第一話 出会い
玲於奈はある海の側にある街を目指すことにしていた。
海岸にある『うみねこ』というお店のオーナーの榊原翔と母親が幼馴染みで玲於奈も小さい頃から可愛がってもらっていたのと困ったことがあったら連絡するようにと翔からお葬式の時に連絡先を教えられていたので玲於奈はお葬式の後すぐに相談して翔の所でしばらく暮らすことに決めたのだった。
二時間掛けて何度か列車を乗り換えてやっと着いた駅のホームから見えた景色は玲於奈が今まで居た場所とは全く違う別世界が広がっていた。
高層ビルのようなものは数えるほどしか無く改札を出るとそこにはすぐに砂浜が広がっていて広大な海が心地よい波の音を奏でていた。
「綺麗だなー・・・潮の香りもする・・・」
玲於奈は荷物を置いて両手を思いっ切り空高く挙げて伸びをしてから手に持っていたメモ用紙に書いてある携帯番号へ連絡を入れてみた。
「はい・・・榊原です」
「あ・・・玲於奈です。あの・・・今、駅に・・・」
携帯に出た翔に玲於奈が名前を告げて駅に着いたと玲於奈が話すよりも先に携帯の向こう側で何やら慌ただしい様子で翔に誰かが怒鳴られながら玲於奈を駅まで迎えに行くように指示されているのが聞こえて来た。
「そこで動かないで少し待ってろ!オレの息子みたいな奴がすぐに迎えに行くから!わかったな!」
「あ・・・はい・・・わかりました。」
玲於奈は翔に動かずに待てと言われたので改札を出てすぐにベンチがあったのでそこに荷物を置いて夕日が沈んでいく海をジッと眺めていた。
玲於奈がまだ幼く母親が元気だった頃に何度かこの同じ景色を二人で眺めた事を思い出して玲於奈は胸がギュッと苦しくなった。
「泣いちゃだめ!泣かないって決めたでしょ?」
自分の胸に手を当てて玲於奈はグッと込み上げてくるものを堪えていた。
「泣きたい時は我慢しないで泣いたほうが良いんだぜ!」
「・・・・・?」
すぐ後ろから知らない男の声がして玲於奈が慌てて振り返ると玲於奈よりも20cm位背の大きいガッチリとした身体つきの同い年位のちょっと悪そうな髪を真っ赤に染めた男がそこに立って笑っていた。
「オレより一つ下って翔さんが言ってたからすんげーガキンチョ想像してたもんだからよ!アンタ全然女子高生になんて見えねえから人違いかと思ってしばらく声かけるのに躊躇しちまったわ!でも初代のマドンナにそっくりなのな!へへへ♪」
「あ・・・翔さんの?」
人懐っこい感じのその真っ赤な髪の男は思ったことは全部口に出してしまうようで少し玲於奈が返事に困っているとベンチに置いていた玲於奈の荷物を片手で担いでさっさと歩き出した。
「オレは大輝!鷹城大輝だ!ヨロシクな!」
「わ、私は玲於奈!西門玲於奈よ!わざわざ迎えに来てくれてありがとう・・・」
これが玲於奈と大輝の最初の出会いだった。