黒の系譜01-09『愛の狩人』
久々にあのお方が登場!
たまにどういうわけかキャラブレしますが、本人も自分のキャラをよくわかっていないようなのでたぶん仕様です。
※12/11誤字脱字等修正いたしました!
夕食の間中ミラの質問攻めにあった(主に魔術の轟音のせい)オレは、へとへとで自室へと戻った。
辺りを見回し、廊下に誰もいない事を確認してから部屋へ入ってすぐに鍵をかける。
さきほど保留していた〝便利魔術〟を確認するためだ。
これは今まで以上に他の誰かに見られてはまずいたぐいの魔術だからだ。
「誰も見てないな? [五次元ウィンドウ]」
周囲に気を配り、人の気配を感じなかったオレはこっそりと唱える。
すると目の前にB4コピー用紙程度の大きさの黒い窓が現れる。
[五次元ウィンドウ:専用の異次元空間を開き自由に物を保管できる。五次元なので中の物は時間的な影響を受けず、五次元なので容量も無制限。ただし、開くことのできる窓の大きさは1平方メートルまで]
四次元? ポケット?
さぁ、なんの事だろう? 気にしたら負けだ。
当時のオレは『なんか四次元より五次元の方がすごそうじゃね?』とかよく考えもせずに思っていたのだ。
なんだ〝五次元だから〟って?
というかそもそも五次元が何かわかってもいなかっただろうが。
そんなことを考えながらオレは現れた空間の裂け目に無造作に手を突っ込み、意識を集中させる。
さっき中庭で発動したとき、首を傾げるラムダさんを後目に(発動者以外は認識できないらしい)、中を確認していたとき、確かにちらっと見えた物があったのだ。
まさか、とは思うが……。
「……あった」
今日初めて開いたはずなのに、そこには確かに物が入っていた。
出てきた物は数冊のノートと、黒い服の上下と、手紙が一通。
ノートは言わずもがな、オレの黒歴史でもある例のアレである。
この世界の誕生から、地理、文化を持つ種族の詳細などが書かれた〝ファルジア創世記〟
ミラも持っていた〝黒の系譜〟、ただしこちらにはオレの肖像画は描かれていない。
それから魔物や魔獣の生体が書かれた〟〝M・O・W〟。
上下巻になっている〝ネクラノミコン〟と〝ミコト写本〟、内容はオレの考えた痛々しい魔術が列挙されている魔導書のはずである。
あとは〝戦技奥義書〟の〝斬・打・射〟それぞれの書、これには武器の攻撃スキル、戦技が書かれている。
それから〝匠の技全集〟〝マジカル☆レシピ〟の二つ。
これには武器の製造方法やアイテムの製造レシピが書かれていたはずだ。
「間違いない、よな」
おそるおそる魔術系のノートの中身を確認してみるが、驚いたことにわずかなページしかない。
戦技奥義書に関して言えば表紙しかなく、もはや本でも何でもない。
色々考えた結果、どうやらオレの使ったことがあるページしかないのではないかという結論に至った。
たぶん間違いないだろう。
だが一方でアイテムレシピ系は途中抜けたページがあったり、白紙のページがあったりと、まちまちでよくわからない。
(どういう事だ?)
頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、それ以上の収穫がなさそうだと判断したオレはあからさまに怪しい手紙を開いてみる。
――拝啓、愛しの蔵人きゅんゑ(はぁと)
「……[ファイア・ボ」
っといけない。危うく我を忘れて唯一の手がかり(悪ふざけとも言う)を消し炭にしてしまうところだった。
気を持ち直してもう一度手紙を読み進める。
――アナタがこの手紙を読んでいる頃ぉ、ワタシはもうきっとアナタの元にはいないでしょお。
うん、バカンス中だもんな!
