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第十話 恋の始まり



我を忘れて大輝に抱きついて強く抱きしめられた玲於奈はふと我に返って大輝から離れて真っ赤になってどうすれば良いのかわからなくて固まってしまった。


そんな玲於奈を見てつい大輝は声を上げてゲラゲラと笑って玲於奈のおでこを人差し指で突付いて


「帰って来たらいきなりお前が抱きついて来たからつい俺もつられて抱きしめてしまったじゃねえか!ほんっとお前は翔さんが心配するようにちょっと無防備過ぎるんじゃね?このまま俺が発情したらどうすんだよ!責任取ってくれんのか?」

「うううう・・・ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


大輝に叱られて玲於奈は頭を何度も下げて誤ってから店の中へ戻って残っていた片付けを続けていた。


「良く耐えたな!大輝!お前って硬派だったのか?」

「んなわけねーでしょ?もうすぐ鼻血が出る寸前でしたよ!マジでやべえ(苦笑)」


裕章に聞かれて大輝は鼻を摘みながらふざけて笑っていた。


正直今でも抱きついて来た玲於奈の胸の感触がまだしっかりと身体に残っている大輝は少しでも油断したら本当に鼻血が出そうな状況だった。


「済まねえな!ほんと母親に似て天真爛漫っつうか・・・マジで男に無防備過ぎるんだ!」

「へへへ♪真李亜には翔も何度もフライング食らったからな!ありゃー見てる俺らも辛かったぜ!」

翔の話に調子に乗って裕章がつい昔の翔と真李亜の話を持ち出した瞬間に翔の顔が険しい顔に変わっていた。

玲於奈には幼馴染みと話しているが実の所は母親の真李亜の元婚約者でもある翔にとって真李亜との思い出は良い思いでばかりでは無かったのだ。


「おい!玲於奈には絶対に話すなよ!気まずくなるだろうが!わかったな!」

「ヘイヘイ!わかった!わかった!言わねえよ!」

翔に睨まれて裕章は慌てて口を塞いで荷物を持って店を出た。

その裕章を追いかけるように後は頼んだぞと翔は大輝に店の鍵を預けると店を出て行ってしまった。


大輝はカウンターの隅に置いてある昔の写真に写っている翔のすぐ隣で幸せそうに笑っている玲於奈の母親を見ながら翔が昔どんな風にこの人を愛していたのだろうかと考えて自分と玲於奈を重ねていた。


男たちが自分と自分の母親の事を話していたとは知らずに玲於奈はせっせと店のトイレの掃除を最後に済ませて帰る準備をしていた。

翔に抱きついた時は別にその後も普通に出来た玲於奈は何故か大輝に抱きついた後からずっと胸のドキドキが治まらなくて大輝にどんな顔をすれば良いのかがわからなくなっていた。


するとあからさまに背を向けて自分を見ようとしない玲於奈に大輝は痺れを切らしてワザと玲於奈の視界に入って顔を覗き込んでニィっと笑っていた。


「もう~!大輝の意地悪!」

「へへへ♪怒んなって!ほら!そろそろ帰るぞ!」


翔は裕章と野暮用だと言って先に店を出たので大輝は玲於奈にヘルメットを被せてゆっくりバイクを走らせてシェアハウスまで一緒に帰った。



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