第七話 家族の絆
「ええええーーーーー!!一緒に寝たんっすか?!マジで?!」
大輝が翌朝『うみねこ』で朝食を食べながら翔が玲於奈と一緒に寝たと玲於奈から聞いて立ち上がって翔に向かって叫んでいる所だった。
「心配すんなって!何にもしてねえし!それよりお前は早く飯食って仕事行け!」
「マジっすか?ほんとに何も無かったんっすよね?」
大輝が念を押して聞くと本当に何もなかったと翔に反対に怒鳴られて大輝は慌てて口の中に入っていたパンをアイスコーヒーで流し込んで荷物を抱えて店を出た。
「行ってらっしゃい♪」
「ああ!行ってきます!」
大輝を追いかけて出て来た玲於奈に見送られて少しホッとして大輝はバイクで仕事場へ向かった。
「大輝の野郎・・・玲於奈に惚れたなぁー(笑)」
「ありゃーマジだな!どうすんだ?なー?翔ってばよ!!」
仕事前に寄った裕章と悪友の棚橋仁は大輝の様子を眺めながら翔に大輝が玲於奈に惚れたようだと面白がってケラケラと笑ってどうするんだと詰め寄っていた。
「わかってるよ!昨日からあの野郎!頭にずっと花咲かせてやがるんだ!それくらい俺も気付いてるよ!」
「まぁーしゃーねーよな!あんだけ出来上がってちゃー惚れねえわけがねえわな!ハハハ!」
二人が玲於奈を舐めるように眺めていると翔は二人の頭を丸めた新聞紙で叩いてカウンターに身体を乗り出して仁の胸ぐらを掴んで
「おめえ!玲於奈に手~出しやがったらぶっ殺すからな!」
「オイオイ!わかってるよ!わかってるって!出しません!絶対に出しませんって!」
女癖だけはチーム一悪いと評判だった仁だけに翔はその言葉を聞いても全く信用はしていなかった。
「玲於奈!コイツだけはマジで気を付けろ!スゲー女に手~出すの早いからな!近付くんじゃねえぞ!」
「フフフ♪そうなんですか?じゃー気を付けないとですね!」
翔に仁には近付くなと念押しされて玲於奈はクスクスと口元に手を当てて笑いながら返事をしていた。
返事をしながら翔を見つめる玲於奈の瞳はとても愛しい者を見つめる瞳をしていた。
そして翔もまた玲於奈を愛おしく思い大切に思う気持ちで胸が一杯だった。
ただこの二人のこの思いが恋というものなのか愛というものなのかは今はまだわからなかったがお互いがお互いを大切な存在なんだと昨夜一緒に眠ったことで目に見えない絆が深まったようだった。