――だから、なにも分からないだろうアナタの為にこの手紙を残しまぁす。この手紙が少しでもぉ、少しでもアナタの為になることを祈ってぇ byアナタだけの愛の狩人ティーより。
「[ファイア・ボール]!」
ボゥ! っと一瞬火柱が立つが、手の中の手紙は燃えることなく残っていた。
――追伸。この手紙は魔導書同様〝不滅〟の魔法がかけられた非破壊オブジェクト扱いなのでなくなりませぇん。ずっと大事に持っていてねぇ。
「ちっ!」
オレは大きく舌打ちをしてから、しぶしぶ中身を読み始めた。
大半がうざい愛の囁きや恥ずかしいポエムのような駄文が実に便箋3枚ほど詰め込まれていたが、中にはオレの黒歴史ノートについても書かれていた。
「というかそっちがメインだろうが普通!」
ともかく、あの自称愛の狩人はオレがノートを集めるといっていた事を覚えていたようで、所在がはっきりしていた数冊はすでに回収してくれていたとのことだ。
あの人? にしてはいい仕事だ。
しかし一方で所在の分からない、または中身がバラバラに散ってしまったノートは手の施しようが無かったので、ある仕組みを組み上げたと言う。
オレの魔力に反応してページが戻ってくる〝発動時自動回収機能〟である。
つまり、オレが考え出した魔術やスキルはそれを発動するとページが戻ってくる。
アイテムについては本から抜けているページのアイテムを手に入れる、もしくは制作するとページが戻り、新しく作り出したレシピは新たに登録される。
魔物やマップ情報は解析を行うことでページが戻るし、地形変化や新しく生まれた魔物なんかも対応してくれるらしい。
なんちゃって大精霊様は500年前の知識しかなかったそうだが、一部の知識の書き換えや情報の更新は精霊さんたちが超頑張ってくれたしい。
駄目な上司の責任を取らされた精霊さんたちには心から同情する。
なぜアイテムが入っていたかという疑問も解けたので、オレはアイテムを[五次元ウィンドウ]にしまっていく。
手紙を手にした瞬間、ふと最後に書かれた『ぴーえす』という文面の目が引き寄せられる。
――あとぉ、あんまり強すぎる魔術は普段使えなくしてありまぁす。あしからずぅ。
強すぎる魔術ってなんだ?
いまいちニュアンスが読み取れないが、何か変な魔術でも作っていただろうか?
記憶を思い返してみると、何か思い出しそうである。
なんか、こう真っ赤な…………?
「うぐっ!?」
なんだ!? 思い出そうとすると頭が!?
いつもの演技じゃなく本当に痛い!
まさか本能が、オレの本能が思い出すことを拒否している!?
「うぐぐぐぐ……」
痛む頭を抱えたままなんとかベッドのふちに腰掛ける。
それにしても、思い出す事を本能的に拒否する内容ってオレはなんてものを……イタタ。
「む、無理に考えるのはやめよう、うん。ゆっくり思い出せば「そうれふよぉ♪」んなっ!?」
突然オレはガバッ、と柔らかな物に抱きすくめられる。
鼻孔をくすぐるこの匂いと背中にあたるぽいんぽいん、という感触はまさか!?
「りりり、リリメさん!?」
「はいーリリメでふおー♪ んふふー♪」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられ頬ずりされる。
やわら……じゃなくて、なんでこんなところに!?
「どどどどどうしてここに!?」
部屋の扉には鍵がかかっていたはず、一体どうやって……
「んふふー♪ 実は、先ほどシーツを替えにきたのれすがー。なんか温かくてポカポカしてきて……」
「してきて?」
「気が付けばベッドで寝ていたのでふよー♪」
「ダメでしょ!?」
それメイドとしてどうなの!? と思いながらも、逆に寝てたなら見られないですんだからセーフ? とも思う。
「それでー目が覚めると、クローディア様が辛そうにされているじゃないれすか!」
うん、大丈夫だ。
様子から察して、たぶんオレの黒歴史たちは見られていない。
「お嬢様のお客様に何かあっては大変! ここは不肖このリリメめが癒して差し上げようと思った次第でぇすおー」
「そ、そういえば頭痛が治ってる! ありがとうございます」
最初に会った時も使っていたが、リリメさんは回復魔術でも使えるのだろうか?
「ろういたしましえー♪」
嬉しそうに言うリリメさんだが、一向に離してくれる気配がない。
そろそろ本格的に色々と、その……オレの心の中の男子的部分がへんた、じゃなくて大変なことになりそうなので解放してもらいたいのだが。
「あの、そろそろ離していただきたく……」
「んぅ…あと5分…………むにゃむにゃ♪」
「寝ていらっしゃる!?」
依然オレの身体はがっちりホールドされたままである。
そのせいで顔がよく見えないが、規則正しく聞こえてくるこの『すやすや』といういかにもな擬音、間違いない。
というかさっきから耳元に息が、息が……!
「だ、誰かたすけてー!」
その後、オレの悲鳴を聞いた別のメイドさんがラムダさんを連れてきてくれたことで、この件は落着となった。
リリメさんはその後メイド長さんにこっぴどく叱られ、オレの部屋へは出禁となったらしい。
ミラは『リリメばっかりずるい!』と怒り、オレに今晩添い寝してほしいと頼み込んできた(なぜ?)
そんなことになればオレの精神がやばいので、寝相が悪いだのいびきがうるさいだのごまかして断った。
女の身体になって前の世界以上に女性が近づいて来るのに、それ以上に女性から離れなければならないというのも皮肉な物だ。
オレは虚しさに独り枕を濡らした。
ふふふ……最初の方はどうしても色々説明がひつようなのですよ!←コイツ開き直りやがった!?
作者は随時ご意見感想、質問誤字脱字報告評価などなど、お待ちしておりますので、お気軽にどうぞ。ばっちこーい!




