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第八話 噂




玲於奈が『うみねこ』で働き始めて3日目には玲於奈目当ての学生達が2割増しで増えていた。


翔が目を光らせているので怖くて声も掛けれない男たちはそれでもただただ玲於奈を眺めに毎日のように訪れていた。


「翔さんの女ってほんとなんっすか?」


耐え切れなくなった男の一人が珈琲を運んで来た玲於奈に小声で話しかけて来た。


「え?!・・・・・?」


唐突な男の言葉に玲於奈が返事に困って固まっていると飛んで来た翔がその男の頭を軽く叩いて


「んなわけねーだろ!玲於奈は娘みたいなもんだ!」

「いててて!!そうなんっすか?皆が噂してますよ!翔さんに若い女が出来たって!(苦笑)」


叩かれた頭を撫でながら男は皆が翔と玲於奈を恋人同士だと噂しているとヘラヘラと笑いながら話していた。


玲於奈は翔に娘みたいなもんだと言われて少し胸がキュっと締め付けられるようだった。

その言葉は嬉しい言葉でもあるのだけれど何故か寂しい言葉でもあるように感じられた。


「たっだいまーっす!マジあっついっすよ!」

「おかえり!お疲れ様!大輝、靖弘!」


同じ現場から帰って来た大輝と靖弘はいつもの席に着くと玲於奈に渡された冷たいお絞りを顔に広げて椅子にもたれてのけぞっていた。


「ああああーーー!現場仕事なめてたぁー!マジで死にそうだわ!」

「だから言っただろ!!そんな甘いもんじゃねえってよ!」


炎天下の中での現場の作業はかなり厳しいもので今日も現場では熱中症で二人倒れて病院へ搬送されたと二人は翔に報告していた。


「なぁー玲於奈?今日ちょっと元気ないんじゃね?なんかあったのか?」

「そんなことないよ~!元気だよ!気のせいよ!気のせい!」

勘の良い大輝に玲於奈は少し驚いたがすぐに何でもないと笑って否定していた。


何でもないと笑う玲於奈のその笑顔がいつもと違うことくらい大輝にはわかっていた。

どこか危なげな玲於奈が大輝は愛おしくてたまらなくて守ってやりたいと思う気持ちが日に日に強くなっていた。


「今日は流すんだろ?恭介の野郎が来るってさっき連絡あったぜ!!」

「恭介さん来るんっすか?あ!じゃー俺も流してきます!」


翔に恭介が来ることを聞いて大輝と靖弘は拳を合わせて仲間たちと盛り上がっていた。


「バイクってそんなに楽しい?警察に追いかけられて怖くないの?」

「へへへ♪すんげー楽しいぜ!おまわり怖がってちゃー!風と一緒に走れねぇからな!」

玲於奈に聞かれて大輝がキザなセリフを吐くと靖弘が大輝の頭を持っていた雑誌を丸めてバシバシと叩いて笑っていた。


「おめえ!痛えだろうが!何で笑うんだよ!」

「風と一緒に走れねえなんてキザなセリフ吐くからだろ?全然似合わねー!(笑)」


頭にきた大輝は靖弘にプロレス技をかけてまた二人のじゃれあいが始まった。


そんな二人を見ていた玲於奈にもいつの間にかまた明るい笑顔が戻っていた。






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