宣伝に使わせてもらおうかしら! それかまたモデルを! アナタを見ていると、こう! 創作意欲が! パッションが沸き起こると言うのかしら! だからぜひモデルに! そうよむしろうちの専属モデルになってくれたら一生可愛がってあげるわげへへへへ!」
すごい勢いで詰め寄られたオレは丁寧に頭を下げつつ一目散に逃げ出した。
正直食べられるかと思ったんだ、うん。
「……もう試着も済んだし、良いだろう」
オレは[アイテム]から昨日の晩の内に【ぬののふく】から作った【マント】と【ショートパンツ】を取り出して、いそいそと装備する。
なんか以前どこかで『スカートの下に短パン穿くのは邪道!』とか言ってる奴がいた気がするが、言わせてもらおう。
邪道とかいうならお前もスカートを穿いてみればいいんだ!
そしてその心許なさを自ら味わってみるがいい!
「よし! あとは武器だ!」
心の叫びをマントで隠し、オレは意気揚揚と武具屋さんへ向かった。
―――――
武器を何にするかは正直悩んだ。
初めは自分の身長くらいあるかっこいい両手剣を買おうと思ったのだが、親父さんに『身の丈に合った武器にしな』とのアドバイスを貰い、結局軽い短剣を2本購入した。
振ってみても違和感がないし、思い出した戦技も魔術との相性がよさそうだし、確かにこっちの方が今のオレにはあっているかもしれない。
服をやたら武具屋の女将さんに褒められ、小さな宝石のはまったブローチを貰った。
店主の親父さんにはナイフを腰に下げるためのベルトまで貰ってしまったし……この前以上に優遇されているように感じるのはこの服のおかげもあるのだろうか?
何はともあれ、予想以上の成果に大変満足したオレは、スキップなんぞを踏みながらルーさんが待っているギルドへと向かった。
こんどこそホントにオレの冒険が始まるのだ!
服屋の店員さんですが、彼女の名誉のために言っておきますが別に変態ではありません。
冒険者をやっていた時の影響で子どもが産めない身体になってしまい、可愛い子供とか女の子に対する愛情がこう、少しこじれただけなんです。
けしてロリ○ンではありません。けっしてロリ○ンではないのです。




