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黒の系譜  作者: 木根樹
黒の系譜―第一章〝黒の目覚め〟
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黒の系譜01-14『スーサの領主』

ブクマがちょっとづつ増えてきて、ニヤニヤの止まらない作者です。

テンションあがったので今日も投稿しますよ!

 さて、ポーションを作ってみたはいいが、実際どの程度効力があるのだろうか。

 アイテム説明によればそれなりに効果があるようだが……

 オレは翡翠色のポーションが入った試験管サイズの瓶を揺らし、うーむと唸る。

 ちなみにこの瓶、実はガラスではなく魔力で作り出した物だったりする。


【魔製珠:

 魔素結晶から取り出された成分を特殊な技法で生成した宝珠。魔力を物質化させる力があり、また込める魔力によって強度、大きさ、形などを自由に変えることができる。ただし、生成した形から大きく崩れるとただの魔力へと戻ってしまう】


 懐から取り出した拳大のマジックアイテムは雑貨屋で秘術の壺を買わさせられた際、『きっと必要になる』と言われ一緒に売りつけられた(驚きの120メニエニという大金で)物である。

 初めはあまりに売れない高額商品を在庫処分で押し付けてきたのかと思っていたが、秘術の壺と合わせて必要になるというのは確かにその通りだった。

 ポーションの入れ物としてこれほど使い勝手の良い物が他にないのだ。


(あの店主、ただ者じゃないな……)


 例えばポーションを量産しても、まず保存方法が大変である。

 作ったポーション全てを入れる瓶、容器を購入するとなると馬鹿にならない。

 その点、この魔製珠で作り出した入れ物なら、元が魔力だけだから魔力無限なオレには実質コストがかからない。

 今後も量産することを考えれば、120メニエニというのは決して高くない。

 むしろおつりがくるくらいだろう。

 そしてもう一つ、ポーションを使った後の入れ物である。

 ポーションを使った後、空の容器をその場に捨てていたら今頃世界はゴミだらけだろう。

 ガラス片が飛び散ったりすれば危険だし、持ち帰ってもかさばるだけである。

 しかし魔製珠で作った入れ物は思いっきり砕けば、魔力に戻って消える為、周囲も汚さない。

 少し荒っぽいがポーションを味方に投げつけて使う、なんて使い方もできるかもしれない。


(今度また良いものがないか見に行って来よう)


 直感的にもあの店は〝あたり〟だ。

 この街にいる間は今後ともご贔屓にさせて貰おう。

 

 それはそれとして、である。

 目下一番の確認事項はポーションの回復具合を確かめる事である。

 どこかに良い実験だ……もとい協力者はいないだろうか。

 キョロキョロとあたりを見回しながら屋敷内を歩き回っていた時である。


「いっっつぅ!」


 厨房の方から若い男の人の叫び声が聞こえてきた。

 ひょっこり中をのぞいてみると昼食の準備をしていたのだろう、みな慌ただしく動いている。

 そんな中でコック見習いの男の子が指をしまったようである。

 不謹慎だとは思いつつも、ポーションの効果を試すにはちょうどいい。

 彼にはいけに、協力して貰おう。


「どうかしましたか?」

「っ!? クローディア、様! いやぁ、包丁で指を切ってしまいまして……お見苦しいところをお見せしてしまって」


 見習い君は指をくわえ、『こんなもん、なめときゃ治りますよ』と笑っている。

 

「ちょっと、見せてください」

「え、ちょ! クローディア様!?」


 オレは見習い君の手を取って傷口を観察してみる。

 そんなに深い傷ではないが、指先と言うこともあり出血はなかなか止まらないようだ。

 オレは懐からポーションの瓶を取り出す。


「これ飲んでみてください」

「これは……ポーションっ!? ……いやいやいや、この程度の傷にそんなもったいない! 飲むなんて、そんな……! オレは元気ですから大丈夫ですから!」


 色々理由をつけて飲む用に促すが、遠慮して受け取ろうとしない。

 額に汗をかいてまで必死に断ろうとするなんて、よっぽど謙虚な性格をしているのだろう。

 だが効果を試すためにもここは是が非にでも飲んでもらいたい。

 いや、絶対飲ませる。

 多少強引だがしかたがない。


「あ」

「え?」


 見習い君の意識をそらした瞬間、口に無理やりポーションを流し込んだ。


「がぼぁっ!?」


 驚きながらもポーションを飲み干した見習い君。

 初めは『何てことを!』という表情だったが、飲み終わってからは『あれ?』という顔に変わっている。


「あれ、おいしい?」

「味は問題なし、と」


 オレのその一言に一番驚いているようだが、何か問題でもあっただろうか?

 だってまずくても口から吹き出すだけだよ?

