第十八話 四十九日
玲於奈がこの街へ来て一ヶ月が過ぎていた。
今日は母親の真李亜の四十九日を弔うために真李亜の遺骨を納骨しているこの街の寺院へ玲於奈は翔と二人で訪れていた。
この寺の現住職、西岡凌雲も翔と真李亜の友人で『黒龍』の元メンバーだった。
「お坊さんが元暴走族ってどうなの?」
「いいじゃねえか!今は真面目にやってんだからさ!そう堅いこと言うなって!(笑)」
陵雲は辛口な玲於奈の言葉を笑い飛ばして二人にお茶を出して客間で向い合って座った。
「それで?上手くやってんのか?」
「ああ!なんとかな!玲於奈が全く手がかからねえから逆に俺のほうが助かってるかもな!」
状況を問われて翔は大丈夫だと玲於奈の頭に手を置いて笑っていた。
「ほら!すぐに子供扱いするんだから!!」
「しょうがねえだろ?お前はまだ子供で居てもいい歳なんだからよ!」
子供扱いされて怒った玲於奈は席を立って寺の庭へ出て行ってしまった。
陵雲は二人のやり取りを目を細めて眺めながら若き日の真李亜と翔を思い出していた。
「ほんっと真李亜によく似てるんだな・・・玲於奈を見てるとあの頃の事がついこの間のように頭に浮かんで来てちょっと胸が締め付けられちまうよ!お前もそうなんだろ?」
「そうだな・・・日に日に似てきやがるから俺も困ってんだ!ついつい真李亜と重なっちまって本気で押し倒してしまいたくなっちまうこともあるからな!(苦笑)」
翔は顔をひきつらせて頭を掻きながら礼服のポケットからタバコを取り出して火をつけていた。
「それに最近・・・大輝と出来ちまったみたいなんだ。」
「オイオイ!そりゃ早えだろ?良いのか?」
タバコを吹かしながら翔は溜め息を吐いてから頷いていた。
「仕方ねえだろ?お互いに惚れちまったなら俺にとやかく言う権利はねえからな!それに大輝なら玲於奈を泣かせたりはしねえだろうしな!万が一にでも泣かせたらぶっ殺すけどな!へへへ♪」
「年頃の娘を持つ父親みたいな心境だな・・・辛えなぁ―(苦笑)」
二人は庭を散歩する玲於奈を眺めてから顔を見合わせて溜め息を吐いていた。
「で?玲於奈はお前の本当の娘なのか?」
「そりゃ何とも言えねえ!調べてねえんだ・・・怖くてな・・・」
陵雲はかなり声を落として翔に顔を近づけて本当に知りたかったことを聞いていた。
「あいつが父親は要らねえって言うから調べてねえんだ!あの男にも何もするなって言ってある。」
「そうだったのか・・・そうだな・・・その方が良いのかも知れねえな!」
辛そうな顔をしている翔にこれ以上は立ち入れないと察した陵雲は翔の肩を叩いて黙って頷いていた。




