第二十九話 本当の真実 その二
玲於奈と理奈は車を降りて店の中でゆっくりと話しをすることを決めて玲於奈は温かいブレンド珈琲を慣れた手つきで二人分入れると店のカウンターに置いてある写真の前に理奈と並んで座ってさっきまでの話の続きを始めた。
「そうよ!間違いなく私の従兄弟よ(苦笑)雅徳は4つ歳の離れた私の従兄弟で昔からずる賢くて嫌な奴だったわ・・・私が翔と真李亜の事で凄く悩んでいた時にあいつがたまたまうちに遊びに来て何か面白い事は無いかって言われてね・・・私もあの頃はほんっとに馬鹿だったから真李亜の事をなんとかして欲しいなんて口走っちゃったのよね。」
「それで?どうしたんですか?あの男は・・・」
タバコに火をつけながら理奈は今にも泣きそうな顔で写真の中の真李亜と翔をジッと見つめていた。
「雅徳は翌日から真李亜のバイト先にまめに顔を出すようになってそうしている内に言葉を交わすようになって真李亜の好きだった小説や映画の話をするようになって真李亜のほうが雅徳に心を許していったようだった。あの頃の翔は『白虎』との抗争もあって真李亜とは落ち着いて話すことがなくなっていたし、真李亜も寂しかったのかもね。」
「ママはやっぱりあの人にも恋してたって事ですか?」
理奈は身体を乗り出して驚いている玲於奈の肩を優しく掴むとゆっくりと頷いていた。
「揺れていたのは確実ね・・・それにちょうどその頃って私が翔に付きまとっていつでも翔の側に居たし翔も真李亜と雅徳が一緒に仲良く腕を組んで歩いてる所を目撃しちゃったりでね・・・結局は私の望んでいた通りになった訳!でも・・・雅徳にしてみたらそれはゲームのようなものだったのよ(苦笑)」
「どういうことですか?結婚・・・したんですよね?」
理奈は玲於奈を見つめて少し笑うとまた話を続けた。
「そう・・・結婚はしたのよ!雅徳も真李亜を自分のものにしたくて必死だったしあれはあれで愛の形だったのかもしれないけれど・・・結婚して一年もするとどうでも良くなったみたいね。結局はあなたが生まれてすぐに雅徳は真李亜とあなたを捨てて実家へ戻ったって訳よ!酷い男でしょ?」
「・・・もう何とも思ってませんけどね・・・あんな男の事なんて」
二人は何とも言えない複雑な思いで胸が一杯になってしばらく会話が途切れてしまった。
「ごめんなさい。あなたのママを早死にさせてしまったのは私なのかもしれないわ・・・翔と居ればもう少し長生き出来たかもしれない。」
「理奈さんだけが悪いんじゃ無いと思います。ママもきっとその時はあの人を愛していたんだと思うし翔さんも理奈さんとママの間で揺れていたんだと思うし・・・だから気にしないでください。」
堪え切れなくなった理奈が涙を流しながら玲於奈に頭を下げると玲於奈は理奈の背中を優しく擦るとニッコリと笑ってそっと理奈にハグしていた。
玲於奈に優しくハグされた理奈は少し背中を震わせてしばらく何度もごめんねと玲於奈に謝りながら泣いていた。