 体験者が言うんだから間違いない。


「ちょっと失礼します」

「え、あっ(ぽっ)」


 次にオレは見習い君の手を取って指先を見てみる。

 さっきまであった傷はすっかりなくなり、むしろ血色がよくなっている気さえする。

 というか顔まで赤くなっているが、副作用とかじゃないだろうか。


「指はどうですか? 痛みや違和感はありませんか?」

「あ、りません。むしろ気分がいいくらいです」


 目をぱちくりさせながら呆けている見習い君に『良かった』といって微笑みかけると、見習い君ははっとして、『し、仕事に戻ります! ありがとうございました!』と言って厨房奥へと戻っていった。


(うむ、効果はちゃんとあるようだ)


 オレは懐から小分けしてあるもう1本を取り出してニヤニヤする。

 これが量産できればそれなりに、いや結構な儲けになるんじゃないだろうか。

 なんて欲まみれな事を考えていた時だった。


ズドドドドドドド…………!


 背後から聞こえてくる効果音と声と気配に背筋がぞっとする。

 このまま棒立ちになっていれば、ものすごいスピードで迫ってくるソレはオレを間違いなく呑み込むだろう。

 そしてきっと天国へ誘うだろう。

 だがオレは学んだ。

 あれは天国のようで、本当は地獄なのだと。


「……………(すっ)」

「はれ?」


 だからオレはかわす。

 ちょっと横に移動するだけで背後まで迫っていたソレは目標を見失い、足をもつれさせてつまずき、『ずんだらべっちゃんちゃんー!?』と奇妙な叫び声を上げながら床を転げていった。


「ふみゅぅぅぅぅ……」


 目を回しながらスカートの中身(ドロワーズって言えばいいのか?)を惜しげもなく披露している小悪魔メイドさんは、騒ぎを聞きつけやってきた激オコぷんぷん丸なメイド長さんに回収されていった。

 この後はまたお説教コースだろうな、南無。


「やれやれ、リリメはもう少し落ち着きという物を覚えなくてはいけないね」


 笑いながらあとからゆっくりと歩いてきたのはチェスターさんである。


「おかえりなさい。もう用事は済んだんですか?」

「ただいま、ノーウェイさん。私の方はもう終わったよ。ミラとラムダはまだ用事があったようなので教会に残してきたんだ」


 こっそり『一応ラムダの体調を確認する必要もあるからね』と耳打ちするのも忘れない。

 これだからイケメンは! と思ったが、ほのかに良い香りがして『あ、ぅあ』としか言えなかった。

 ニヤリと意地悪そうに笑うイケメンに、ドキッとした。

 危ない、オレが女だったら落されていたかもしれない。

 

「ところで、面白そうな物を持っているね? それはポーションかい?」

「ひゃ、はい!」


 ……別に動揺してないし!

 オレは出したままだった瓶を差し出すと、チェスターさんは真剣にそれを吟味している。

 光にすかして色を見たり、指に1滴たらしたりして効果を見ているようだ。

 オレが『一応飲めるようになってます』というと、チェスターさんは驚いた表情でポーションを睨み、覚悟を決めたように一口含み、さらに〝驚愕!〟といった顔をした後で一気に全て飲み干してしまった。

 いつも澄ました顔をしているチェスターさんの驚き顔といのもなかなか新鮮だ。


「……見たことも、飲んだこともないポーションだ」

「ポーション飲んだことあるんですね」

「あぁ、アレはもう二度と飲みたいとは思わないね。それにしても、これをどこで?」

「えと……」


 出会ってからほとんど見せたことのない真剣なチェスターさんに、オレは恐縮してしまう。

 それを察したのか、チェスターさんは表情を和らげると『すまない』と笑った。  


「いや、こんなにもおいし……もとい完成度の高いポーションは初めてだったのでね。つい興奮してしまった」


 チェスターさんによれば、昔戦場を駆けまわっていた頃にあの緑色のポーションを飲んだらしい。

 当時の〝ポーションはかけるもの〟という共通認識があった中、一人の兵士が飲んだ方が効果が高い、と言うのを発見し、効率よく体力を回復するために何度か飲んだそうだ。

 味は言わずもがな。

 飲んでしばらくは悶絶して動けないとか逆に大丈夫か?

