向日葵が、散る。その前に
青い青い
吸い込まれそうな青空に
手を伸ばす
この手が消える
その前に
『向日葵が、散る。その前に』
トンボがツイーっと飛んでゆく
枯れかけたアサガオが風にさわさわ揺れている
季節は夏の終わり、
秋のはじめ
まだまだ暑い日に
窓の外で子供達が水辺で
しゃぱしゃぱ
遊んでる。
私が1番見たいものはそこにはない
もう遅いから
もう一度、満開の桜が見たいとか
もう一度、風に寂しげに舞う粉雪を見たいとか
もう一度、落ち葉のベッドで寝てみたいとか
もうかなわぬ夢じゃなくて
もう一度、
貴方を見たかった
ここに来てくれることはもうないと知りながら・・・・・・
白い白い
白いだけの世界で
貴方の存在は
野原に咲く
1本の向日葵のようだった
でも
そんな悩める日々も、
もうすぐ終わる。
そんなある日、
私は病院の屋上で快晴の青空を見上げて呟いた
{あの青い中に浸りたい}
そんな
綺麗な
綺麗な
吸い込まれそうな
青空だった
彼の事など忘れられそうなくらい
青い空だった
{これでいいんだよね・・・・}
バタンッ
屋上のドアが勢いよく開いて
彼が出てきた
{いいわけねぇだろ!!}
{・・・・・・・・}
{俺がどんな想いをしたか知ってるか!?}
{知るわけないじゃん、私は貴方じゃないから}
{お前が慢性骨髄性白血病だって知ってからの俺はどうしていいか分からなかった・・・}
{・・・・・・・・}
{だから今までこうして距離を置いてきたんだ・・・}
{そう・・・・}
{死ぬなよ!!俺を置いてくなよ!あとの俺がどんな想いするか知ってだろうな!!}
{・・・泣かないで、でももう時間がないの}
{何でだよ!!}
{お医者さんが言ってたの、意識が無くなるのは時間の問題ですって}
{それであきらめんのかよ、お前はそれでいいのか!?}
{それに・・・私は慢性じゃなくて急性になったの。だから・・・・}
{だからなんだよ!!俺はお前を好きと言う気持ちは変わらねぇ}
{それだけでは現実は駄目なんだよ、知ってる?}
{分かってる、でも・・・}
{まだ一緒にいたい、でしょ}
それだけじゃだめなんだって分かってる?
{何でそんなに私を求めるの?私はもうすぐいなくなるのに}
{・・・・・・それは}
{理由がないのなら関わらない方が身の為じゃない、じゃあこれで}
彼の横を通り過ぎようとした時、
{待てよ}
と、言って向かい合わせにされた。
{離してよ、もうすぐ治療の時間だから}
私の心はどうしてこんな冷たい言葉しか紡げないのだろう
その途端、
{前みたいにしていいよな・・・}
{え・・・・・?}
イキナリ(とは言わないかも知れないが)
唇にキスをされた。
彼の舌が溺れる様に私を求める。
唇を離して、
{満足した?}
と、尋ねた
{・・・・・・}
何も言わなかったので
{じゃあね}
と、言って病室に戻った
涙してはいけない
また彼を求めてはならない
そういう風に
自らを縛りつけながら生きてきたのに
たった1人の人間に乱されるなんて・・・・・
弱い人間だな・・・・・
自負を背負って眠る
もう
目覚めないことを
祈りながら・・・・・