 そのせいで戦場ではたびたび『ポーションが飲みたいのか!』と他の戦士を鼓舞する声が飛び交ったとか。

 

「いやぁ、あの頃にこれに出会っていたら……長生きはしてみるものだね」


 そう言ってチェスターさんは笑った。


「まぁ昔話はこの辺にして、真面目な話をしよう」


 間にワンクッション挟んだので幾らかはましになったが、チェスターさんの真剣な表情は変わらない。

 だからオレも茶化したりせず真剣に聞く。


「どうやってこのポーションを……いや、言いたくないなら構わないのだが。もし残りのポーションがあるならぜひ買い取らせてほしい。値段は言い値で構わないし、値段が付けられないと言うなら代わりにできることは何でもする。だから譲ってはくれないだろうか?」


 チェスターさんが頭を下げるのでオレは慌てて上げてもらうようにお願いするが、チェスターさんは頑として譲らない。

 ミラの頑固さはチェスターさん譲りなんだろうなと思った。


「もし入手方法が分かるというなら、私の残りの生涯全てをかけてでもその恩に報いるつもりだ。だからどうか、お聞き届け願えないだろうか?」


 チェスターさんの本気具合がやばい。

 え、『生涯全て』って、それたかがポーションにかけちゃっていい物なんだろうか?

 とりあえず、状況がつかめないので、今は手持ちのポーションがないことを告げ、どうしてそこまで必要なのかを尋ねてみることにした。

 

「そうだね。そのくらいの誠意は見せなくてはならないな」


 チェスターさんはばつが悪そうに頭を掻いた。


「……実はここ数日、原因不明の流行り病で命を落とすものが多くてね」


 病の名は〝夢衰病〟といい、夜寝ている間に少しずつ衰弱していき、日が昇る頃には死を迎えてしまうらしい。

 

「もう既に少なくない数の死者が出ている。ここ何日かは発病者がでていないが、街の誰もが毎晩死の恐怖に怯えて過ごしているんだ」

「なるほど。街の方の雰囲気がなんとなく暗く感じたのはそのせいか」


 街の人々に感じていた違和感、それはその〝夢衰病〟が原因だったのか。


「症状を診察しようにも手遅れな事がほとんどでね。未だに原因も治療法もわからず、手の施しようがないんだ。だが……」

「このポーションがあれば助かるんですか?」

「100%助かる、とは言えない。しかし治療や診断をする時間が稼げればあるいは助かるかもしれない」


 しかし、チェスターさんの表情は険しいままである。 


「もしダメでも、家族に別れを告げる時間が少しでも稼げるなら……」

「――幾つ必要ですか?」


 それ以上は聞きたくなかった。


「一家に一本支給するとして最低50本もあれば……」

「じゃあ200本。一家に3本、予備として教会に30本とこの屋敷に20本で全部で200本用意します」

「っ! それはありがたいがそんなに用意できるのかい?」

「絶対に用意してみせます」


 オレはまっすぐチェスターさんを見る。

 あんなに親切で温かい街の人々が亡くなるのも、それを見て悲しむ家族も、この家の人々が無念に悔やむのも見たくない。

 チェスターさんはそれ以上何も聞かず、ただ『ありがとう』と答えた。


「君を信じよう。依頼に当たって必要な物があればすぐに用意する。お金が必要だというなら我が家の家宝を売り払ってでも用意しよう。さしあたって私は何をすればいいんだい?」

 

 オレはすぐに街にあるだけの治癒草とリカムティーを用意してもらうように頼むと、何かを察したのかチェスターさんは苦笑いしている。


「まさか……ハハ、いやもう君には驚かされっぱなしだよ」

「そうですか? それは光栄です。 ――ちょっと立てこもりますので、部屋に人が来ないようにしておいてください」

「わかった。夕食は、何か部屋でも食べれる物を用意させよう」

「お気遣い感謝します」


 その程度気にしないでくれ、とチェスターさんが笑う。


「あ、あと。ポーションを作るにあたって一つ条件があります」

「もう隠す気もないんだね。なんだい? 私にできる事ならなんでもするよ? 領主の座が欲しいというなら喜んで明け渡すし、首を差し出す覚悟もある」

「この街の領主はチェスターしかいませんよ」


 領民のために自らを犠牲にできるチェスターさんだからこそ、この街は〝良い街〟なのだろう。


「もし――」


 続けて言った言葉にチェスターさんは目を閉じて静かに頷く。

 オレは両手で頬を叩いて気合を入れると、すぐに部屋へ向かう。

 やらなきゃいけない事がたくさんできた。


そろそろ色々物語が動き始めますよー。

勘の良い方はもう気づいたりしているかもしれません。

が!

が、しかし!(なぜ2回言ったし)

今後の展開を生暖かく見守りつつ、『やっぱりかー!』とか『だと思ってたよ!』とか後でご感想ください。

一応次回更新予定は月~火くらいを予定中? よ、よていはみていだよー!

でわ長くなりましたが最後に、

〝黒の系譜〟ではご意見ご感想、質問誤字脱字報告評価などを気軽にお待ちしております。ただ質問内容によってはネタバレを含みそうな場合答えられない場合もございますのでご容赦ください。

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